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ここでも不憫なのか




 一色に連絡をすると、『今日は私も打ち上げがあるので、気にせず楽しんでください』と返信されたので、運が良かったと思いつつ両手に荷物を抱えて自室に戻った。


 「おかえりー、そしてありがとーう」


 八雲の出迎えも、九重にとっては有効でも、疲れを感じるだけの遥には無効だ。けれど感謝は伝わっているし、罰ゲームを受けることも人間関係を築く上で大切なことだと無駄ではないことを言い聞かせる。


 「何買ったの?」


 出る前に、お好み焼きとたこ焼きを作る材料以外なら好きに買ってきていいと頼まれていたので、遥と九重のチョイスで様々な食品を買った。それを何かと覗きつつ、一瀬は問うた。


 ちなみにたこ焼き器とホットプレートは八雲が持ってきてくれたので、用意するものは何も無かった。紙皿や紙コップなど買えばいいとのことで、食器も未使用だ。


 「へぇ、頼んだ材料にスイーツ、ちょっとした駄菓子と飲み物にトランプと布巾とかか。結構買ってきたね」


 「桜羽が大食いだから、これでも足りないだろうけどな」


 「おい九重、私は一言も大食いとは言ってないが?」


 「なんとなくだからな」


 「真逆だ。私はそんなに食べないぞ」


 早速始まる桜羽いじりを横目に、遥は別の袋に入っているクッションを取り出して渡していく。大勢来ることを想定してないから、数が足りなくて床に座らせてしまうことになったので、九重と協力して何とか無料の範囲で4つ買った。


 座布団のようだが、カチカチ床よりましだろう。


 「5つしかないから、俺がベッドに座るよ」


 テーブルの高さ的にベッドは高過ぎる。だから自室ということもあって、そこは遥が座る。


 「ありがとう」


 遥に近い星中に渡して奥へ渡してもらう。手伝ってと言わなくても手を差し伸べてくれるのは、友人という関係を感じれてホッコリとするものだ。


 (ソファ買おうかな)


 テーブルは6人でも十分なスペースがある大きさなので心配はない。でも人が来た時、背を預けて寛げる家具が無いのは姿勢的にもキツい。次ももしかしたら同じことがあると考えて、成績維持も自信ない遥は、無料()のうちに買うことを決めた。


 全員にクッションが回り終えると、既に役割分担でたこ焼きとお好み焼きの生地を作り始めていた八雲と一瀬と星中。桜羽は不器用だからと、全てを星中に任せて、只今星中1人でお好み焼きの生地を作っている。


 最も優勝に貢献した桜羽だからと、全員桜羽が何もしないことに許可をした。流石にその時までいじり倒すことはなく、純粋に勝てたことと楽しめたことが何よりも勝ったらしい。


 「あっ、優。2つともコンセント挿して油引いといて」


 「分かった」


 それでも不必要な存在ではない。コンセントに近いので、伸ばされた延長コードに手を伸ばして挿し込むと、次にキッチンペーパーを取って、熱を含み始めたたこ焼き器とホットプレートに油を引く。


 それをしっかりと計算して頼んだから、たこ焼きとお好み焼きの生地はちょうどいいタイミングで完成した。


 「そういえば、九重と六辻くん、たこ焼きのたこって切られたの買ってきた?」


 「うん。これでいいなら」


 「完璧ー。ありがと」


 買ったのは遥でも、感謝する方向は九重の方が良いかもな、なんて友人と友人の相性について考える。他人の幸せはどうでもよくても、友人は違う。前々から抱く遥の変わりつつある考えだ。


 「こういうのって、たこ以外にもやべぇもん入れるのが普通だよな。チョコとかワサビとかお前たち買ってきた?」


 「それは九重が」


 「当たり前だろ。恋斗がそう言うと思って買ったぞ。ってことで、ハズレが当たったら全責任は恋斗な」


 頼まれてないのを買って責任転嫁なんて最低だが、そんなことで責める人はこの場に居ないので結局お咎めなしだろう。しかし、常に生まれてから高級料理しか食べてないような、完璧超人と自負する、舌の肥えているだろう美少女は違うようで。


 「闇鍋みたいなの始めるのか?私苦手なんだが」


 「苦手なら尚更やるしかないだろ」


 「良いね。全部優にやっちゃおう」


 しかし止められない。多数決に勝てるわけもなく、そもそも桜羽優という存在の時点で勝ち目はなかった。


 「一瀬、実は私のこと嫌いだな?それとも今日のイベントの嫉妬が続いているのか?」


 「どっちも不正解でぇす」


 煽りたいだけ。楽しみたいだけ。それだけが滲み出る一瀬の否定に、桜羽もそろそろ本当に何とも思ってないことを確信したように口を尖らせた。いや、まだ確信していないようにも見えるが。


 「もういいかな?優、弱火にして」


 「嫌だと言ったら?」


 「六辻くん、弱火にして」


 「うん」


 「……六辻、助けてくれ」


 「話し相手にはなるよ」


 反撃すら意に介さない。既に手のひらの上となった桜羽は、やはり最も心開いていると言っても過言ではない遥に縋ろうとする。それに応えるのはもちろんのこと、助ける助けないなんて関係なく、そうしたいと思うから遥は相手になることを申し出た。


 調節するなら、席順的に桜羽の次に遥。そして一瀬。遥は今回、先程話していた2人の真ん中となっていた。八雲は九重と一瀬の隣。桜羽と九重の間に星中。


 ベッドの上ということもあって動きにくいことは仕方ないが、膝を曲げて座っていると、太ももの上に紙コップを置いて遊び出す桜羽には、少しどういうことかと不思議に思っていた。

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