(3)
「大丈夫? 治療魔法要る?」
聖女は忍者に駆け寄って、そう訊いた。
ウチのパーティーの極悪戦士&外道聖女より冒険者としてのキャリアは圧倒的に下とは言え、神聖魔法ってヤツの正体を知ってる忍者は、苦しみながらも身振り手振りで、それを断わる。
チッ……。
聖女の舌打ち。
「クソ、このまんまじゃ、今月分の『ノルマ』を達成出来ねえや。マズいな、こりゃ……」
「おい、お前が監禁ってるメスブタを何人か、お前の『神様』に捧げりゃ良くね?」
リーダーは聖女にロクデモないアドバイスをする。
「あ〜あ……背に腹は代えられねえか……」
「処女の生贄だぞ。お前の『神様』も喜ぶだろ」
「処女じゃない。中出ししてないだけで、膜は破ってる」
「うらやましいな……何か、俺、最近、イマイチ勃たなくなってよぉ……三〇過ぎたぐらいで、もう勃たなくなるもんだっけ?」
「男の体の事なんて知らねえよ。あたしが好きなのは女なんだよ」
「はぁ? 何言ってる。お前は女が好きなんじゃなくて、女の体が好きなだけだろ。お前にとって女の子なんて、下手な男のチ○コよりバカデカくなったク○○○スをブチ込む為の排泄穴だろ」
「ああ……うるせえ……。あたしだって、昔は、修道院の可愛い後輩と純愛した事だって有ったんだぞ。それが今や、あの頃一番嫌ってた、雄畜生どもの同類に成り下がったんだぞ……畜生、畜生、畜生畜生……」
綺麗事の建前ばっかりの奴よりも、汚い本音を言える奴の方が信用出来る……。
そんな脳内御花畑なセリフをホザく奴らは世間にはいくらでも居る。
だが、それは……ホンモノの「汚い本音」がどんなモノか知らない阿呆のタワ言だ……。
かつて……同性と純愛してた(本人の申告を信じれば)聖女様の心から、今や、愛だの恋だのという感情は消え去っていた。
性欲さえ残っているか怪しいもんだ。
今や、聖女様は……加虐欲と排泄欲が入り混じった、おぞましいナニかに囚われている。
女の子を対象にしてるのは……人間だった頃……または白人だった頃……の性癖の名残りに過ぎないのだろう。
「おい、もうライブ中継終ってるよな?」
脳筋リーダーは、ようやく大事な事に気付いたようだ。
「はい、適当な所でエンディングロールを流しときました」
「よし、上出来だ。あとは……」
リーダーは今や死体になった忍者を雑に蹴り飛す。
「こいつの代りの調達だな。いや、ホント、覆面させといて良かったぜ」
「あんた、それ忍者が死ぬ度に言ってるね……飽きない? ところでさ、ねえ……バフ屋さん……」
にこにこ……。
聖女が聖女にも程が有る笑みで、俺に問い掛けた。
文字通りの意味で悪魔に魂を売ってる偽聖女が、本物の聖女と見まごう笑顔で……って意味だが。
「これで3人目だけど、こいつも、あたしらに付いてこれなくて、無理して体に負担かけ続けた結果の心臓発作なの?」
「は……はいッ‼」
ま……マズい……脳筋リーダーと違って、この「聖女」サマ……全てを察してやがる……。