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おめでたい反面は陰気




 4月終盤と5月序盤。そこにある喜ばしい休日の連続――ゴールデンウィークを経て、遥たちは幽玄高校へ通っていた。まだ暖かくて温くもある、そんな季節のどんよりとした空気感。そんな好みではない気候に鬱屈にさせられることはなく、ただ学校に通うだけの遥は、今日も普段通りだった。


 それでも変わったことはある。遥ではなく、周りの変化だ。それは本人にとっては念願で、最も求めて、これから幽玄高校で生活する成長に欠かせない最重要の事。


 九重優斗と八雲佳奈の交際だ。


 「ゴールデンウィーク何も無く暇潰しして、そしたらいつの間にか終わってて、学校に嫌々登校して聞いた第一声が『私たち付き合うことになった!』っていう元気な一言。今日は私にとって地獄の日かな?」


 一瀬の不満にも含まれる今回の話題。5月に入って早速幸せな報告を聞かされ、晴れ晴れした気分が一切見当たらない相好へと変化したのは同情する。


 「おまけに今は仲良く購買行ってるでしょ?何故こうも陰気に塗れた日を過ごさないといけないんだぁぁぁー」


 机に伏して昼休みの残り時間を談笑にも費やせない陰気一瀬の完成だ。初めて見るし、元々八雲と似た天真爛漫で積極的な精彩少女がここまで疲れたように元気を欠くのは、それだけゴールデンウィーク明けが嫌悪されているということだろう。


 「お疲れだね。朝からずっとその調子だけど、そんなに影響あるの?」


 「あるよ!『私今日あれあれでね、すごい幸せだった!』なんて惚気を聞かされてみてよ!普通のカップルならまだしも、お似合いって思うカップルがそれだけ幸せそうにしてると嫉妬して自己休暇全部消費したくなるよ!」


 バッ!と体を机から離すと、その勢いで一瀬の方を体ごと向く遥に詰め寄った。


 「でも、良いことじゃない?友達が好きな友達と付き合えた。それなら友達として良かったと思うけど」


 「友達だからだよ。別に無関係の人がどれだけ美男美女カップルだったとしても、話を聞かされないしどれだけ幸せかを言われないからどうでもいい。けど友達だと話聞くしお似合いだと羨ましいって思うんだよ」


 「気にしなければいいんじゃないか?それか一瀬も彼氏を作るか」


 「来るな。ボッチ飯でもしててよ。ただでさえ意味分からないこと言ってくる変人なんだから」


 「したから来たんだ。いつも私は寂しく孤独にご飯を食べて君たちのとこに来てる。友達とご飯はそこまで気乗りしないから、そもそも好んでボッチ飯だがな」


 「強がらなくても、優のことは詳しく知ってるからいいよそんなの」


 いつもより辛辣に思える口調なのは、間違いなく八雲と九重の関係だ。今朝登校して久しぶりに顔を合わせたら、仲睦まじさに磨きがかかってることに疑問を持った瞬間、隣の一瀬と共に交際について聞かされた。


 ゴールデンウィーク最終日、遊びに行った九重から告白をして見事結ばれたらしい。「おめでとう」と気持ちを込めたが相変わらずの無で、込めたつもりとなった今朝が思い出される。


 「人は幸せ話を聞くとこうも変化するんだな」


 「多分桜羽さんが来たから悪化したんだと思うよ。さっきまではいつもの一瀬さんだったし」


 「最近六辻も私をイジメるようになったが、反撃してもいいのか?」


 「桜羽さんがそうしたいなら」


 「ならいつか一方的に攻撃する。いつでも覚悟しとくんだな」


 「分かった」


 精神的にも肉体的にも苦痛ではないだろうから、友人としての触れ合いとして受け取ることにする。


 「そういえば、今の話に無関係なんだけど思ったことがあってさ、優って視線集めないよね」


 伏した姿勢は変えないで、顔だけこちらに向けて言った。


 「どういうことだ?」


 「優って顔だけは良いでしょ?」


 「だけって言うな」


 「だから人気が出て視線を集めたりするのかなって思ってたけど、思ってたより集まらないし、やっぱり性格が悪いってことを見抜いてるのかな」


 確かに、桜羽はクラスでも人気が出そうな容姿をしている。言葉使いこそ男口調だが、それを除けば美少女と言っても過言ではない。


 スラッと伸びた足に大きな瞳、人より目立つ若干紫色の艶髪と長いまつ毛など、男女問わずに人気で溢れそうな風采をしていることは間違いない。


 「それだけ相性が関係してるってことじゃないかな?」


 「六辻くんもそう思う?」


 「どういうことだ?」


 「桜羽さんの容姿は綺麗だけど、それ以上に生徒たちが相性の善し悪しに意識が向いてるってこと」


 幽玄高校に通う理由としてある成長の鍵――相性。その相手を見つけることが根本的にある目標だから、たとえ美少女が居たとしても優先順位は下がるということ。


 「なるほど」


 「気にしてないって反応ムカつく」


 「私は自分の容姿については心底どうでもよくて興味も皆無だからな。他人の評価なんてどうだっていい」


 それを美少女が言うから鼻につくのだろう。それでも桜羽は本気で思っているよう。美少女だから言われ続けて辟易したという過去もありそうだ。美少女だからって、容姿に関して幸せ一直線の道は絶対じゃないから。


 「おっ、帰ってきたぞ。長々と購買で時間潰して」


 もう昼食を終えた遥たちに対して、今から昼食だろう八雲と九重。戻って来るのを確認して桜羽は再び一瀬の足の上に確保された。

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