表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/188

そこは不憫じゃないんだ




 「六辻くんも苦労するね」


 「そんなにだよ」


 実際精神的ダメージは皆無だし、無感情で無愛想な存在に相手から付き合ってくれるのは何よりも幸福なことで救済でもある。一瀬を起点として、九重や八雲が声をかけてくれなければ今の遥は空気感に不慣れで置いていかれただろうし、話したこともないからと、隣に迷惑がかかることを恐れて自室を提案しなかっただろう。


 だから苦労することは何も無い。それにたとえ苦労したとして、それもまた成長へと繋がるコミュニケーションの1つなら、喜んで受け入れる。それが今の遥だから。


 「そろそろ良いんじゃないか?電源止めないと焦げるぞ」


 一瀬と桜羽の攻防戦の最中、九重と会話していたしっかり者の星中が気づいて指摘する。


 「だって、優」


 「うん。分かってる」


 ポチッとボタンを押して、一旦電気を遮断する。焦げ始めてもいないので、時間的に完璧に指摘した星中には皆、感謝した。


 「ちなみにお前たちが話してる時、中に入れるもん入れてるから、たこだけじゃないからな?怖いならお好み焼きだけ食べればいいけど」


 狡猾な九重らしい。


 逃げ場を作ってお好み焼きに手を出さないのは助かるが、それでも作ったら残さない、そして打ち上げという盛り上がりの場で雰囲気的に食べないことが許されるはずもないので、誰もが失敗を嫌悪し、成功を口に入れたそうだった。


 「馬鹿舌の人居ないの?」


 「居ても、美味しいと言えば当たりか外れかも分からないだろ?」


 「それもそっか。まぁでも、ここはやっぱり一番活躍した優が一口目じゃない?」


 「九重か星中に頼むだろ、普通。私は活躍したから美味しいものだけ食べられないのか?」


 「活躍の報酬は私たちが生地作る間、六辻くんと仲良くすることでしょ?だから今は期限切れ。ここからは全員平等にね」


 「……私の不憫は平等なのか?」


 すっかり定着した扱いは、満場一致で平等公平の概念となった。それに不満はあるけど、やはりそれ以上言及して取り消せ、なんても言わなくなっていた。次第に壊れていく桜羽が、いつか本当に狂わなければ良いが。


 「いや、待て。六辻と仲良くすることも報酬の1つなら、六辻は私と仲良くしてくれなかったことにより、()()として一口目をプレゼントしよう」


 名案を思いついたかのような清々しい転嫁による笑顔は、場に合わず奇しくも美しい。


 「えっ、俺?」


 「んー、仕方ないから、六辻くんと優の2人にプレゼントするよ。贅沢だなぁ、全く」


 「私は絶対に抜け出せはしないんだな……不公平、理不尽だ」


 「まぁ、良いけど」


 桜羽が諦めたのなら遥も承諾する。正直何が混ざってるのか楽しみだし、食べて味がおかしくても、食べ物を混ぜたなら飲み込めば心配ではない。それに買い出しに行ったのだから、ある程度何が混ぜられているかは把握している。吐き出すような食品は記憶上ない。


 だから舌の肥えた隣の美少女と違って飲み込めることを確信して、そっと手を伸ばした手前端のたこ焼き。まだ十分に熱を含んでいるから、熱気が一瞬で肌に伝わる。桜羽はど真ん中のたこ焼きを1つ取って紙皿に置いた。


 「見た目は普通だな」


 「優斗がやべぇもん入れてない限り見た目は普通だな。見た目に変化が表れ始めたら、大当たりってことになる」


 「星中はそのやべぇもん入れてないの?」


 「さぁな。お前のに入ってるかもな」


 なるべく美味しく食べたいのは当然だが、美味しくなくてもいい。


 「これ何個くらい入れてるの?全部?」


 遥と桜羽に当たっても当たらなくても、いずれ全員食べるだろうたこ焼きに、八雲は気になったらしく問うた。


 「10個くらいだな。正確には分からないけど」


 「正解だけを食べたいよ」


 24個のたこ焼きの中で、正解は14だけ。いい塩梅くらいか。


 「もう食べていいのか?」


 「どぞー」


 全員の許可が出たので、遥と桜羽は目を合わせると、「いただきます」と口にして、その口に自分の選んだたこ焼きを放り込んだ。目を瞑って食べる桜羽に対して、動じることなく食べる遥。そんな真逆の2人を見て、見ている側は反応を待つように凝視していた。


 「……これは……イチゴっぽい味がする」


 「大正解だな。そこには俺が入れたイチゴチョコレートがプラスされてたからな」


 勝敗を決めるなら九重の勝ちだ。ならば桜羽はどうだろうかと隣を見ると、遥が見るより先に満面の笑みで何か言いたげな相好で既にこちらを向いていた。


 「残念だな、六辻。私は普段不憫だから幸運の持ち主らしい」


 「美味しいの?」


 「うん。たこ焼きの味しかしない。ソースと鰹節の味もしっかり感じれる」


 「これで馬鹿舌だったら面白いのに」


 それはきっと誰もが願うことで、桜羽は常に不憫であってほしいと強く思うから、八雲も期待外れにガッカリなのだろう。


 「そこは優斗も俺も入れてないから、普通に回避したってことだな」


 「何故か悔しい。不憫じゃない優は優じゃないよね」


 「ヌゥって感じ」


 「人間関係あるあるの、嫌いな相手が喜んだらムカつく現象のような扱いは止めてくれ。普段の行いが私を助けたんだから、素直に凄いと言ってくれてもいいんだが?それと名前を改造するな」


 仲が悪いことはない。けれど今の桜羽を見れば、大半の人はイジメられていると解釈するだろうと、イチゴ味のたこ焼きを噛みながらも感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ