私が悪役令嬢…
連載中のもう一作が至って真面目な話なので…アホみたいな話を作りたかったのです。
軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。
「なんで、よりによって…。わたしが…。」
自分の最期はアホすぎて消したいくらいなのに、残念なことに鮮明に思い出してしまった。
友達の家へ行く途中の横断歩道を渡ろうとした時だ。横断歩道の真ん中で動けなくなっている猫がいた。そして、猫めがけてものすごい勢いで赤信号を無視したトラックが突っ込んできたのだ。
こんな漫画みたいなことあるー!?と思って、咄嗟に猫を抱きかかえたものの、トラックに跳ね飛ばされたのだ。
だが、わたしは猫を抱きかかえた時に気付いてしまった…。
…それがぬいぐるみだと言う事に。。。
ぬいぐるみ庇って死ぬとか、もう意味がわからないし人生無駄にした感じが悔しい。
でも、何より悔しいのは…
向こうの世界で最後にプレイをしたクソゲーオブクソゲー【ときめき⭐︎私の王子様】に転生してしまったことである。
先日、16歳の誕生日のサプライズで、こちらの父母が、庭先にて本気で祝砲をぶちかました。予告なしで鳴り響いた大砲の爆音は私の軟弱な心臓をひっくり返した。
目を回して私は倒れたわけであるが、そこでぬいぐるみを庇って死ぬと言う過去を思い出してしまったのだ。
その【ときめき⭐︎私の王子様】ゲームの話をしよう。
キャラデザ、スチル、声優全てが完璧だったが、システムとシナリオがゴミだった。
最初から攻略対象を選択して、ただ好感度をあげていく。用意されているエンドは2種類で、超絶ハッピーエンドか、とりあえずヒロインが死ぬだけのバッドエンドしかない。
それだけでも割とゴミだというのに、攻略対象ごとにシナリオライターが違っていて、特に王太子は酷かった。
台詞は誤字が目立つし、慣用句の誤用もたくさんあった。新手のバグかと思ったが、ストーリー自体は真面目に進んでいたので、シナリオライターがバグ起こしていただけのようだ。
王太子ルートには一応、婚約者のかませ悪役令嬢がいる。その悪役令嬢は、ただ普通に婚約破棄を言い渡されてお終い。特に断罪も何もない。
私は全てを思い出した時に、自分が悪役令嬢”デビルナ・ヴィランズ”であったことには、めちゃくちゃ喜んだ。
名前に悪意がありすぎるが、そこ別にもう気にしない。
ただ、デビルナの記憶の王太子は確かに馬鹿だったが、デビルはもう王太子の事が好きだ好きで好きすぎたから、馬鹿だと言う事に気付いていなかった様子。ありえん。
けれど、私がデビルナ・ヴィランズであるということは…
どう転んでも婚約破棄される!!!
それを希望に生きていこう。
でも…。
「なんで、よりによって…。わたしが…。クソゲー界に転生してしまったの…。」
乙女ゲーソムリエと言われるほど数々のゲームをプレイしてきたのに…。
よりによってこのクソゲー界に転生しなくてもええやん…。
ちなみに現実を受け止められなくなってから、3日目の朝を迎えている。