表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/188

初のイベントと星中の中学時代




 盛り上がりは常にピークだった。


 木曜日の朝、イベントが行われる日の日程は全て午前中で終わるため、1つの休日と大差ないことに嬉々としつつ一組の生徒たちは体育館にて騒ぎ続けていた。


 全校生徒が1日にイベントを行うことはなく、クラス内だけのイベントならそのクラスだけ、クラス外とも触れ合うなら当然触れ合うクラスだけがイベントとなる。故に今、全校で唯一第一学年一組だけが喧騒に包まれている。


 「俺たちはこのチームとこの後試合だって」


 2つのコートを使い、それぞれ6チームの内4チームが競い合う中、星中が遥の肩に手を置いて言った。このチームと言われるチームの人数は6人で、現在試合中。盛り上がりは尋常じゃなく、一喜一憂する様は男子の見せ場だからと張り切っているからだろうか。


 星中と遥については、既にはじめましてから3日目となっているので、会話は簡単にできるほど距離は縮まっている。だからたわいないことも返せるくらいにはなった。


 「勝てると思う?」


 「正直人数差って減ったならまだしも、増えても関係ないだろ?勝ち負けで見るなら、多分勝てる。そもそもこの球技自体目的は勝敗じゃなくて、チームメイトとの交流だろうし、戦力差も然程緻密に組み込んだとかじゃないだろ」


 「かもね」


 遥と似たような考えを持つ星中。入学して間もないイベントは、クラス内で行われるのが基本だと慎也は言っていた。それは十中八九交流を深めるためだ。優勝したらチームメイト全員に自己休暇が1日付与される報酬があるが、それは一応の報酬であり、チームバランスを見て分かるように、大差で勝敗が決まるとこもあることから、やはり組み合わせは相性重視の運動能力無視なのだろう。


 相性で組み合わせをして、楽しめることに重きを置いたメンバーで球技をすることで、大差で負けても然程気にしないような人たちを負けさせる。出来レースとも言えるが、その方向性に気づかないのもまた、学校側の調べ方や心理操作、精神的な思考の熟知は完璧とも言えるのだろう。


 畢竟、楽しければそれでいい。不満がなければ人は些末なことは気にしない。よく考えられたものだ。


 「まっ、1日でも休日貰えるなら優勝するしかないけどな」


 「うん」


 相性指令を本当か確かめる回数が増えること、それは大きなメリットだ。


 そう考えるように、遥は人と根本的に考え方が違う。


 自己休暇に意味がないと思われがちだが、実は自己休暇で休む日には相性指令を遂行しなくてもお咎めなしの日という万能で唯一無二の特権が存在する。


 だから、【3日以内に〇〇と接触し、4日以内に友人となれ】という相性指令が出され、偶然風邪を引いて休むしかないという時などに、それが土日だったとしても自己休暇を使うことで一旦相性指令がストップすることになる。


 相性指令は最も評価を左右する試験であるので、決してミスをしてはいけない。それが頭にある以上、自己休暇はペナルティでも捨てるべきではない重要な休日だ。


 しかし遥はそれをただの休日を作る権利としか思っていない。そしてペナルティ覚悟で相性指令を覗くことも当然だという考えを持つ。


 だから1日休暇の増えることに対して、(よし、休みが貰えるから楽ができる)(1日サボれる)ではなく、(ペナルティなしで確認できる)という、疑心暗鬼の考えが根付いているのだ。


 「そういえば、あいつらどこだ?お前しか居ないけど、全員トイレ?」


 「俺は点数をつける係だからここに居るだけ。みんなはステージに座って眺めてるよ」


 言ってすぐ、目線でそこに居ると、体育館真ん中から、ステージ中心で寛ぎつつ笑い合うチームメイトの居場所を教える。


 「あぁ、そこかよ」


 「ここも暇だし、混ざりに行く方が楽しいよ」


 「元々そうする予定だったけど、お前からそう言われると行きにくいな」


 遥をボッチにして、友人ではないと思わせるような行動をしていると思う、言わば気にしちゃうタイプらしい。


 「もう終わりそうだし、ここでいい」


 「いいと思う」


 正直話し相手が居ることは助かる。捲って点を表示するだけの仕事は面倒で無意味。楽しく盛り上がる人たちを前に、対比の存在として暗い遥が居ても空気が淀むだろう。だから星中の判断に少なからず好印象を覚える。


 「星中は、この学校に面白いことを求めて来たんだろうけど、中学の頃はそんなに退屈だったの?」


 ゆっくり座った星中に対して、ずっと記憶に残っていた学校に通う意味について問うた。珍しくも、幽玄高校のことはあまり知らなさそうだったから強く残った印象だ。


 「結構退屈だったぞ。問題児だらけで授業は進まないし、3日に1回は学校の備品が壊される。他にも停学者は何人も居て、それはもう学校が何だか分からないくらいにはぶっ壊れてたな。そんな学校に通ってた俺も悪いんだけど、それを面白いと思えなくて飽き飽きしてた」


 「そんな学校あるんだね。卒業してここに?」


 「もちろん。行きたくなかったけど、行かないと親にも悪いしな」


 「……確かに」


 中学に通わず引きこもりとなった遥には色々と痛く響く言葉だ。しかし星中のその考えはきっと正しい。親には子を学校に通わせる義務がある。それに従って良い教育を経て、今のしっかり者としての性格を形成したのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ