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転生先は…

 勇者と魔王の戦いから100年後。人類は平和に暮らしていた。しかし、未だ魔族の残党は存在しており、脅威が完全に消え去ったわけではなかった。

 人類が暮らす大陸の東端に位置するカント村では、ある少年が淡々と薪割りに勤しんでいた。少年の名前はケイ。両親は魔族に殺されており、近所の一家に居候させてもらい、様々な仕事、主に肉体労働の手伝いを行っている。

「よし、これで最後だな…」

ケイがそう呟いたとき、何人かの子供たちがやってきた。そのうちの一人がにやりと笑って言った。

「ケイさん、いつもご苦労さま〜。これもらっていきますね」

子供はケイが割った薪を奪って駆け出した。

「ま、待って…それはうちの…!」

ケイが引き止めると、子供は突然手から水を出し、ケイの顔に激しくぶつけた。水属性の魔法だ。びしょ濡れになったケイを見て、子供たちはけらけらと笑う。

「ケイさん、魔法も使えないくせに、おれたちに指図しないでくださいよ」

ケイは生まれたときから魔力が非常に貧弱で、魔法が使えなかった。魔法が広く浸透したこの世界では、魔力が弱い者は見下されることも珍しくない。

(僕も…勇者様みたいに強くなれたらな…)

ケイはいつもそう思っていた。しかし、それは叶わぬ望みだった。魔力は魂と強く結びついており、その素質は生まれたときにほとんど決まってしまう。

結局、せっかく割った薪は奪われてしまった。ケイは自分より何歳も年下の小さな子供にさえ抵抗できず、悔しさと絶望に打ちひしがれた。しかし、悩んだところで何も変わらないので、ケイは諦めて再び薪割りを始めた。

 ケイが仕事を終える頃には、外はすっかり暗くなっていた。心身ともに疲れ切ったケイは、おぼつかない足取りで森を歩いた。その時、ケイはなんだか視線を感じて立ち止まった。

(誰かいる…?)

ケイは耳をすませる。すると、何か足音のような音が聞こえた。しかし、それは人の足音にしては、妙に重い音だった。

(やばい!!)

身の危険を感じたケイは、とっさに走り出した。しかし、足音を聞いていたのはケイだけではなかった。ケイの走る音に反応し、木々の間から巨大な怪物が飛び出した。鋭い牙が並んだ大きな口に、数十対の足が生えた長い体を持つ、全長20メートルほどの魔族だ。

「グオォォォォ!!!」

頭が潰れそうになるほどのおぞましい咆哮が響き渡り、ケイは恐怖のあまり動けなくなってしまった。

(なんで…僕がこんな目に…)

魔法が使えないケイに抵抗する術はない。ケイは絶望し、その場に膝をついた。

………その時、一筋の閃光が空から降り注ぎ、ケイの体を直撃した。辺り一面が昼のように照らされる。

「!?」

ひるんだ魔族は慌ててケイから距離をとった。

(まぶしい……ここは、あの世か……?)

ケイはまだ状況を理解できていない。

「ウガァァァ!!!」

呆然とするケイに、魔族が喰らいつこうとした。すると突然、ケイの頭の中に若い男の声が響いた。

「諦めるな!」

「えっ…誰!?」

周りには誰もいない。しかし、ケイの頭には確かに声がする。外から聞こえるというより、頭の中から発せられているような、不思議な声だった。

「説明は後だ!とにかく立て!そして体に力を込めろ!」

他にどうしようもないので、ケイは声の言う通り立ち上がり、全身の力を込めた。すると、今まで感じたことのない魔力が、体の奥底から湧き上がってくるのを感じた。

「これは……魔力!?」

「そうだ!その力でやつを倒せ!」

(よくわからないけど…やるしかない!)

ケイは覚悟を決め、拳を握った。すると、拳のまわりを煌めく魔力がほとばしった。魔力の使い方など知らないが、今ならなんでもできる気がする。

「はぁっ!!」

ケイは、自分の中に入ってきた声に従い、拳を振り上げた。拳を受けた魔族は跡形もなく消え去り、周囲の木々は土ごと吹き飛んだ。予想以上の威力に、ケイは呆気に取られていた。

「……魔族を倒した……僕が……?」

「あぁ、そうだ。危ないところだったな」

ケイは頭の中の声に対して言った。

「あなたは…誰なんですか?」

すると、それは凛々しい声ではっきりと告げた。

「俺は勇者だ」

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