表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/188

打ち上げすっか!




 初対面の日を思い出す。当時ボッチに見られるのは嫌だからと懇願して友人となった一瀬。今でもそれは同じらしい。


 「冗談だが。私はただ瞼を閉じて次の試合までゆっくり過ごしたいだけだ」


 「俺、起きるまで動けない?」


 「いいや、動きたい時に動いていい。束縛する女ではないからな」


 「付き合ってから言いなよ。見てる側だと付き合ってる人たちの会話にしか見えないけどね」


 そう言う一瀬の後ろでは、常に笑い合う2人が目に入っていて、後ろを見ても前を見ても男女が2人の空間を作り始めていることに鬱陶しさを感じているようにも思えた。


 「ただいま。戻ったら何か凄い空気感になってるけど、俺が飲み物買う間に何か進展したのか?」


 存在感もなく戻ってきた星中は、片手に水を持っていた。ジュースやお茶ではないとこ、意外と健康に気を使っているのかもしれない。


 「良いとこに戻ったな、星中。実は一瀬が余り物でな。少し相手をしてくれ」


 「待って待って、私は別に余り物じゃないし、誰かと肩を寄せ合うことを求めてるわけでもないから」


 「何の話?分かるように説明してくれよ」


 「九重と八雲さん、俺と桜羽さんがこうなってるでしょ?だから一瀬さんが桜羽さんにイジメられてるって状況」


 仲良く男女で会話しているのに、1人だけ除け者にされて寂しくしている。ということを簡単に表すが、しかしそれでも星中は理解したらしい。


 「あぁ……つまり相手がいないっていうのを、性格の悪い桜羽がいじわるにもバカにし続けたってことか?」


 「は?違っ――」


 「そういうこと」


 「六辻、君はいつでもどこでも私を裏切るのか?!」


 星中は聡明だ。一瞬にして桜羽をイジメると決めたのだろう。普段からイジメられてるから、その倍返しに今イジメている。ということを理解すると、桜羽が悪いとすぐに敵対方向を変えた。それに乗っかった遥に、最も信頼してくれている桜羽は再び不憫を受けることとなった。


 「裏切ってないよ。ホントのことを言っただけ」


 「確かにイジメる側だったが、意趣返しというやつなんだが……はぁ……眠気もなくなった。私は卒業まで不憫な扱いなんだろうな」


 「卒業できるといいね」


 「止めてくれ、その目。卒業まで気楽に過ごしたい」


 一瀬の、退学させる、と言いたげな相好は桜羽に響く。誰もが成長を経て卒業をしたいと思う中、それぞれ過去の因縁やトラウマと真っ向から挑んで打ち破ることもあるだろう。それは桜羽にもあって、入学したからには、それなりの信念がきっとあるはずだ。


 「何の話してるのーかな」


 星中も戻って騒がしくなった集まりに、更に仲良しの2人が加わる。合計6人のチームメイトたち。個性の強い相性の良いメンバーだ。


 「色々と話してたよ。佳奈たちのこと、優が性格悪いってこととかね」


 「優の話が気になるんだけど」


 「私が悪人にされてるだけだ。面白くもないから聞かないでくれ」


 「結構ボコボコにされてるんだな、そっちでも」


 やはり幸せだったのか、九重の笑顔はいつもより輝かしい。まるで桜羽の対比的存在だ。


 「まぁ、優の扱いはいつも通りだし、大して変わらなさそうだから、後でゆっくり聞くよ。お疲れ様の打ち上げでね」


 「打ち上げ?」


 遥は聞き慣れない言葉に首を傾げて問い返した。意味ではなく、何故するのかという疑問だ。


 「折角6人も居るし、これから3年間も同じなんだから、これからよろしくってことでみんなでワイワイ騒ごうよ」


 「そんで、ミスの罰ゲームとして、六辻と俺が買い出しってことで今八雲と話してたんだ」


 「あぁ、なるほどね」


 何もイチャイチャしていただけではないらしい。罰ゲームを言い出した人が罰ゲームを考えてくれるのは進行的にありがたい。それに買い出しで済むなら賛成一択だ。


 「賛成だけど、どこでするんだよ」


 「今のとこは勝手に逢の部屋にしてる」


 「端っこだから?」


 「そういうこと。防音完璧な部屋だけど、なるべく隣に配慮したいじゃん?だから一応そう決めてる」


 6050はエレベーターと誰かの部屋が隣。確かに端っこでも、人が最も多く行き来して多い場所でもある。八雲たちの考えで言うなら圧倒的に適した物件を持つ者が居るが、隣のことを考えると名乗り出ることは難しい。


 「他に良いとこある?逢の部屋より完璧って人とか、知ってる場所とか」


 けれど問われて嘘をつくこともしたくないので、ここは防音完璧を信じて名乗り出ることにする。


 「俺の部屋、6100で最上階の端っこだから、エレベーターに乗り降りする人を気にしないで良くなるけど」


 「えっ、ホントに?最高の位置じゃん」


 「羨ましいな」


 「六辻くんが侵入を許可するなら、そこにしようよ」


 「俺は大丈夫だよ」


 (後で一色さんに言わないと)


 主催者たちの驚きを受け、騒がしくなった時のために一色へ一言謝罪の準備と許可を得るよう連絡することにして承諾した。


 「みんなはどう?」


 それぞれの了承を得て、満場一致で打ち上げは遥の部屋となった。クッションやテーブルも既に届いていて、簡素でも散らかりのない整った部屋は、普通に人を招き入れるに十分な綺麗さを保っている。だから憂慮は皆無だ。


 「よっしゃ!決まったら優勝する気が出てきた!連勝して自己休暇増やして、それから騒ぐぞぉ!」


 八雲の気合い通り、それからというもの順調に進んだ。特出した才能を持つ桜羽は当然相手を寄せ付けない圧倒的な身のこなしで、ミスを一度だってしなかった。一瀬も八雲も、女子の平均より遥かに動ける身体能力の高さは見ていて圧巻。星中と九重は言うまでもなくお巫山戯に走ってミスを連発。


 そして遥は、喜びも悲しみも悔しさもなく、ただ無感情無表情にボールを弾いて叩いて球技を行った。ただ行っただけ。楽しくとか、そういった単語は出ないが、良かったと、それだけを思えたのは確かなことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ