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魅力




 そんな考えを持ちながらも、遥はしっかりと作業を進める。みじん切りは終えて次はそのみじん切りになった玉ねぎと、パン粉と卵、牛乳とひき肉、塩コショウを全て混ぜて練る。


 予め小麦粉をつけていたピーマンに、その混ぜ合わせた具を満遍なく詰め込む。


 「六辻くんはどうなの?相性についてさ」


 反対側でもしっかり作業し、遥と同じくピーマンに具を詰め始めた八雲から問われる。興味があるのは八雲も同じだ。


 「分からないよ。積極性に欠けるし、まだ6人としか関わってないから」


 このペースなら全員と関わることは当然不可能。相手を見つけることは夢のまた夢だ。入学の時点でその相手は夢の世界の住人となったが。


 「そう?逢とは仲良さげに見えるけど?」


 「隣の席で、最初の友達だからね。でも、八雲さんとか九重たちと対応は変えてないから、相性に関しては普通だと思う」


 「そっか。逢も六辻くんも趣味がなさそうだし、逆にそこが良いのかなって思ったけど、案外そうでもないのか」


 「幽玄高校の決めた相手ではないんだろうけど、相性は良いと思うよ。それは誰にでも言えるんだろうけど」


 八雲も九重も桜羽も星中も一色も。遥にとっては皆、苦ではない相手だ。だから相性が良いと思える特定の相手が居ない。けれどそれもまた、自分たちで見つけた相性良い相手であることは違いない。


 「そりゃ、六辻くんって誰とでも合うでしょ。こういう人苦手そうっていうのがないし、関われば誰でもその性格に理解を示させて仲良くできそうだもん。雰囲気的にだけどね」


 「そう?」


 「九重が言ってなかった?六辻はミステリアスが魅力で人を惹きつけるとかなんとかって。それがあるから、初見で嫌うことは基本ないんだと思う。だから誰とでも合うって思うんだよ」


 最後のピーマンに肉を詰めながらも、何度か言われたことある遥の謎の魅力について語られる。当然そんな魅力はないと思うし、出してない。だから謎の魅力として効力があるのだろうが、自分が理解できない以上、本当だとは思えない。


 「その様子だと、全く分かんないよぉ、って思ってそうだね」


 「その通り」


 「まっ、そうでしょ。自分の不出来な魅力には、相手がそれを酷評して自分が直すか直さないか決めるために気づけるけど、惹きつけるような良い魅力は、相手からしたら直す必要がないから酷評しない。だからそのまま気づかない自分で居続ける。自分の良い魅力なんて、客観視しても自分にとって普通のことだから分かりにくい。だからそれは普通だよ」


 コミュニケーションが得意。料理が得意。運動が得意。知力が長けている。それらの魅力は、しかし本人にとっては魅力ではなく普通のこと。大は小を兼ねると似て、得意なことは不得意な真似が可能とも言われるが、実際人間の性格はそうはいかない。


 何故コミュニケーションが苦手か、それは相手の性格を熟知して、その存在を網羅しないと解明できない。何故料理が苦手なのか、何故運動が苦手なのか、何故聡明になれないのか、それらは全て、その人個人の立場にならなければ分からない。


 畢竟、魅力なんて主観的には普通のことだから、魅力という単語で表されても気づけない。相手の気持ちを考えても、魅力について知ることは難しいのだ。


 「八雲さんたちの言う俺の魅力が悪いことじゃないなら、別に詳しく知ろうとも思わないから気にしてないよ」


 「悪いことじゃないよ。ただ、羨ましい。誰だって生きてたら嫌われることはあるのに、六辻くんはその心配がなさそうだもん。豆腐メンタルでも生きていけそうだから、そこは羨望の眼差し向けてるね」


 「八雲さんの性格も羨ましいよ」


 「ホントに?それは嬉しいな」


 微笑んで応える。確かに人と関わる才能のある八雲には、教わりたいことは山ほどある。けれどそれらは八雲だから可能にしてるのであって、性別も性格も違う遥は真似が限界だ。


 少なくとも容姿の善し悪しは深い関係がある。八雲のように整った顔立ちなら、積極的な性格も相まって相乗効果として男子には好まれるだろう。そのように、八雲の全てが性格と合致したから今の八雲が居る。それをただの六辻遥が学んだとこで、会得することは弁えることだけだろう。


 「ねぇ、どうかな?これ綺麗だと思うんだけど」


 改めて容姿の良さを感じていると、その大部分を担う顔を向けて、遥と目を合わせて出来栄えを問われた。


 「初めてなら上手すぎるんじゃない?俺とは大違い」


 形は様々。ピーマンを半分にすることすら下手で、歪にも肉は詰め込まれている。凸凹が激しい表面に対して、八雲の肉詰めは平坦な表面だった。形も全て均等。話しながらでも容易くそれらをやり遂げたとは、料理の才能も秘めたものがある。


 「形はどうだっていいんだよ。味と一生懸命作った思いがあれば」


 「そうかもね」


 九重に作ろうとする八雲が言うのだから、嘘ではないのだろう。


 (味が良ければいいか)


 誰かに振る舞うことは多分ない。ならば、自分が食べて美味しいと思えるならそれが終着点。無駄に個性を加えることも今は必要ないのだから。


 「残りは焼くだけっぽいよ。油引いてピーマンの肉詰め(この子)たちの(お腹)を下にして焼いて、その後タレ入れて蓋して見守るだけだって」


 なんとも個性的な説明だが、なんとなくで理解するのはちょっとの付き合いでも簡単だ。

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