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バカな王子が嫌すぎる。  作者: 道野草花
10/10

世話をよろしく!!

 豪華なドレスに豪華なアクセサリーを見に纏って今夜も王城で開かられる晩餐会に参加する。前世の記憶が戻ってからは初めての晩餐会だ。行く気は起きなかったが、お父様とリリアンに美味しい食事があると言われて渋々の参加。そんなわけで、晩餐会の開始時刻に遅れてしまった。

 到着してお父様と共に大広間に入ると、大勢の人が集まっている。人酔いしそうだ。お父様は交流のある人と共に談笑をしている。私はそっとその場を離れて、飲み物を手にすると壁の花になることを決めた。

 

「デビルナ様はいかがなさったのかしら…。」

「具合が悪いのかしら…。」


 いつも私を取り巻いているトリリーノ令嬢とマキレナ令嬢が囁き合っている。どちらも侯爵家の家柄で、ここではかなり上の立場にいる。私たちはいつも3人で気に食わない令嬢に突っかかったり、王子がちょっかい出す令嬢を牽制したり、それはもうやりたい放題だった。


 2人と目が合うと、こちらはやってきてご機嫌とりの言葉をかけられる。一生懸命のヨイショが聞いていて辛い…。適当に相槌を打っていると、アホ王子が他の令嬢と楽しそうにダンスをしているのが見えた。可愛らしい令嬢に鼻の下伸ばしちゃって。


「今一緒に踊っているのはコビッタ伯爵令嬢ですわ。うっとりした目で殿下を見つめていて嫌なこと!」

「本当よ、エイディオット殿下の婚約者様はデビルナ様ですのに。デビルナ様の方が何千倍も美しいですからね!」

「そんなことより、あのケーキが美味しそうだわ。」

「え!?デビルナ様!?」

「お待ちになって!」


 私は2人をよそに、ケーキを取りに行く。立食の素晴らしいところは好きなものを好きなだけ食べられるところだ。どれも美味しそうで迷っちゃうわ〜。何食べようかなぁ…。


「ほら、お2人もこのケーキいただきましょうよ。とても美味しいわよ。」


 2人の分も皿にケーキを取って手渡す。デビルナが人の分を用意するなんて初めてのことだからか、2人は目を丸くする。私は、自分の分も皿に盛ると、ケーキを口の中に掻っ込んだ。美味い!美味すぎる!!





「おい、デビルナ。」


 美味しく食べているところに聞きたくも無い人の声が私を呼ぶ。振り返ると王子がコビッタの肩を抱きながら、こちらへ近づいてきた。私を見るとコビッタはとても気まずそうな顔をして俯いた。


「エイディ様。ごきげんよう。」

「今日は来るのが遅かったな。」

「気分がすぐれなくて。」

「…そうか?」


 大量に皿に盛られたケーキを見てアホ王子が疑うように言う。


「今はすっかり良くなりましたの。私のことはお構いなく、どうぞダンスをお楽しみになって?」


 私はコビッタ令嬢と王子に笑いかける。コビッタは今すぐにでもこの場から逃げ出したいという顔をしている。私、睨んだつもりも嫌味を言ったつもりもないのだけれど…。


「お前と違って愛らしい雰囲気があるだろう、コビッタは。」

「ええ。本当にそうですわね。」

「コビッタは俺を立ててくれる素晴らしい令嬢だ。」

「ええ。本当にそうですわね。」

「コビッタは…。おい、さっきから聞いているのか?」

「はい。赤の絵の具に黄色を混ぜると橙色になるってお話でしたよね?」


 適当に返事をしていたら王子のこめかみに青筋が立った。コビッタもトリリーノもマキレナも、あわあわしている。


「お前というやつはっ…んぐ。」


 アホ王子が口を開いた瞬間、その口にケーキを突っ込んでやった。アホ王子は甘いものが苦手であるのを私は知っている。


「とっても美味しいですわよね?まぁ、エイディ様ったら…お口周りが汚れていますわ。」


 私はわざとらしくアホ王子の口元をハンカチで拭く。


「デビルナ様も殿下もとても仲睦まじいですわ〜。」

「本当、絵に描いたようなお美しさのお二人で羨ましい〜。」

「俺は美しいか。」

「はい。とても!殿下とデビルナ様のような方はいらっしゃいません。」

「王国の宝ですわ。」

「そうかそうか!」


 トリリーノもマキレナのヨイショ大会が始まった。その言葉を真に受けて、アホ王子は満更でも無い表情を浮かべる。その隙に気まずさから解放されたいコビッタは忍びのように音を立てずに居なくなってしまった。


「デビルナは良い友人を持っているな。よし、二人とも順番にダンスの相手をしてやろう。」

「え、そんな、畏れ多いですわ…。」

「ハハッ面白いことを言うな。ここには幽霊などの恐ろしいものはいないぞ。」

「いえ、そう言う意味ではなく…。」


 アホ王子は二人の手を引いて行ってしまった。私は困惑する二人を手を振って見送った。静かになって万々歳。ありがとう!二人とも!!アホ王子の世話をよろしく!!!!



 



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