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即興短編

ブリブリ伝説

 春野うららは女子高生である。


 検索したところ同名の有名人が何人かいるようだが、私は知らないのでこの名前を使用する。



 もうすぐ七月。

 外は蒸し蒸し地獄である。


 クーラーの効いた教室は天国であり、ゆえに当然のこととして、うららは授業中に眠たくなった。


 うっつら……うっつら……


 うらら……うらら……


「こらっ! 春野!」


 教室に、野獣のごとき教師の怒号が響き渡った。


 教師の名前は大俵権蔵おおたわらごんぞう。この名前も検索にいくつか出てきたが、私は知らないので堂々と使用する。大体、なろうの基本として、登場人物は実在の個人及び団体とは関係がないと保証されているのだ。私は安心した。


「あっ……!」

 春野うららは一瞬で目が覚め、いつものようにブリブリを開始した。

「ごめんなさぁい、先生っ♡ あたし、今ねぇっ! 眠り病にかかっちゃってるのぉっ!」


「ふざけるな」

 しかし大俵権蔵教師にブリっ子は通用しなかった。

「バケツ持って廊下に立つのと校庭30周、どちらがいいか選べ」


『こっ……、この洗練された現代に体罰だとおっ!?』


 うららは内心で毒づいたが、己の武器を信じていた。あくまでブリっ子でこの場を切り抜けられる自信があった。


「えーん……」

 秘奥義の泣き真似が炸裂した。

「せんせぇ~、ごめんなさい。じつはお母さんが病気でぇ……、あたし、夜なべして手袋編んでるんですぅ〜」


「もう夏だぞ。なぜ手袋がいるんだ」

「お仕事でぇ〜、使うんですぅ〜、ゴム張りの手袋」


「おまえはトラック運転手か!」

「貧乏なので学校終わってからヨイトマケしてるんですぅ〜」


「み……ミヒ!?」

「ミヒですぅ〜」


 大俵権蔵教師の心に、春野うららの言葉が響いた。

 彼は幼い頃貧乏で、母は毎晩ツルハシを手に、ヨイトマケに出掛けていたのだ。その悲しくも暖かい記憶が蘇り、彼の弛緩したお尻から、それは発射された。


「ブリブリブリブリ!」


 生徒たちがどよめく。


「あーっ!」

「先生が放屁した!」

「すげー音!」

「さすがは大俵権蔵!」


 この日の春野うららのブリブリ攻撃と、大俵権蔵教師の盛大なブリブリは、後にブリブリ伝説として語られることになる。


 そして授業はふつうに再開された。

 窓を開けられたので、春野うららも眠くなることはもう、なかった。




次回、『ベリベリ伝説』をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言]  しいな先生にしてはお上品。  牛乳飲み過ぎたロックスターのほうが、こちらのタイトルあいますね(汗)あっちのほうが、ひどいよ(褒め言葉)
[一言] すごい話!
2023/06/24 11:35 退会済み
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