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俺だって




 特待生。その言葉を聞いた瞬間、桜羽と一瀬は同じく「えっ」と反応し、「マジ?!」「ホントか?」と、個性溢れる驚き方を見せた。


 「マジでホントのことだぞ。俺たちじゃ到底理解できない領域の人だ」


 特待生は端的に説明すると至高という言葉の似合う性格を持った人だ。今九重が言ったように、誰とでもコミュニケーションを取れて嫌悪感を抱かせないということ、それは誰でもできそうだが、実はそう簡単ではない。


 誰でも、ということなのだから、相性の悪い相手とですら歓談が可能ということ。その時に必要なのが迎合する力と、何があっても落ち着いて憤りを顕にしないこと。


 それらを容易く行えてしまう才能の持ち主。それが朱宮乃愛ということなのだろう。


 「凄いねぇ。確かに顔は一級品だし、性格も良さそうだったもんね。そんな1人と会うことになるなんて」


 「私の方が勝っていると思ったが、そんなこともなかったか。六辻、君には朱宮はどう見えた?」


 「ん?んー……明るくて一瀬さんに似た人、かな」


 どんな人か、具体的なことは言えないし敷衍するだけの他人の知識はない。だが、思うことは他にもあった。その裏に何かしらの過去を抱えているかもしれないということだ。


 全員が全員ではないが、幽玄高校に入学したならそう思えてしまう。過去に地獄を経験した故に、それを悟らせない精彩を手に入れて仮面をする。一瀬と似た、と言ったのもそういう意味があった。


 けれど、特待生なら別なのかもしれない。本当にコミュニケーションが得意な才女で、これまで平凡にもその才能を活かして過ごしてきただけの秀才。何通りもあるその可能性の中で、まだ会話して間もない遥には、当然判然とすることではない。


 「私と比べて私が負けることを見て楽しみたいという六辻遥の魂胆が見えます」


 「そんなことないよ」


 「一瀬より可愛いが、楽しみたいとは思ってないだろうな」


 「止めてよ。私は可愛い子で定着したいんだから」


 男女共に、見られるなら好印象を持たれて見られたい。その考え、一瀬もあるらしい。


 「まぁ、二組で良かったよ」


 「それでも私が居るがな」


 「そのうち、八雲だって!って騒ぎ出す人が出てくるからここでストップ」


 「遠回しにバカにするな。言いそうだったけど」


 空白の期間が空いたとしても、分かることは分かる。見事的中させることもまた、一瀬の人を見る力という才能なのだろうか。


 「それにしても、桜羽の対の存在って表現似合うよな。陰と陽だわ」


 「次は私をバカにし始めるのか?」


 「違う違う。シンプルにそう思っただけだ。あの様子だと、友達多くて人気者、そして愛の告白された回数は二桁だな」


 「特待生ってだけで人は寄ってくるからね。その才能と相性が良かったら人生イージーモードだから」


 コミュニケーションの王と相性が良いということは、派生した人たちとも必然的に仲を深めることが可能だということになる。そうなれば相性指令で協力者を募れるし苦労することは減る。デメリットのない存在の隣に立てるならば、幽玄高校を生きる上でこの上ない保険だ。


 「私は自力で探してこそだと思うから、特待生なんて興味ないな。元々皆、そのつもりで入学しているのだからな」


 「そう言って、特待生と関係が深まったら喜ぶでしょ」


 「時と場合によるが、今は絶対にないと言い切れる」


 「なら、桜羽さんは俺と関われていることは嬉しくないってこと?」


 「いいや、六辻と関われることは嬉しい。ただ、特待生とは違うと言っているんだ」


 「うん。だから聞いたんだよ。俺、特待生だから」


 そう言って遥を特待生なんて微塵も思っていない3人は、「冗談言うんだ」と、予想外なことを言い始めた。だから証明しようと、特待生にだけ渡される白色の生徒手帳を胸ポケットから取り出して中を見せる。


 「……は?」


 「えぇ??」


 「これは……本物か?」


 「偽物は持ってないから本物だよ」


 偽造することは即ち退学。弁えているから、禁忌を犯すはずもない遥のこともあって、同時に信じたらしい。


 「「「はぁぁ?!!!!」」」


 予鈴の代わりにしてはうるさい。その叫び声に周囲の生徒たちは次第に視線を向ける。叫びの原因がなにか、その中で分かった人は居るだろうか。真っ白な生徒手帳を見た人は。


 「本物じゃねーか!」


 「六辻くんって!えぇ!?」


 「き、君は……第一学年(私たち)の中で成績上位者であり、逸脱した才能を持った人だったのか……?」


 「うん」


 入学試験を受けなくても許される特待生が、本当に成績上位者かは分からない。現に頭の悪い遥は期末試験の際には一色の力を借りる予定なのだから。


 「どんな才能、どんな才能?」


 食い気味に一瀬が見るのは生徒手帳。そこには特待生である理由の才能が書かれているのだ。


 「【無感情ながらも人間関係を操り成長を促す者。その他2つ】だって」


 「他2つ?それは記載されていないのか?」


 「そうみたい」


 慎也から言われているのは、【他人の底に沈んだ感情を引き出し受け入れる者】【己の信念に忠実であり、暴力を嫌悪し他人を守る者】の2つだ。才能と呼ぶには物足りない気もするが、実際その才能が発揮されないと自分でも分からないと言っていたので、今も尚放置中だ。


 「マジだったなんて、今でも信じられないな」


 「うん。これは素晴らしい友達を手に入れたかもよ」


 「これは喜ぶ。六辻が特待生ならさっきの言葉は撤回だ」


 「軽いね、相変わらず」


 皆、才能持ちを褒めてくれるが、褒めてくれるだけで対応は変えない。崇めることなく、これからも友人として居てくれるのだから、遥にとっては気が楽だ。


 「まぁ、私も特待生と友達なのは嬉しいけど。これからは六辻くんのこともっと知らないとね」


 「許可したくないが、賛成だ」


 「なんで優の許可がいるのか分からないけど」


 そんなこんなで休み時間は終わった。

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