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意味深




 「私が使った後でも使えるだろ?」


 「そうなの?六辻くん」


 「ん?使えるけど、お茶とアップルジュースが混ざったのは好きじゃないし、折角貰ったから新しいの使うよ」


 桜羽がアップルジュース入れる前に、六辻はお茶を入れていた。紙コップに限らず、底に僅かだが飲み物は残るもので、それが混ざったのを飲むより新しいのを選ぶ。


 その考えは既にあったから、桜羽が口をつけたから、という理由で交換した一瀬の考えに全く気づくこともなく、遥はただことの成り行き通りに従った。


 「六辻にこういう攻撃は効かないらしい。それより、変えるスピードが迅速だったのは何故だろうな。それだけ私の使った後、使わせたくなかったのか?」


 「気にすると思って変えただけ。脳内お花畑の優には、別の意味に捉えられたようだけど」


 「つまらないな。もっとこう、六辻の魅力に惹かれたりしないのか?」


 「惹かれたから友達になってるんでしょ?」


 「それは俺もそうだから、恋愛的な魅力とか関係なく、六辻の人を寄せ付けるミステリアスは効力高いぞ」


 「だから君たちはいつから話しを聞いているんだ……」


 九重が、以前遥と初対面の時話したことを、助け舟を出すように言った。遥の謎の魅力について。


 「確かにそういう魅力はある。だが、恋人にしたいとか、そういう思いはないのか?」


 「ないよ。まだお互い分からないことは多いし、色々お世話になってるけど、恋愛感情は未だに持つ気配はないね」


 「お前たち、よくその話しを六辻の前でできるよな」


 欠伸をして聞く側に徹していた星中が振り向きつつ言う。目線の先には遥がぽつんと座ってシュークリームを食べている姿があって、微塵も気にした様子のない雰囲気は、桜羽の恋に関する話題の歯止めとはならない。


 「何か気にしないといけないことあった?」


 「いいや、六辻はそのままの六辻で居てくれ。その方が助かる」


 「分かった」


 言われたら従う。ただそれだけ。悪いことが起こらないなら、その判断が正しいと信じているから。


 「まぁ、一瀬はそういう人ということか」


 「どういう人と思ってるの?」


 「人を好きになるより先に、相性の良い相手を見つけると本気で決めている人だ。少なくともこの学校に恋人を求めて来る人も居るように、恋愛を主軸に学校生活を送るのが普通と思っていたが、然程そうでもないんだな」


 「恋愛専門学校だっけ?そんなこと言われてたっぽいしな」


 幽玄について疎いと自負する星中らしく、未だに全てを把握していない胡乱な状態を分からせるかのように言った。


 「恋愛だけが全てじゃないし、楽しければ学校はそれで十分でしょ。恋したい人がするだけ。たったそれだけのことだし」


 「はぁ……恋愛をする友達は居ないものか」


 ベッドを背もたれにして、寄りかかって怠ける。何度も言うように、桜羽は誰かの恋を見ることが趣味らしい。少し変わった趣味を持つが、家庭環境に不満があったからこそ、愛に関することに強い憧憬のようなものを抱くのは仕方ないのかもしれない。


 「目の前に居るけど?」


 テレビを見始めて横に並んでイチャイチャも始める2人を、こいつらだと目線で合図する。こちらの声は聞こえてないらしく、2人の世界に入るのは当たり前のことのようだ。


 「それはそうなんだが、違うんだ。私が見たい条件と」


 「何それ。面倒な女は嫌われるよ」


 「実際今は嫌われてないから大丈夫だ」


 「俺たちに関わる前はボッチだったから多分もう……な?元気出せよ、桜羽」


 「君は辛辣だな、星中。男版の一瀬か?」


 攻撃が左右から終わりを知らないように飛んでくる。それに丁寧に応える桜羽だが、遥的に6人の友人の中で最も胡乱な存在がこの桜羽優であるので、どんな人かを黙って観察している今も、まだ謎は多い。というか増えていっている。


 今言った、恋愛を見たいが、条件があるということにも違和感を覚えるし、体を寄せてパーソナルスペースを無視して近づく意味も分からない。何よりも、遥と相性が良いと言ったことが引っかかる。そんな関係性、感じられはしないのに。


 「私は1人が好きだからボッチなんだ。1人の方が都合が良いからな」


 「それは性格的にってこと?」


 後ろから突然問うた。シュークリームは食べ終えたから、袋はゴミ箱に入れて、もうベッドでなくていいと、桜羽と一瀬の間に入って。


 「そうだな。元々好きだったんじゃなく、好きになるしかなかったと言うべきか。それが正しい」


 変えられない何かに抗うため、仕方なく変えたような言葉選びだ。家庭環境が複雑で幸せとは言えないようなくらいだったから、その影響があるのだろうか。それとも生まれてからある根付いた性格として、仕方なく受け入れているのか。


 決して言い方に負の感情は見えない。今と過去に不満もなさそう。


 だからこそ、何故そんな言い方をしたのか不明瞭だった。


 「ふっ。自分のことを話すのは好きではない。だから終わりだ、私の話は。何か面白い話でもしてくれる人は居ないのか?」


 「私からしたら、優の話が面白いけどね」


 「そうか?なら、私の長い長い話の犠牲者になるか?」


 「それはNOで」


 「ふふっ。――決めた」


 笑った後、きっと遥にだけ聞こえた。それほど小さかった声。何を決めたのか分からなくとも、桜羽の何かが変化したことは感じた気がした。


 結局打ち上げとやらが終わるまで、最も頭の中に残った疑問がそれだった。皆が各々楽しかったと口にして帰宅するまで、ずっと残って。


 ただの言葉ならまだしも、決めた、と言うには全く相応しくないタイミングだった。だから余計、去り際に背中を見つめて何を決めたのか、ほんの少しだけ気になっていた。

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