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頼み事がある




 登校にも慣れてきて、起床時間から教室に入る時間が固定され初めた今日この頃、これまた固定されてきた会話の相手と、休み時間を談笑の時間に変えていた。


 「もう出されたの?早いね」


 「うん。隣の部屋の人の看病だったけど、難しいとは思えない内容だったよ」


 「六辻だからそう思うんだろうな。私なら看病なんて難しいとしか思えない。ちなみに男女どっちなんだ?隣の部屋の住人は」


 「女子だよ」


 「なら尚更無理だな。異性の部屋に入って看病なんて、私には不可能だ」


 「お疲れ様だよ。それに、どんな指令が出されるのか、参考にもなったからありがたい情報だね」


 今は昼休み。友人が少ない桜羽は真逆からでも遥たちの席に来て駄弁に興じて、一瀬は隣なのだからいつも通り。他は席を外している。


 そんな中で、遥が話題にしていたのは先日の相性指令の件について。一瀬も桜羽も相性指令は届いていないらしく、話しをすると思いっきり食いついてきた。だから今も尚、その話題に忘我して昼食後の暇を潰していた。


 「普段学校でこうして話す人たち相手じゃなくても、友達が相手として選ばれたんだし、一瀬さんも桜羽さんも、多分はじめましての相手が最初の相性指令になるとは思えないから、気楽に居ていいと思うよ」


 「かな?慣れさせるために、簡単なら良いんだけど」


 「私は誰でもいい。相手より内容を選ぶからな。簡単なら初対面でも構わない」


 「それはそう。相性悪い相手なのは流石に嫌だけど、合わない性格の人と関わるのはギリギリ妥協できる」


 西園寺でそれを経験したことのある一瀬だからこその、重みのある発言だった。


 「相性悪い相手がどんな人か、それも気になるが」


 「多分心底嫌になると思うよ。関わりたくもないし視界にも入れたくないような、そんな人間を見る目を向けなくなると思う。私個人の話だけど」


 「居ないことを願いたいけど、600弱の生徒数だと1人くらいは居る気がする」


 「その時は関わらなければいい。関わらないといけないなら、退学させたりするのも1つの手だな。学校側も配慮して、常に相性最悪の相手と関わることは避けているだろうから気にすることでもないさ」


 個人の成長に、己と相性最悪の相手を接触させることもあるのかもしれない。その方がその本人にとって大躍進の鍵なのかもしれないし、トラウマを克服する鍵なのかもしれないのだから。


 「その時はその時考えればいいってことだよね、結局。私には未だに難しいよ、この学校の過ごし方」


 今から対策をしようと考えても、思いつくことは何もない。相手がどう接近するか、それは相手次第であり予知不可能。臨機応変に対応する力を身につけることこそ、唯一の回避方法だ。


 「そういえば、料理教室通ってるって佳奈から聞いたけど、何か興味でもそそられた?六辻くんにしては珍しいと思うんだけど」


 相性指令のことを考えても意味はない。だから次、一瀬は何を話題にしようかと、気になっていたことの1つだろう遥の暇潰しについて聞いてきた。


 「何?料理教室に六辻が?」


 聞いて桜羽はすぐに驚きを顕にした。それだけ遥の料理教室は異彩を放つのだろう。


 「暇だから、することないかって探して見つけたのが料理教室。看病した時に、料理作れたら良いなって思ったのがきっかけかな。元々九重に色々挑戦するのは良いって言われてたから、メリットしかないと思って挑戦してるんだよ」


 一色と九重の後押しで決めた料理教室。実際通ってみて時間を有意義に使えているから不満はない。続ければいつか楽しいと思える時が来るかもしれないのだから。


 「暇潰しに料理教室か。面白いじゃないか」


 「スポーツとかも良いかもしれないけど、今は知識をつけたいから」


 「私は料理得意だから行かないけど、新たな発見とかしたいと思ったらありかもしれない」


 「嘘をつくな」


 「嘘じゃないよーん」


 確かに一瀬は料理が得意そうなイメージがある。一色に似た家庭的な雰囲気がそう思わせる。


 「なぁ六辻、それ本当なら頼みたいことがあるんだけど」


 「おっ、九重か」


 突然桜羽が九重の席を立つから何かと思えば、九重が戻ってきたから避けたらしい。購買に行っていた様子の九重は、興味津々に話題に入ろうとした。


 席を失った桜羽は、何故か遥の膝の上を次の席に決めたようで、一瀬を向く遥の膝の上に堂々と乗った。軽いけれど一瀬は桜羽の背中で隠れることに。


 「何?」


 しかしそれに何か文句を言うこともなく、ただ桜羽の腰に優しく触れて八雲の席に座らせようとする。しかし動こうとしない。だからそれを見て、今度は一瀬が動いて桜羽の体を抱き締めて自分と一緒に椅子に座った。結果桜羽の次の椅子は一瀬の膝の上となった。


 その際、一瀬に向けてニヤニヤする桜羽が印象的だった。


 そんな桜羽の謎の行為の最中、遥はしっかり話しを聞いて何か問うた。すると九重は聞かれたくないのか、遥の耳元で囁くように言う。


 「八雲も料理教室通ってるだろ?一緒に作ってるとか聞いてさ、そこで頼み事なんだけど、八雲の好きなこととか好きな物、気になってる人が居るか居ないかとか、そういうの聞いてきてくれないか?」


 「好きなことや物?気になってる人とか?」


 「その質問をなんとなくしてくれれば良いんだ。頼む」


 両手をスリスリして懇願される。正直他人からの頼み事は億劫だ。でも、九重には日頃お世話になっていて、友人となってくれた恩がある。だからそれに拒否はない。


 「良いよ。それだけなら聞ける」


 「マジ助かる!ありがとな」


 「うん」


 八雲に質問なんて、そんなの普段会話しているのだから簡単だ。頼み事というだけで、大きく変化することは何もないのだから。


 その後、「何話してたの?」「怪しい男子の密会だな」なんて声が投げられたが、遥からすれば桜羽のニヤニヤの方が怪しくて気になっていた。

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