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1 「新人君じゃん」

初投稿です。御手柔らかにお願いします。

 金曜日の放課後。

 

 俺――藤崎琉翔(ふじさきりくと)は、校舎の五階にある天文部の部室へと向かっていた。


 天文部は週に一度、金曜日にだけ集まるという、ゆるい部活だ。部長の柊沙月(ひいらぎさつき)先輩は「来たいときに来れば?」というスタンスの放任主義。星の観測というよりは、教室の中央に置かれた大きなテーブルを囲んでカードゲームをしたり、雑談をして過ごすことの方が多い。


 俺がこの部に入ったのは、親に『何か部活に入れ』と言われたのがきっかけだ。とりあえず仮入部をしてみたものの、その日のうちに部長の柊先輩がこう言ってきた。

 『頼むって! 今年の新入部員、今のところゼロなんだよ……! もちろん強制じゃないけど、できれば、ね?』

 結局、先輩の必死な様子に押され、なんとなく断りづらくなり、そのまま正式入部することとなった。


 今日の活動は、まず俺が部室の鍵を借りるところから始まる。


 職員室に入り、顧問の先生に声をかける。


「すみません、天文部の鍵を借りたいんですけど」


「天文部? はいはい、ちょっと待ってな」


 先生が鍵の束を探していると、後ろから慌ただしく駆け込んでくる人影があった。


「先生、天文部の鍵って――あ、もう取られてた!」


 振り向くと、そこにいたのは、綾瀬(あやせ)ひより先輩だった。

 低めに結んだツインテールのベージュ色の髪が、ふわりと揺れる。


「なんだ、新人君かー」


 ひより先輩は俺の顔を覗き込み、くすっと笑う。


「最初に来て鍵を取るなんて、やる気あるじゃん」


「たまたまですよ」


 俺が肩を(すく)めると、先生が鍵を渡してくる。


「ほい、これな。終わったらちゃんと返しに来るんだぞ」


「ありがとうございます」


「ほらほら、さっさと行こ!」


 ひより先輩は俺の背中を軽く押し、職員室を出た。


 そこから、俺たちは五階へと向かう。


 この校舎の五階には、天文部の部室しかない。他の教室はなく、そこだけがぽつんと取り残されたように存在している。教室一つ分の広さを独占できるこの空間は、どこか特別な秘密基地のような雰囲気があった。


「ふう……やっぱ五階まで上がるの、地味にキツいよね」


「エレベーターとか欲しいですね」


「ねー! でも、先生たちは絶対認めないだろうな……」


 そんな会話を交わしながら階段を上がり、ようやく部室の前に到着。

 俺が鍵を差し込み、扉を開ける。


 ――当然、誰もいない。


「よし、今日も部室は平和だね!」


 ひより先輩はさっさと中へ入り、テーブルの上にカバンを置いた。

 俺も後に続き、鍵を机の上に置く。


「さて、誰が最初に来るか……」


 そう呟いた直後、部室の扉がゆっくりと開いた。


 一人目は藤堂悠馬(とうどうゆうま)先輩。

 黒髪短髪に長身、どこか隙のない雰囲気を持つ二年生。

 普段からあまり多くを語らず、冷静沈着な印象を与えるが、根は面倒見がよく、天文部の"常識人ポジション"を担っている。


「……お、鍵開いてる」


「藤堂先輩、こんにちは」


「おう。鍵取り、ご苦労」


「悠馬~! 今日はやるよね、例のゲーム!」


 部室の奥から元気な声が響いた。

 綾瀬ひより先輩——天文部副部長にして、部のムードメーカー。

 机に座ったまま、藤堂先輩を指差している。


「……どうせ、俺のデッキ相手にするつもりだろ」


「当然でしょ!」


「勝率考えろよ……」


「大丈夫! 今日こそ勝つから!」


 ひより先輩は自信満々に拳を握るが、藤堂先輩はげんなりした表情だ。

 しかし、その顔にはどこか「またか……」という、呆れつつも慣れたような雰囲気が漂っていた。

 おそらく、こうして毎週のように、ひより先輩と藤堂先輩が対戦しているのだろう。


 二人目は高城(たかしろ)すみれ先輩。

 肩に届かないくらいの紫がかった髪をふんわりと揺らし、落ち着いた雰囲気をまとった二年生。

 派手さはないものの、整った顔立ちと柔らかい物腰が相まって、どこか上品な印象を与える。

 普段は静かに微笑んでいることが多く、感情の起伏を大きく表に出すことは少ないが、実は周囲をよく観察し、さりげなく気を配るタイプだ。



「……もう開いてたんだ」


「すみれも来たか。今日は何飲むんだ?」


「ふふ、紅茶以外の選択肢はないよ?」


 すみれ先輩は部室の端に向かい、カバンからティーバッグを取り出す。

 部室には湯沸かしポットがあるため、彼女は毎週のように紅茶を淹れている。

 本来なら学校のルール的にアウトな気がするが、まあ先生もほぼ来ないので、黙認されているんだろうなと結論づける。


「俺もそろそろ紅茶、始めようかな……」


「藤崎くんもどう? 意外とハマるかも?」


「いや、俺はまだコーヒー派なんで」


「ふふ、そのうち変わるかもね」


 そう言いながら、すみれ先輩は静かに紅茶をカップに注ぐ。

 微笑むすみれ先輩を見ていると、確かに紅茶の魅力に引き込まれそうな気もする。


 そして、最後に入ってきたのは柊沙月(ひいらぎさつき)先輩。

 天文部の部長を務める三年生で、ゆるく気楽な性格の持ち主。身長は高めで、制服はきっちり着こなし、ゆるい笑みを浮かべながらも妙な風格がある。

 基本的には放任主義で、部活の自由な雰囲気を尊重しているが、要所ではしっかりと部をまとめる。その気楽な態度と裏腹に、内には確かな責任感を秘めており、部員たちからの信頼も厚い。



「おー、今日もみんな元気?」


「お疲れ様です、部長」


「よーし、今日は何する? 星見る? それともゴロゴロする?」


「え、星を見るって選択肢、今のとこなかった気が……」


「そもそもまだ明るいしな」


 柊先輩は適当に椅子に座ると、テーブルに肘をついて俺をじっと見た。


「……藤崎、ちょっと馴染んできた?」


「まあ、それなりにですかね」


「うんうん、それなら良し! さあ、今日も気楽にいこっか!」


 こうして、俺たちの天文部の活動が始まる。

 部屋の窓から差し込む夕暮れの光が、部室を柔らかく照らしていた。

 星空よりも賑やかな部室の灯り——そんな放課後を、俺はわりと気に入っていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

ひより先輩のポンコツ可愛さや、藤崎のツッコミ、そして天文部のゆるい空気感を楽しんでもらえていたら嬉しいです。


この作品は、「恋愛指南」なんて言いながら、実は指南される側もする側も恋愛初心者という、ちょっとズレた二人が織りなすラブコメです。

これからも、ふざけたり、時にはちょっとドキッとしたり、そんな二人のやりとりを描いていきたいと思っています!


ブックマークや感想お待ちしております!

いただけるとモチベーションが爆上がりしますので、ぜひぜひ~!


文章や展開の中には「ん?」と感じるところがあるかもしれませんが、そのあたりは広い心で許してもらえると嬉しいです(笑)。

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