行きたくない。会いたくない。
「おはようございます。デビルナ様。」
侍女のリリアンが部屋のドアを開けた。リリアンは私と歳が近いが、とてもしっかりしている。とりあえず、ベッドに潜り込む。
「早くお支度しませんと、遅れてしまいますよ。」
「いや。寝ていたいの。」
「嫌ではありません。今日はエイディオット殿下とのお約束の日ですよ。」
忘れてた!!!!!ここ3日、脳内が混乱してたから忘れてた!!!!!
ベッドから飛び起きたものの憂鬱すぎて頭を抱える。行きたくないし会いたくもない。バカ王子だからっていうのもあるけれど、前世の記憶が吹き飛んでいた私が好き好きアピールしてたことが恥ずかしくて無理。
しかも、もう完全に鬱陶しいやつ思われてるし…。
「今日はコンディションが悪いって伝えておいて。」
再びベッドに潜り込むところをリリアンに阻止される。
「何をおっしゃいますか。さぁ、ベッドから降りてください。」
「いやぁ〜」
「大丈夫ですよ。デビルナ様は今日も素敵です。」
無理矢理ベッドから出されてしまった。リリアンは割と力が強い。
確かあのゲームのストーリーだと、バカ王子ことエイディオットの17歳の誕生日に開かれた晩餐会でヒロインと出会う。それはあと1ヶ月後に迫っている。いうて、ヒロインとバカ王子ぎ出会ったところで私は無傷なんですが。
「最近何かに悩んでおられますか?」
侍女達にされるがままに外出準備をしていると、リリアンが心配そうに話しかけてきた。
「ううん、大丈夫よ。変な夢を連日見てるだけ。」
「そうですか…。今度リラックスできるアロマオイルを用意しますね…。」
「ありがとう。」
鏡の前で最終チェックをする。悪役令嬢といえど、とても美人だ。スタイルの良さはヒロインよりも断然上だ。胸なんて前世の私の5倍はあるんじゃないか…。胸を触っていると、鏡越しにリリアンと目があった。可愛いリリアン…。そんな目で見ないで…。