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優柔不断じゃないよ




 普通に生きていて順風満帆、悠々自適に生活をしている人が遥のように無感情になるとは思えない。だから倉木は察して答えられない質問や、過去のことについての質問はしないと遠回しに言ってくれたのだろう。


 いつかは言わないといけないことは理解している。しかし今はまだ余裕もなくて感情も戻らない。そんな失われた状態で、簡単にも思い出したくなかった。誰かに話せば、その瞬間過去の光景が詳しく浮かんでしまう気がしていたから、それは精神的にもまだ早い。だから言わない。


 思いを汲み取ってくれたことには感謝しかなかった。


 「それよりも、まずは何か頼みましょう」


 「俺は決めてるよ」


 「早いわね。優柔不断じゃないの?」


 「どれも美味しそうだとは思うけど、今後絶対にここに来ないということはないだろうし、迷うことではないかな」


 幽玄から出られないのだから、外食するとしても限られる。フードコートや飲食店があったとして、結局数は50を超えない。3年間過ごすなら、最後の晩餐のように悩むことはないのだ。


 「そう。でも頻繁に外食するようには見えないわ。ホントに二度目があるのかしら?」


 「気が向いたら行くよ。1人だと初めての店に足を運ぶことは憚るけど、行ったことある店になら入りやすいから」


 「それはそうだけれど、そもそも外食しなさそうじゃない」


 「うん。またここに来るって可能性は低い。最近は自炊をしてるからね。だから、その時はもう一度誘ってよ。そしたら、今日行くカフェ以外のことも知れるだろうから、経験を積みたい俺には得だし」


 それでも受け身だ。カフェに行かないと成績が落ちることはないし、他人と関われないこともない。絶対ではないなら自ら運ぶ足はない。


 だから、1つの交友の場として、誘われるなら行きたかった。未経験を経験済みにすることは貴重な体験であり、それによって今後の夢や考えが左右されることにも関わる。そして、受け身じゃなくなる自分を形成することにも繋がるかもしれないのだから。


 「自炊……貴方が自炊なんて意外だわ」


 「自分でも思うよ」


 「けれど、自炊しているのは偉いわ。それと、お誘いの件は承諾するわ。まぁ、この後で不快に思うことがあれば拒否することになるけれど」


 「色々ありがとう」


 「こちらこそ、付き合ってくれることには頭が上がらないわ」


 当然親友と見定められなければ、その時点で今後の未来は閉ざされる。倉木も余裕はないのだから、自分優先で他人との交流を次々に切り捨てることも厭わない。遥もその気持ちは分かるから、承諾してくれただけでも感謝だ。


 「はいこれ、決めているなら次打ち込みなさい。私は終わっているから、後は貴方だけよ」


 「うん」


 タブレットを手渡されると、そこには店のメニューがズラっと映っているのが目に映る。数は多くないが、値段はどれも1000円を超えないリーズナブルで量が多い。若者が好きそうなスイーツ系が大きく宣伝されているのは、ターゲット層を表しているようだ。


 そのタブレットの端、先にカゴに倉木の選択したメニューが入っていた。しかもパンケーキにクレープ、昼食にしては甘い食べ物ばかり。遥と同じくスイーツ好きなのだろうか。


 (昼食は甘いもので済ませるのか……)


 人それぞれだが、またもや予想外のチョイスに雰囲気で人の性格は分からないことを改めて理解させられた。


 それから遥は、明太子パスタと倉木と同じパンケーキをカゴに入れて確定ボタンを押して注文を終えた。


 「終わったよ」


 「注文してくれたのね、助かるわ。何を頼んだの?」


 「明太子パスタとパンケーキ」


 「……一緒に聞くと気分悪くなる組み合わせね」


 「倉木さんも、胸焼けしそうな組み合わせだったけどね」


 「私はスイーツを食べ慣れているから胸焼けしないわよ」


 「凄いね」


 カゴの中を見られても何も思わない人。ツンツンしている割には優しくて素直。しっかり者のようで、ツンデレの部類に入る人ではないのかもしれないが、これが倉木の素で本心からしたいと思える一部だと思うと和む心情が現れる。


 「休日はよく来るの?」


 「ここには三度目よ。頻繁に外に出ることはないから、今日暇で行こうかと思っていた時に相性指令が届いて、折角だし気になっていたとこに行こうとしたくらいね」


 だから少しツンツンして機嫌が悪かったのだろうか。


 「それだけ休日は充実してるの羨ましいよ」


 「貴方は何もなさそうだものね」


 「その通り。何かない?休日でも暇を潰せる方法とか」


 暇は無駄でもある。人生は止まることを知らないのだから、ただ呼吸をするだけの時間で消費されることは避けるべきだ。特に学生という唯一無二の時間を棒に振ることは。


 「今のとこ、基本第一学年は誰でも暇をしている思うわよ?映画やアニメ、漫画や散歩、そういった敷地内で限られたことしかできないんだから、それを充実と思えないなら、充実した生活を過ごせるはずないもの。大半は相性指令の遂行で時間は消費されるのが幽玄高校と聞いているわ。第一学年の今頃は、毎年幽玄について熟知する期間とも言われている。だから暇するのが普通と思うわ」


 「一学期って、そんな楽なの?」


 「卒業生のアンケートでは圧倒的に第一学年の一学期が楽と答えて戻りたいと答えているそうよ」

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