(1)
「おい、『バフ屋』、いつものを頼むぜ」
「で……ですが……」
「『ですが』? 何だ? 時間がねえんだ。話が有れば後で聞く」
「は……はい……」
俺は、人気冒険者パーティ「ゴールデン・マッスルズ」の近接戦闘役3人に、身体能力増強の魔法をかけた。
一人目はリーダーの戦士。
二人目は近接戦闘役も兼任してるエルフの「聖女」。
三人目は忍者。
ドゴォっ‼
リーダーがクソ重い鎧にクソ重い剣を手にしているとは思えないジャンプでゴブリン達の群れの中心に飛び込み、大剣でゴブリン達を吹き飛ばす。
逃げ惑うゴブリン達を忍者と聖女が次々と仕留めていく。
「神聖魔法」の「焦点具」(早い話が俺達のような「秘術魔法」の使い手にとっての「魔法の杖」に相当するモノだ)を兼ねた「聖女」の弓……そこから放たれる矢に込められているのは、邪悪な闇の魔力だが、「魔法のライブ中継」をやる際に、神々しい光を放っているように映像を改竄している。
そして……あっと言う間に、ゴブリンの群は全滅した。
「うがあああッ‼」
一匹だけ、わざと仕留め損なっていたゴブリンの群のリーダー格の大型ゴブリンは、錆だらけの大鉈で俺達のリーダーに斬りかかるが……。
キンっ‼
俺達のリーダーは、自分の剣で、バグベアの鉈を弾く。見事なまでの最小限の動きで、敵の攻撃を防御した。
そして……わざわざ、攻撃を弾かれたせいで体のバランスを崩したバグベアが体勢を立て直すまで待ってやった。
リーダーは大剣を振り上げる。
バグベアは鉈でそれを防御しようとする。
ゴオっ‼
だが、虚しく……バグベアは鉈ごと一刀両断された。
ああ……。
確かに、リーダー達は俺の目の前でゴブリンどもを倒した。
これは現実に起きた事だ。
だが……全ては……嘘……作りものだ……。