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プロローグ01「虐殺!ジェットコースター!!※途中下車お断り」

「現在世界と地続きか、あるいは『あり得たかもしれない』未来世界で…………」

 白ウサギの紋章エンブレムが貼られた列車は脱線しそうな勢いで爆走している。

 振り付ける雨は車両の側面を撫で、車輪が散らす火花はいまにも限界だと悲鳴を上げているようだ。

 列車は風を切り一両、二両、三両と怒涛の勢いで通り過ぎていく。


 そのすぐ後ろには飛行ドローンが列車を逃すまいと追従していた。ドローンにはバルカン砲が付いている。

 バルカンの筒状の砲身がぐるぐると回りだす。狙う先は列車の三両目の客席だった。


 客席には一人の少女が拳銃片手に暴れまわっていた。赤いマントを翻しながら。古くさい回転式拳銃リボルバーの煤だらけの銃口が相手に向かって火を吹く。


 武装した男は脳漿を撒き散らしながら派手に地面に転がった。そのまま物理的作用で車内の床を倒れたまま踊り散らかす。


『ミリー』少女の鼓膜が内蔵型無線で振動する。少女の緋色の瞳孔が自分の耳に向かって動いた。


『敵のドローンの銃撃だ。伏せとけよ』


 少女は言われたとおりに座席の影に隠れる。

 ドドドと衝撃が背中をぶっ叩く。少女、ミリーは大して痛がる様子を見せずに、リボルバーの残弾を確認した。


「あーあ、今回も使いすぎたよぉ」

 まるで今月の出費を気にする主婦のようにミリーはため息をつく。

『お前はいつもムダ弾を使いすぎなんだ。いいか、今から僕の言う通りに動いてみろ』

 図星の指摘にすこしムッとしながらも、ミリーはできるだけ神経を耳の無線に集中した。

『とりあえず再装填(リロード)しろ。ムダ撃ちはするなよ。思春期の男子みたいにな』

 突然の下ネタに顔を赤くしてイラつきながらもラッチを押し、マグナム弾を挿入する。

『リロードが終わったみたいだな。お前の正面に敵が二人、向かっている。まずはそいつらを撃て。顔の眉間の真ん中を狙うように確実にな』

 ミリーは正面の車両を繋ぐ赤いドアを注視した。ドローンによる銃撃は鳴り止まないままだ。

『もうすぐ敵が着くぞ。五秒後だ』

 心臓の鼓動が早くなる。口内に過剰放出された体内麻薬(アドレナリン)の苦みが滲む。

『五、四……』

 荒々しい足音が聞こえる。ミリーは撃鉄を叩いた。

『三……二』

 男たちの口汚い罵声が聞こえる。足音はすぐそこまで迫っていた。

『一』

 ドアが開く。AKライフルを手にした黒い覆面の男が二人出現した。

 銃声が車内に轟く。続けてもう一発。

 二人の男はバタリと倒れた。硝煙の煙が揺れる銃口をミリーは下ろす。

『ドローンの砲身がオーバーヒートしている。前方の車両に急げ』

「ラジャ!」

 ミリーは走った。両手持ちで拳銃を構えつつ、先を急ぐ。

 前の車両に敵らしき人影はいなかった。

 三両目……運転席のあるエリアに静かに足を踏み入れる。

 運転席には一人の人影が無機質に蠢いていた。手には1911式の拳銃を手に操作盤を弄っている。

「武器を捨てろ!」

 激しく叫んだ。人影は言う通りに拳銃を捨てる。

「腰のナイフを捨て忘れているよ。気づかないと思った?」

 人影は「あ、忘れてた」と呑気な声でつぶやき、ナイフを鞘ごと捨てた。

「正面を向いて。まああんたみたいなくそハイジャック犯の顔なんて見たくないけど一応ね」

 挑発を投げるミリー。ハイジャックの首謀者は「おいおい、このイケメンにどんな口聞いているんだくそ女」と言い正面を向いた。




「あんたは……」

 床から煙が吹き出し、視界が徐々に狭まっていく。

『ミリー! おい! ミリー!』


 通信はそこで途絶える。


「ミリー! おい! ミリー!」

 ミリーと通信していた司令官(マスター)のジョーは繰り返し呼びかけた。

 しかし、目の前の液晶端末は目の痛くなるようなノイズしか流れなかった。


「くそ、手のかかる小娘だ」

 舌打ち混じりに無線から手を離し、ジョーは自分用のグロック17自動拳銃とマグライトを取り出した。

「ジョー」鋭く呼び止める声にジョーは踵を返した足を止めた。

「どこに行くつもりだ。なんでそんなにあの子に入れ込む?」

 その問いには答えずジョーは先を急いだ。


 残った室内の人影は深々とため息をつく。

「模擬戦でこのザマだ。この学校では親や教師の加護を受けずに自立した兵士を育成するプログラムを含んでいる。情の介入ではお前の中の【彼女】は消しされないぞ。わかっているのか……」

 そう言って試験区域に走るモニターの中のジョーに視線を移した。


「いずれは戦争が起こる……。生徒たちはそれまでに皆兵士として自立していかなくてはならない。わかっておるはずだぞ。全ては【来るべき戦争】のために……」

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