01 苦しい
小さい頃から俺の横には、アイツが居るのが当たり前で、それが普通だと思っていた。アイツは昔から、何を考えているか分からない奴だったし、やたらと俺様でオマケに意地悪だ。……ハッキリ言って性格は最悪だ。でも、俺が悲しい時、苦しい時、泣きたい時、傍に居てくれたのは
アイツだった。俺はアイツが堪らない位……ダイスキだ。
「……ら……そら……そら!」
「……ん……?」
「お前また此処で寝てたのか? 性格も身長も成長しないな」
「……うっさい……どうせ今日も行くんだろ?」
「そりゃそうだ。アイツ元気になったらしいから」
「はいはい。早く愛しの雅人君の所に行きましょうねー」
詩貴はズット沢田雅人の事が好きだ。小学校の頃に転校してきた雅人は、病弱で生まれつき心臓病を患っていた。その時偶然、詩貴と同じ班になった雅人は、それから詩貴と仲良くなった。
雅人はカッコ良いし、背も高いし、何よりとても優しい。
俺とは正反対。俺は背も小さいし、女っぽい顔がコンプレックス。
――俺は一回も雅人に勝った事がない。恋も勉強も、何もかも。
(あー……正直病院行くの嫌だな……)
気が乗らないのは当たり前だと思う。でも、詩貴と雅人が二人っきりになるのが嫌だから――
「アイツ元気かなー……病室何処だっけ」
「……はぁ……408だろ……」
「サンキュー。あ、此処だ」
――コンコン
「雅人! 久しぶり!」
「詩貴! 空! 来てくれたんだね」
「当たり前だろ! な、空?」
「……え、あ、うん!」
……雅人の事は嫌いでは無い。大切な友達だ。でも、此処からいち早く抜け出したかった。
胸が苦しくて痛い……あんなに楽しく話している詩貴を俺は見た事がない。
その笑顔を一度も見せられた事がない。俺は……詩貴が好きだ……。二人の笑い声が逆に俺を苦しめた。