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六月のイベント




 梅雨真っ只中、大雨降り頻る中で風早は言う。


 「今日から3日後、6月のイベントを行います」


 今日は火曜日。よって金曜日ということになるが、イベントが午前中で終わり、その後休日に入る曜日に設定してくれたのは一組の生徒を歓喜の渦に包み込んだ。


 「ですが、今回は4月5月のイベントと違い、朝から夕方にかけて行う予定です」


 しかし、歓喜は驚きに変わり、次第にため息を吐き出させることとなった。


 幽玄高校で行われるイベントは、基本午前中で終わり。だが、時々その基本を破って特別なイベントが行われることもある。それが3日後に行われるイベントだ。


 「内容に関しては隣のクラス――二組との合同で行う宝探しとなります。皆さんご存知の通り、この幽玄の地には様々な娯楽施設がありますが、その中で一際目立ち異彩放つ場所――人工林にて、合計79名で宝探しを予定しています」


 半径1.5kmの巨大な人工林。勾配もあって整備されていてもそこは山の中と大差ない空気感が漂う。冬になればスキーも可能であり、夏はキャンプ、森林浴など楽しむことも可能。川もあり、それはもう人工とは思えない森があるかのような場所だ。


 そんな所で宝探しとは、幼稚園児に戻った気分にでもなれと言うのか。学校側も考えているだろうが、宝探しの意図は分からない。


 「チーム分けは後で発表しますが、一組二組共に3人ずつの合計6人が基本です。人数の関係上、7人の組が1つ生まれますがそれもしっかり組み分けるのでご安心を。そして、組まれた人たちは、宝探しなので宝を探してください。様々な場所に埋められていたり置かれていたり載せられていたりするので、上下左右視点は変えることをオススメします。イベント開始と同時に、皆さんのスマートフォンにそれぞれ点数を刻んだ早見表を送ります。それを見て、宝の得点を確認し、最終的に最も点を稼いだチームのメンバー全員に、二週間相手の相性指令を確認してもノーペナルティとなる特典を付与します。それを獲得することを目標に、それぞれ頑張ってください」


 4月5月の報酬は共に1日自己休暇を付与するだけだった。それが6月は大幅に報酬の規模が上がった。それだけ意欲を湧かせて取り組ませたいのには、何か理由があるはずだ。


 今回は二組と合同ということもあり、自分たちのクラス以外と接触して相性によって関係を発展させる意図があるのは確定だ。その中で朝から夕方にかけて長時間を共にすることで得られる関係の深まり方を知ることも、1つの目的だろう。


 「それでは、本日もお疲れ様でした。後日のイベントをお楽しみに」


 説明だけ終えて質問を受けない風早は退出した。全てスマホで解決するのだから、風早に直接聞く人は居なかったのだろう。だから3ヶ月目にして退出の早さが中々早い。


 「はぁぁ……最も憂鬱な曜日がやっと終わった」


 風早が退出した瞬間に机に伏して疲れを吐き出したのは紛うことなき隣の席の生徒。月曜日よりも火曜日が嫌いだそうで、理由は月曜日に祝日が来て休みになることは三連休で好きだけど、火曜日は連休にならないからだそうだ。


 「お疲れ様」


 「お疲れ。でも金曜日が億劫に思うと今からでもこの疲れに重なって体が重くなるぅ……」


 (人って溶けるんだなぁ)


 暑さで溶けるとか、美味しくてほっぺが落ちるとか、そんな表現があるように、一瀬の気の抜けたようで疲れを感じたくないから脱力するような伏し方は、本当に溶けているように見えた。


 「もしかしたら、私と六辻くん、そして優が同じチームになるかもしれないけど、なんかそれもない気がしてきた」


 「割とあると思うよ。最近ずっと一緒だからね」


 確立した関係となっている今、一瀬と桜羽と一緒にいることが圧倒的に多い。だからそれが関係して、学校側も同じチームに組み込むことは十分有り得た。


 実際2回のイベントは、共に知り合いだけだったから。


 だが、二組も加わるならやはり変わるのかもしれない。二組の中に相性の良い相手が潜んでいる人なら、一組の誰と組もうがそれはどうだっていいのだから。


 「それだと楽しむことは簡単だけど、やっぱりこの学校に入学したならたくさんの人と触れ合って知りたいよね。だから別に誰とでも良いんだけど、不仲になるような相手は勘弁願いたいよ」


 「確かに」


 「まぁ、なんだかんだこのクラスでは誰かと不仲になるような相性を持つ人は居ないんだろうけど」


 「多分ね」


 とはいえどうだろう。人の深層の想いは遥のように気づかなかったり、隠すことができる。だから心に秘めているだけで、本当は本能的に苦手とする人が居るのかもしれない。絶対ではないAIと専門家の診断は、人の全てを予測して誘導することなんて不可能なのだから。


 「なんとかなれば良いけど、第一は楽しむことだよね。そうじゃないと、相性の善し悪し以前の問題だし」


 「一瀬さんなら大丈夫だよ」


 「私だもんね」


 最近桜羽に感化されてポジティブに磨きがかかりつつある一瀬は、いつでもポジティブで陽気な人と化している。素晴らしく良いことだが、桜羽の冗談で言う自信過剰の部分が継がれているのは少し大変ではある。


 それでも飽きないし、似ているだけで同じではないことに、完璧に人は同じになれず、個性が表れる。ということを強く分からされてもいた。

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