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興味があるの




 ――前から興味があった。


 桜羽も同じことを言っていた。桜羽は憧憬抱く先輩と似た遥に、何かしらの思いを持って接していたことが興味の根本的な内容らしかった。ならばこの朱宮はどうだろうか。


 「前から?タオルを被せたこと?」


 「うん。私ってよく夜風にあたりたいから外に出るんだけど、その時夜風にあたりすぎて眠くなる時があるの。それでどこでも寝れる体質だからベンチで寝るんだけど、唯一六辻くんだけがそんな私に風邪を気にしてタオルをかけてくれた人なんだよ。だからその優しさに惹かれて興味を持った」


 それを聞いて、人の体質は面白いと思うと同時に、違和感を感じた。そのコンビニを頻繁に利用する遥だからこそ感じる違和感。


 「ホントに俺だけ?」


 確かに人通りが少なく、寮から最寄りのコンビニにしては利用客は少ない場所だ。しかし、幽玄高校の生徒は少なくともこの3ヶ月弱幾人も利用して通っているだろう。


 よく夜風にあたりたくなるというくらいなら、1人くらい善人が居て、朱宮を気にしてタオルでなくとも何かしら理由を持って接近したのではないかと思ったのだ。


 その問いにどう思い感じたか、朱宮は言う。


 「うん。私、特待生ってことで有名人だけど、そんなに人は私に寄らないよ。それに、人って思ってるより惰弱で怯懦な性格してるから、寝ていて起こすことも悪いかなって罪悪感を感じる人は少なくないんだよ。だからホントに皆無だったよ」


 「そっか」


 自分の才能を鼻にかけているわけではないようだ。先程香月の発言にもあったように、謙遜をしているようにも思えない。自分の顔が端正で可愛らしいことも、やはり鼻にかけない。その言い方に本当だと思うことは必然だった。


 「それなら良いんだけど、今後は気をつけて。誰だろうと1人でベンチに寝るのは危ないから、友達誘ってコンビニ行くとか、寝ないよう短時間にするとか考えた方が良いよ」


 そこに女子だから、夜だからなどの区別はなかった。幽玄高校だけでなく、人の心理は完全に解明は不可能で、誰がどういう()()にあるか推察可能なだけで、決して一概にどう動くか完璧に確定することは不可能だ。


 善人と謳われ、人望も厚い人が突然狂って人を傷つけることもある。咄嗟に不安が重圧となって、ストレスが限界に達して精神が蝕まれて遂には犯罪を惹起とすることもある。


 だから統一して、夜に1人でベンチに寝るのは危険だと注意する。知り合いが傷つくことを、絶対に許さないからこその願いでもある。


 「うん。私も迷惑かけたなって思ったから、次からはしっかり気をつけます。大雨だったし、ホントすみません」


 「うん」


 今更でもペコッと頭を下げて謝罪されると、しっかり者なんだということは伝わる。悪気があってしたことでもなければ、自分の好きなように過ごした結果のことなので、遥も注意以上のことを言うこともすることもない。


 「六辻くんはその時濡れたりしなかった?風邪とか大丈夫?」


 「元々朱宮さんを見る前に大雨で全身は濡れてたから分からない。風邪は引かなかったよ。大丈夫。朱宮さんから迷惑は受けてないよ」


 「いやいや、時間を貰ったんだし、タオルとか無駄に買わせたし、いつかお礼をしないと」


 「なら、朱宮さんらしく健康で、楽しいことを好きなだけやって笑い続けてくれたら良いかな。それがお礼ということで」


 欲しいものは何もない。自分の善意とはいえ、自分がしたことを当然と思っていた遥は、見返りを求めてはいない。だからお礼を受け取る気はなかった。


 するとその遥の言葉に驚きの反応を見せる朱宮。一瞬固まってその場に留まる。何かと思えば、その瞬間に口は動く。


 「……そう?」


 「うん」


 「六辻くんがそう言うなら、私はそうするよ」


 思ったより軽いお礼だったことに驚いたのだろう。遥が頷くと既に動き出して、気分が良くなったかのように笑顔になって隣に並んだ。


 (不思議な人だな)


 初めて見るタイプだ。落ち込んだように負の感情を覗かせると、一秒後には誰かに対して笑みを零す。驚いた一秒後には機嫌良く鼻歌を歌う。喜怒哀楽の切り替わりが人とは思えないくらいに早い。これがコミュニケーションの王なのか。


 「あっ、そろそろ1つ目の宝の場所に着くよ」


 遥の考えなんて見ず知らず、スマホを確認しながら歩く朱宮は言った。


 宝探しのルールとして、常に人工林のマップがスマホに表示され、更にそこに半径2mの黒丸が表示される。その円の中に宝があって、その写真を撮れば得点が加算される仕組みだ。


 風早の説明でもあったように、埋められていたり木の上にあったりするので、視点移動は常に繰り返される。早速それに遥と朱宮は出くわしていた。


 「えぇっと、ここっぽいね」


 「だね」


 到着したのは人工林とはいえ木が植えられた気配すらない更地。だった半径2m程度、見渡すだけでどこにあるか分かるくらいだ。


 「うん。でも確かにここなんだけど、ないように見えるよね」


 しかし残念ながら早速手を汚すことになるのは確定だった。木はないから上はない。置かれてもいないのなら、それは埋められていること確定だ。


 「これは……今日の洗濯大変になる予定かな……」


 「それも人工林の中で楽しむ醍醐味ってやつと思えば、今日くらいは苦労しても良いんじゃない?明日は休みだし」


 折角見つけたポイントを、見逃すこともしたくないから。

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