この2人……デキてる?
それからというもの、25点目を獲得するまでに各々ミスをしたりしなかったり。続いて結局、4回の同率で並んだ遥と九重が罰ゲームを背負うことになって、初戦は勝利で終えた。
遥に関してはただただミスしただけで、九重は誰だろうと関係なくミスを誘発させようと、わざと適当にボールを操ってミスをして、自業自得という言葉がお似合いとなっていた。
「いやー、バカするもんじゃないわ。運動できるって言って4回ミスとか、中々恥ずかしいな」
誰も点数をカウントする係でもなく、審判を担う役割でもないので、試合をしていない片方のチームに任せてステージ上で観戦していて、同率とはいえ最下位の九重は愉快そうに笑って言った。
「結局、優にボール集めても1回もミスしないもんね」
「私が失敗すると思っていたのか?」
「期待してた。可哀想な優を見て笑いたかったのに」
八雲の意見は桜羽と遥を除けば納得のようで、うんうんと二度首を縦に振る3人は性格がドSなのかもしれないと思わされる。
「私に苦手なことはないからな。完璧超人というやつだ。だから今後矛先を向けない方がいい」
それに威張るようにして豪語する。見た目は高校生より少し上の年齢を想像するような優艶さがあるが、中身は年相応だ。自分という存在を未だに理解していないようで、それについて星中が言及する。
「それを言うことが、桜羽の弱点だろ」
「恋斗の言う通りだな」
「自慢ばっかしてたら、逆にそれを利用されて恥ずかしい思いするのは自分だからなー」
「散々イジメられたんだ。調子に乗ることは許されるだろ?」
「知らね」
最も扱い方の雑な対応。しかしそれに慣れると、人は恐ろしく落ち着いてもので、桜羽は既に適当な対応に不満を零すことはなくなっていた。ずっとステージ上から足をぶら下げて、交互に動かして、遥の隣で満足気に試合を眺める。満足気と言っても、幼い子のように憧憬の目を向けたりする相好を作るのではなく、いつどこでも桜羽らしく軽く微笑む程度の相好を。
「俺、飲み物買ってくる」
「いってら」
大胆に音を鳴らしてステージから飛び降りると、星中はそう言って歩いて体育館外へ向かう。それに片手を挙げて九重も送り出す。そして視点を隣に座る八雲に向けると、八雲と一瀬の間にいた星中が抜けたことで、端の2人だけとなってその空間を作って言う。
「八雲、お前さっき足引きずってなかったか?怪我でもした?」
「うーん、どうだろう。少し違和感あるけど、痛いとは思わないし動けないこともないから、多分大丈夫だとは思うけど」
「氷嚢で一応冷やそうぜ」
「作るの大変じゃない?」
「怪我に繋がって介護すんのが一番大変だ」
「それもそっか。んじゃ頼んだ!」
背中をバシッと叩いて自分は動かないという意思を示す。
それにしても怪我したらアフターケアをしてくれると言い切る九重はやはり気があるのだろうか。元々他人に対して善行を積み上げるだけの性格を持っているが、それでも八雲に対しての関わり方は飛び抜けている。
足を引きずるとこなんて遥には記憶にないし、元気という仮面の裏に怪我の手前の状態の八雲が居るなんて、そんなこと分かるだけ時間を共にしていない。だから、可能性は高い。
相性の良い可能性が。
「頼んだって言われても、そこのバッグから取り出すだけだ。いつも運動の時持ち歩いてるからな」
立ち上がって自分のバッグを持ってくると、漁って氷嚢を取り出した。用意周到なのは、過去にその経験があったからに違いない。遥はなんとなくそう思っていた。
「ねぇ、あの2人ホント仲良いよね」
そんな仲睦まじい2人を見て絶対に反応するだろう一瀬は期待を裏切らない。視線は九重と八雲に向いていても、投げた質問は桜羽と遥だった。
「前々からあの距離で話す仲なのか?」
「うん。授業中もだよ」
「そうか。誰でもというわけでもないなら、相性とやらが関係していてもおかしくないな」
「隣に相性の良い人が居るのは羨ましいよ。あっ、別に六辻くんを嫌って言ってるわけじゃないからね?」
失言だったと慌てて補足するが、大正解だから何も言い返す言葉はない。それに一瀬の性格も知っているから、無意味に嫌われることもないと理解している。
「分かってるよ。相性が良くなくても仲良くはなれるしね」
何故相性が決められているか。それは単に生徒同士の人間関係を積極的にする意欲を高めて成長を促進するためだ。誰かと教えないことで自ら動き、相性指令によって思考して行動する。それを狙うのが大きな理由。
そしてその原動力として、時に恋心という気持ちを利用する。大きく飛躍するために、思春期で最も繊細で奥深くてハイリスクハイリターンの感情を。
だから相性なんてただの成長の材料。予め決められた相性の良い相手じゃなくても、関わって仲を深められるならそれで良い。とはいえ、六辻遥にそんな人間は存在しないらしいが。
「失恋したな」
「してないよ」
「私のこと好きだったの?六辻くん」
違うことを知っているだろうに、桜羽を挟んで覗くように体を前に倒していじわるにも聞いてくる。
「好きだけど、そういうことじゃないよ」
「友達として、というやつだな。これは逆に一瀬が失恋したパターンか?」
「恋とか今興味ないのでー。まずは相性の良い相手を見つけるのが最優先」
「桜羽さんは恋愛関係のこと話すの好きだよね」
先日話した時から思っていたことだ。恋愛という言葉に強く反応した態度と、深くまで探ろうと質問を続けるのは、そう思わせるに十分だった。




