03 辛くても
嫌な夢を見ていた。詩貴が雅人と付き合っている夢。夢の中の二人は凄く幸せそうで、それを見ている俺は酷く悲しい顔をして二人を眺めていた。この夢が現実になりそうで怖い。俺から詩貴を取ったら、俺はどうなるんだろう……。そんな事考えた事すら無かった。だって、いつも一緒に居るのが当たり前だったから。詩貴を取られたら、俺に何が残るんだろう……。
(ん……眩し……っ)
「うわっ、空お前部屋に電気も付けずに何してんだよ!?」
「…………ん……アレ……?」
(泣いてるうちに寝てたのか……)
「……空お前泣いたのか? 目が赤いぞ」
「ううん、違う。寝起きだからだよ」
「……嘘だな、何かあったのかよ? 急に帰るから雅人も心配してたんだぞ」
「……ゴメン……」
「別に良いけどさ。本当にどうしたんだよ」
「何でもないってば」
「そっか。でも、お前すぐ溜め込むからさ、心配になっただけ」
詩貴の一つ一つの言葉が今の俺に強く響いてきて、今気を緩めたら泣きそうな位嬉しかった。
詩貴は俺の事を親友としか見てない。もうそれで良いんじゃないか、と一瞬思ってしまった。
「そういえば、雅人さ明日から学校来れるって! 寮には来れないけど、学校には来るってさ」
「本当? 良かったね!」
「うん。俺アイツにはいつも笑ってて欲しいんだ。アイツの笑顔好きだし」
「……あー、本当に雅人が好き何だね! 早く付き合えば良いじゃん!」
「アイツ俺の事好きなのかな……」
「……相手に伝えないと伝わらない事だってあると思うよ?」
「……そーだな、お前の言う通りだ」
俺だって、詩貴にはいつも笑ってて欲しい。だから、俺が辛くても詩貴が幸せならそれでいいや。
◆ ◇ ◆
「詩貴! 空! 皆久しぶり!」
次の日雅人は学校に来た。相変わらず雅人は皆の人気者だ。詩貴も嬉しそうだし、良かった。
「雅人! お前が学校に来れなかった分、ノート取ってやってたんだ!」
「え? 本当? 詩貴有難う!」
(まぁまぁ……詩貴も雅人も幸せそうな笑顔しやがってさ)
「何変な顔してんだよ、空」
「……うるさい、お前には関係ないだろ、尚」
コイツは笹木尚。俺にいちいち突っかかってくる男。……とゆーか、入学当時にコイツから告白をされた事がある。勿論振ったけど、何かと今でも口説いてくる目敏い奴だ。
王子様見たいな顔してるけど、性格は最悪最低だ。サディストとはコイツ見たいな人の事だと思う。
「ふぅーん……アレが原因ね。ついに振られたとか?」
「……馬鹿か」
「俺ならお前にそんな顔させたりしねぇーけど?」
「……………うるさい」
季節はもう秋で、担任が文化祭の話をしている。去年の文化祭は詩貴と出店周ったりして凄く楽しかったな。でも、今年は雅人と周るのかな……。もし詩貴に、誘われたとしても2人の間に入る事だけは絶対にしたくない。だから、実行委員会やろうかな。実行委員会は忙しいから生徒にも人気が無い。
「ハーイ! 先生、俺実行委員やりまーす」
「え、まじで? 空本気かよ」
「うん」
「ふーん……3人で周りたかったのにな? 雅人」
「うん……でも、空がやりたいなら仕方無いよ」
(何か俺自分から墓穴掘ってる気がする……)
「んじゃ俺も実行委員やりまーす」
「は!? 何で尚が!?」
「何って、やりたいから?」
「……はぁぁぁぁぁ……っ……」
(何で尚何だよっ!)
結局、文化祭の役割は俺と尚が実行委員で、雅人と詩貴は出店係りになった。本格的に始動を始めるのは明日かららしい。それにしても、気が乗らない……。