拗らせてるなぁ。
え、こわいこわいこわい…。お気遣いなくという社交辞令を、とんでもない方向で受け取る人に初めて出会ったんですけど!!!
アホ王子は満足気に座ってくつろいでるし、サディスターは申し訳なさそうな顔しているし、お父様は慌てながら厨房に指示出しに行ってしまったし、リリアンは食堂の準備するって言って出ていくし…3人になっちゃったんだけど。どうするのよこの状況。
応接室のソファに腰掛けて、痛む額をさすりながら話しかけた。
「あの…殿下。」
「エイディだ。」
「はい?」
「エイディと呼んでいただろ。」
くっそめんどいな。
「…エイディ様。」
「なんだ。」
愛称で呼ぶと、にやりとしてこちらを向く。自分は私のこと愛称で呼ばないのに。私の愛称はデビィかデビルだから呼ばなくてもいいんだけどね。この世界の言語が英語じゃなくて良かった。
この人はあれだわ。私には興味がないけれど、自分に擦り寄ってくるのを見てるのは好きなタイプだわ。拗らせてるなぁ。
今までの数々のパーティーで私以外の令嬢と見せつける様に戯れていたのも、私が悔しがっている姿を見て悦に浸るためとは薄々気がついていた。それでも嫌われているのは確かだったけど。自分に夢中だったはずの女が離れるのは面白くないってか。……だる。
「ここに連れてきた従者達の食事も遅くなってしまいますよ…。やはりお戻りになられた方がよろしいかと…。」
王子の後ろで、サディスターが激しく首を上下に振っている。本来なら貴方がこの人に物申さなければいけないのですけどね!!何の為について来てるのよ…。サディストな性格を見せるのはヒロインにだけですかー?
「それなら、使用人の分も軽く用意してくれればい。」
「お待ちください。そんな急に…。」
「ヴィランズ家なら出来るだろう。俺の婚約者の家柄だぞ。」
「そうおっしゃられても…。」
こっちの準備する人達の苦労も考えて貰えますかね!?!?この人本当に次期国王なの?大丈夫??
王子は、サディスターに目配せする。サディスターは半ば諦めた様な表情をして、部屋から出ていった。…これは、王家の使用人達の食事の手配をしに行ったな…。何人分よ…。
「それにしても、デビルナが他人を気にかけるとはな。」
「使用人達のことを考えるのは上に立つ者として当然でしょう。」
「……。」
鳩が豆鉄砲を食ったような表情で見つめられる。
確かに以前のデビルナだったら、自分本位の自己中娘だったからこの発言はあり得ないものだものね。でも、よく考えたら貴方も大分ヤバいですけどね。
「…私は誕生日を迎えて心を入れ替えたのです。」
「床に頭を打ち付けた時に人格に影響が出たのか?」
「違います。」
「違うのか。」
本当話しきけよ!失礼だな!!!