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初めては隣か




 休日はいつからか、暇を潰す時間として確立した思いがあった。学校があるから休日を過ごしたいと思う。仕事があるから休日を過ごしたいと思う。そのように、平日が朝から夕方まで拘束されるから、休日の幸福感はより強く味わえる。


 しかしそれでも、人には趣味があるから幸福感を感じる方法を簡単に見つけられるわけで、遥のように特別何も持たない存在には、趣味という興味がなかった。


 だから暇を潰す方法を、休日に入ってからベッドの上で考えていた。


 「これが相性指令……」


 そんな時、その暇を潰す方法が見つかった。自分から探すのではなく、AIと学校側の決めた個人に対しての試験。その相性指令がたった今、テレビだけをつけて静寂をかき消す遥の目に映った。内容は意外だ。


 【第一学年一組所属である一色美月の看病をせよ。終了次第一色美月に下のボタンをタップしてもらうこと。部屋番号は6099。制限期間は本日土曜日のみ】


 「一色さんの看病?」


 知っている名前と共に、これまた予想外にも看病という単語。つまり、一色の部屋に向かって体調を崩しているだろう一色のお世話をしろという解釈で合っているはずだ。


 「何か罹患したのか」


 それは明白だ。


 だから早速私服に着替えて、隣に住んでいる一色のインターホンをポチッと押した。


 『はい』


 「どうも、隣の六辻です。さっき相性指令が届いて、一色さんを看病しろという内容だったので来ました」


 簡潔にまとめて、なるべく立たせるわけにもいかないので若干早口で説明した。それに、声も鼻声で本調子ではないことは明らかな声色で一色は言う。


 『そうですか。すみません、わざわざ。今開けるので待っててくだ――』


 ――さい。そう言いたかったのだろうが、綺麗に途切れてしまった。それだけキツいのか、待たせてはいけないと足早で急いだのか、とにかく万全ではない体調を使わせるのは申し訳ない。でもこれが寮の仕組み。どうしようもない。


 「お待たせしました。どうぞ、入ってください」


 ガチャっと勢いよくドアが開かれる。遥視点では小さい少女が、マスクをして出迎えてくれてくれた。顔色は悪くても笑顔だ。心配させないよう配慮してくれているのだろう。


 「お邪魔します」


 歩き方はぎこちないとか違和感はない。以前見た一色美月と雰囲気も変化はない。でも具合が悪いのはそうらしく、時々フラフラっとして額に手のひらを当てることもあった。


 「大丈夫ですか?」


 「今は昨晩より大丈夫ですけど、体のだるさは抜けないです」


 「そうですか」


 昨晩から熱を出したということは、打ち上げで大きく何か変化したのだろうか。原因は分からないが、元気ではない人を見るのはハッキリと嫌がる遥は、尽力することを誓って部屋に足を踏み入れた。


 「それにしてもびっくりです。2時間前に学校に連絡しただけなのに、まさか六辻さんに相性指令として届くなんて」


 幽玄高校は土日だろうと祝日だろうと、体調を崩したならば学校に連絡するのが決まりだ。基本教員が寮に入ることはないので、このように生徒同士で看病をしたり様子を見たりし合うために、必要な報告なのだろう。


 「俺もです。早速届いた内容が看病なんて」


 最初から中々遂行の難しい内容だ。


 ちなみにスマホには指紋認証があり、そこには幽玄高校の全生徒の指紋が認証可能となっているので、一色がボタンをタップすることで遂行と判断される仕組みだ。しかしその際、指だけを借りる必要があり、内容を見られてはいけないことが関係して、そこで本当に相性指令なのかは相手には分からない。


 「それじゃ、一色さんはベッドに寝ててください。後は俺が色々と看病するので」


 「分かりました。迷惑かけてすみません」


 「いえ、これも大事な経験ですから」


 ベッドの上に座っていた一色は、遥に従うと体を横に倒した。布団も肩が埋まるだけ被せるので、おそらく熱だということは分かった。


 「何か食べました?」


 時刻は10時半。気になったのは空腹か否か。


 「朝、ヨーグルトを食べたくらいです」


 「なら後で何か作るので、今は寝ましょう。その間コンビニに行って何か買ってくるので、ドアは少しだけ開けたままにしてていいですか?」


 親密度が足りていないことは確実だ。だからドアを閉められれば鍵を使っても解錠は不可能。


 「はい。大丈夫ですよ」


 「ありがとうございます。では、おやすみなさい」


 「おやすみなさい」


 それだけ交わして、一旦遥は外に出る。端っこの部屋に無理矢理入る関係は築いていないことを信じて、寮から最も近いコンビニに向かった。ヨーグルトや健康飲料、お粥を買って、今どきコンビニで揃うんだな、なんて思いつつも足早に戻った。


 不審者が侵入した痕跡はなく、静かに入るとそこにはしっかり眠っている無防備な一色の姿だけがあった。先日のバレーでは運動能力の高さを見せつけられたが、大半は今のように小動物系の印象と同じく、華奢で柔和な女の子なのだとハッキリ分かる。


 そんな一色の顔を5秒程度見ると、気配で起こす可能性もあるので距離を離して床に座る。スヤスヤ眠る前で物音を立てたくもないので、スマホも消音にして操作する。風邪と思われる人の看病の仕方など、可能な限り知識として取り入れようと勉強の1つとして調べていた。

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