宝探しへ
3日後、何故この日を選択したのか、それがなんとなく分かった気がした。大雨ではなく本日は倉木とのデートを思い出すような晴れの日だ。
梅雨にしては珍しく、どんよりしつつも晴れ晴れとした空は見ていて心地良い。比べれば圧倒的に心情など加わって倉木とデートした日が快晴に思えるが、雨の日ではない分まだ良かった。
人工林とはいえ、1日で全ての水気が抜けることもなく、昨日の15時から止んで今まで天候を保っていたこともあって若干足元は悪い。それでもイベントは絶対参加なので、足場の善し悪し関係なく参加することとなっていた。
「それではこれより、第一学年一組と二組の合同イベントを開始します。制限時間は各グループが指定の位置に到着してから16時まで。その間人工林の中を好きなだけ歩き回って得点を積み上げてください。昼食の時間も各々確保し、怪我のないように。それでは移動開始」
合計13グループが、同じ場所からスタートすることはない。AからZで分けられたスタート地点のMまでを使い、それぞれ6人が揃ってスタート。だからそれぞれが定位置に移動することが最初の共同作業になる。
半径1.5kmもある巨大な人工林なので、体力に自信のある生徒の大半が遠くの位置へ移動する。今回はそういう組み分けもされているのだろう。
そして、遥の所属するKグループも、遠くにあるスタート地点へ歩き始めた。
「いやぁ、大変だね。早速遠くに歩かされて、その後にまた長時間の足の酷使。金曜日だから良かったけど、月曜日だったら泣いてたよ」
自慢のロングヘアを靡かせて、湿気にさえ不満を抱いてないような鷹揚さをもった少女。大雨の中露出激しくとも風邪を引かない剛健な体を証明した――朱宮乃愛は、軽快な足取りながらもそう言った。
「そうだな。雨じゃないのも運がいい」
それに反応するのは、高校生1年生ながらも長身の遥より更に大きい身長を持ち、声音も低く朱宮の隣に立つボディーガードのような存在――風野千尋だ。
「それでも、みんなの気分は降下中っぽいけどね。おーい、元気だしなよー。得点稼げば楽できるんだよー」
「乃愛が元気すぎるだけ。私たちが普通なんだから」
「折角の交流なんだよ?今からハイテンションじゃないと、後は下がる一方なんだから」
そう宥められるのは朱宮、風野と続いて最後の二組のチームメイト――香月凛だ。雰囲気が朱宮と真逆のようで、それでも朱宮とは仲の良さを感じさせる会話をよくしている。合流してから遥たちを見て何も思っていないように顔の変化もない落ち着きのある少女だ。
「ほらほら、一組も何か話そうよ」
きっと朱宮は二組のスクールカーストトップに君臨する存在なのだろう。次から次に教師の発言がない時は絶え間なく質問や会話を求められる。飢えているのか興味か、特待生として人から好かれるという才能を持ちつつも遺憾なく発揮するとこは、凄まじく人間関係を紡ぐ意思を感じる。
「なら、朱宮ちゃんの好きなタイプとか」
「えぇ?」
聞いて驚く朱宮の横、すぐさま好きなタイプを聞いた男子生徒の後頭部を叩いて星中が言う。
「悪い。女子を見たらすぐタイプを聞く癖がこいつにはあるから、基本そういう話しになったら無視してくれ」
「あははっ。面白いんだね、紫雲くんって」
冗談と分かりすぐに笑顔で対応する。遥にはそんな感情豊かに表情を変えられないから、今の朱宮の気持ちはどうなのか気になっていた。
「まぁ、誰にでも臆することなく話しかけるのが俺の良いとこだからな」
カッコイイだろう?とも言いたげに冗談を言う彼――紫雲圭夜は笑っていた。一組からは遥の他に、星中とその紫雲の3人。何の繋がりがあるのかは不明だが、縁があって組まれたのだから嫌だと思うことはない。
「一組は毎年性格の濃い人が多く入学するって聞くし、それだけ紫雲くんも珍しくないんだろうね」
「そうなの?私たち二組も中々濃い人だらけだと思うけど」
「それは二組しか知らないからだよ。多分今日だけでも、一組のこの3人だけで個性強いことが分かると思う」
「ふーん」
確かに個性は強い。遥という存在も個性が強いし、初対面で真っ先に好きなタイプを聞く頭のネジがぶっ飛んだ紫雲も強い。それを宥めつつ、常識人のように振る舞う星中についてはなんとも言えないが。
今のところ、朱宮の個性がこの中で最も強いと思われる。人から好かれるという才能含め、それを軽く発揮するだけで紫雲の目を釘付けにするくらいなのだから。
単に紫雲が惚れっぽいだけかもしれないが。
「組み合わせに関しては、二組の私たちはいつも一緒に居るメンバーだけど、一組はどうなの?仲良い3人?」
先程から無言の遥のことを察して違うと答えられることを、才能ある朱宮が見抜けないことはない。だからこれは確信に近い問いなのだとはっきりと分かった。
知力はなくとも、深層から人を読むことは大得意の遥。特待生としての才能を、こちらも遺憾なく発揮していた。
「俺から視点だと仲良いけど、紫雲と六辻視点だと初めて会話するから分からないな。これを機に仲良くなるかもしれないけど」
「そうだな。六辻とは今日初めて話す。恋斗と居る時間は長いけどな」
「そっか。――意外と友達多いんだね」
並び順的に朱宮の隣に遥が居て、その遥の隣は誰も居ない。だからだろうか、煽る気もなく意外だという気持ちを込めて小声で遥にだけ伝わるよう言ったのは。




