故郷を守れ
突如として魔族に襲われ、窮地に陥ったケイ。その時、転生魔法を使った勇者の魂が身に宿り、勇者の魔力を使って危機を乗り越えた。しかし、安心したのも束の間、村が多数の魔族に襲われているのを目撃し、急いで村へと向かうのだった。
走りながら、ケイは心の中で勇者に問いかける。
「飛竜が30体って、本当なんですか!?」
勇者はきっぱりと答える。
「あぁ。奴らとは何度も戦ったからな。俺の魔力感知は間違いない…だが、飛竜とは違う魔力が一つ…これは人間だな」
「それって、誰かが飛竜と戦ってるってことですか?」
「おそらくな」
ケイは勇者と話しているうちに村に到着し、自分が居候している家へ急いだ。すると、村人に避難指示をする村長と目が合った。村長は心配するように言った。
「ケイ、探したぞ!怪我はないか?」
「僕は大丈夫です。村長…あの飛竜は一体?」
「わからん…突然現れて暴れ出したのだ…今は勇者パーティーのセーラ様が応戦してくれている」
村長の言葉に、ケイは目を丸くした。
「セーラ様が!?」
「あぁ。だが苦戦しているようだ。お前は早く地下へ逃げろ!」
村長に促され、他の村人とともに避難しようとするケイを、勇者が呼び止めた。
「おい、まさか逃げるつもりじゃねぇだろうな」
「だって…あんな数の飛竜…勝てるわけないですよ!」
勇者は、怯えるケイを叱りつける。
「地下に逃げただけじゃ飛竜の攻撃は凌げない!生き残るには、奴らを倒すしかねぇ!」
しかし、ケイはまだ逃げ腰だ。
「でも、セーラ様がいれば…」
ケイが言いかけた瞬間、目の前に火球が飛んできた。
「どうやら、そのセーラってやつは苦戦しているようだぞ。飛竜どもを抑えきれてねぇ」
「でも…僕にはどうにも…さっきはたまたま勇者様の魔力を使えましたが…次はどうなるか…」
ケイは数分前、魔族に襲われたときのことを思い出し、足が震えて動けなかった。
「お前、強い戦士になりたかったたんだろ?」
「えっ?」
「心の声を聞いた…ここで逃げたら、いつまでも弱いままだぞ」
「………」
ケイは俯いて、今までの回想した。生まれつき魔力が弱かったケイは、虐げられることも多かったが、守ってくれる人もいた。今度は、自分が守らなくては。
「………ます」
「ん?」
「戦います!!勇者様、力を貸してください!!」
「もちろんだ。せっかく転生したのに、こんな所でまた死ぬのは御免だからな」
勇者がそう言った直後、ケイは体の底から魔力が湧いてくるのを感じると、全身に力を込めた。
「はっ!!」
ケイはまばゆい光を纏い、飛竜の群れへと向かって行った。
一方、勇者パーティーのセーラは、カント村を襲っていた飛竜の群れを引き受け、戦っていた。セーラはエルフ族の少女で、透き通るような白髪と金色の瞳が特徴だ。
「グオォォォッ!!」
「くっ!」
飛竜たちが矢継ぎ早に攻撃を仕掛ける。セーラは素早い身のこなしで攻撃を避けつつ、村から距離を取る。
(まさか、これほどの数の魔族が徒党を組むとは…)
一体の飛竜が大きな火球を放つ。セーラはそれを魔力で強化した拳で受け止め、弾き返した。飛竜たちが体勢を崩す。
(今のうちにルージュに連絡を…)
セーラがそう考えたとき、背後からの火球がセーラの右腕を吹き飛ばした。
「っ…!!」
振り返ると、さらに十数体の飛竜たちがこちらへ向かってきていた。体勢を崩していた飛竜たちも復帰し、一斉に攻撃姿勢をとる。セーラは死を覚悟し、目を閉じた。そこへ、ケイが駆けつけた。
「伏せてください!!」
セーラが咄嗟に身をかがめると、ケイは手から巨大な光線を放ち、飛龍たちを消し炭にした。
「セーラ様、ここは僕に任せてください!!」
そう言うと、ケイは飛び上がり、飛竜の群れへ向かって行く。セーラは突然の出来事に目を見開いていた。
「グオォォォッ!!」
飛竜たちは次々とケイに襲いかかる。
「うあぁぁぁぁぁっ!!!」
ケイは叫びで強引に恐怖を抑え、立ち向かった。光を纏う拳で、飛竜たちを薙ぎ倒してゆく。
「これでっ……!最後……!」
ケイが拳を振りかぶった瞬間、背後から現れた飛竜がケイに飛びかかり、爪でケイの背中を引き裂いた。
「ぐっ…!!」
体勢を崩したケイに、飛竜がとどめを刺そうとしたその時…
「はぁぁっ!!」
力を振り絞って駆けつけたセーラが、渾身の蹴りで飛竜の頭を吹き飛ばした。その衝撃で、もう一体の飛竜がひるむ。
「今です!!」
セーラの合図で、ケイは最後の一撃を放ち、数十体いた飛竜たちは完全に殲滅された。




