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二人きり




 「ゴールはどうする?」


 「聞いてなかったの?風野くん。最後は時間を確認して、各々A――一組二組が集合した最初の位置に集合するって一組の先生が言ってたよ」


 「そうだったか?悪いな。なら、休憩の時間に集合する場所くらい決めないか?流石に最後まで2人だけで探すってのも良くないだろうからな」


 これは二週間のノーペナルティを得ることが、誰にとっても最優先事項なのだろう。朱宮、風野、香月と既に二組で仲の良い人同士が組み、遥、星中、紫雲の曖昧だが悪くはない仲を保つ人同士が組む。だから、分かれて探すことに然程不満は誰も漏らさない。


 しかし、それでも疑問はあるらしく、風野の提案に香月は問う。


 「もし離れすぎて、昼食会場が別になったら?GPSはないんだよ?」


 「その時はその時だ。確かに一組の面々と仲良くしたいのは当然だが、もし学校が決めた相性の良い相手がこの中にいたとしても、後に関わることは必ずある。だから運が悪かったと思うしかないな」


 「なるほどね。まぁ、私はなんだっていいけど」


 時間は指定されていないが、昼食をとる場所は指定されている。等間隔に12ヶ所あり、それぞれに弁当が置いてあるらしい。時間を確保することも自己判断だ。


 「一応交流の場ってことだけど、それが本懐だとしたら誰もが一位を狙いにいく報酬を用意はしないだろうしな。それに、一組二組をそれぞれ1人入れた組み合わせになることも、学校側は先読みしてるだろうし」


 星中のその意見は、聞く5人を納得させ、同時に共感させることとなった。


 「んじゃ、これが俺たちの会う最後になる可能性もあるのか?」


 「そういうことにもなる。お前の顔は常日頃から見てるし、俺からしたらどうでもいいけどな」


 「良いよな、香月ちゃんと組めるお前は」


 「そうかもな」


 これが本来の星中と紫雲の仲なのだろう。冗談交えた駄弁は慣れを感じる。


 そんな時、ようやく最終Mグループが到着し、準備を整えたようで、カウントダウンが10から始まった。数字を小さくして、可視化された時間をただ見つめる。そして――。


 「あーあ、始まったな。ゴリラ、頑張るぞ」


 ――紫雲の嫌々の言葉を最初に、宝探しが始まった。


 「それ以上ゴリラって言うなら、お前は活躍しなかったと朱宮に報告するからな」


 「悪かった」


 「謝罪慣れしてるじゃん。さっ、もうペアで行動していいんだよね?」


 「うん。それぞれいってらっしゃーい」


 「行こうか、星中くん」


 「そうだな」


 先に動き出したのは星中と香月ペア。実はこのKの定位置に来る間、最も会話を交わして仲を深めたと思われるペアだ。初対面にしては距離感が近く、元々パーソナルスペースの狭い星中でも常に笑い合う様子は、以前の印象と大きく変化があった。


 そんな、遥から見ても良好な関係を築いている2人は、揃って西へ歩き始めた。


 「仲良さげだねぇ。私たちもあれだけ雰囲気から察せる仲良しになれたら良いんだけど」


 遥の目を覗き込み、下から上へ、所謂上目遣いというやつをする。ここに来るまで幾度となく経験をしたから慣れた、いや、そもそも慣れるも何も揺らぐ感情はないから、遥にとって美少女の上目遣いなんて、目が大きくなるだけの行為と変わりない。だからその思いも、然程叶えたい願いのようには聞こえなかった。


 「そう?」


 「六辻くんは嫌なの?」


 「全然嫌じゃないよ。ただ、雰囲気から察せる仲良しっていうのが中々理解できなかっただけ」


 鈍感は感じられないのだ。傍から見れば、仲睦まじくてお似合いの雰囲気なんて簡単に見分けられるのだろう。しかし、引きこもりの時間が長すぎた遥は、他人を観察してこなかったことが影響して雰囲気を詳しく見分けられなかった。


 「そういうことか。星中くんに関して知ってることは何もないから、その面では当然何も語れない。だけど凛ちゃんのことは知ってるから、凛ちゃんがあれだけ乗り気で楽しそうに話しをしているとこを見ると、自然と分かっちゃうんだよね」


 「そういうものなのか……」


 「いつか六辻くんも分かる時がくるよ。六辻くんのこと何も知らないから、絶対とは言えないけど」


 普段陽気な一瀬が陰気を纏ったらきっと分かる。何を言われても弱々しくならない桜羽が悲しく俯いていたらきっと分かる。多分そういうことを言っているんだろう。


 それなら、自分に分かる時はくる。遥はそう信じた。


 「よしっ!風野くんと紫雲くんはそっちお願い。私たちはこっち行くから」


 「任せろ」


 「朱宮ちゃん、気をつけてね」


 「紫雲くんも」


 風野紫雲ペアに東を任せる。そして遥と朱宮は北だ。最も奥へと進む道。けもの道のように細くて不確かな道が大半を占めるので、常に足元には注意して進むことが必須だ。


 「行こうか、六辻くん」


 「うん」


 そうして、ようやくスタートとなったKグループ。どこのグループも今頃スタートした頃で、今から大きく差が開くことはない。もし、6人別々に探し出すグループが居たなら、その時は高確率で敗北となるが。


 「さてと、やっと2人きりになれたね」


 「それがどうかした?」


 「ううん。特に意味はないけど、この前から興味があった六辻くんと2人だけで話せるのは楽しみだと思っただけ。特待生ってことも初めて知ったし、積もる話はたくさんありそう。まぁ、どれも他愛ない話だろうけどね」


 何を求めていて、どう応えれば良いのか分からないが、今のところ朱宮に流されていれば問題は起こりそうになかった。

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