プロローグ ここは二人にとって、きっと世界で最も幸せな場所だった。
初投稿です。
人生とは一本の道だ。
行く事は出来ても帰ることは出来ない、一人だけの道。
一人につき一本だけの、取り返しがつかない道だからこそ、あれほどまでに人は美しく輝くのだろう。
彼は確かに、その生を終える間際、最も美しく輝いたのだ。
僕も彼の様に、生きたい。
遠くから風に運ばれて小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
その風は広くなだらかな草原を駆け抜け、一本だけぽつんと立つ木の陰に座る少女の銀の髪をふんわりと揺らし、少女が白いリボンが巻かれた麦わら帽子を軽く押さえる。白い花弁が優しく運ばれた。
心地の良い日差しが降り注ぐ、今は遠い日の昼下がり。
少年と少女は穏やかで、幸せな日々を暮らしていた。
少女が何か少年に話しかけ、それに少年が微笑みながら、少しバツが悪そうに答える。そんな、他愛もない日々。
少女が、少年が遠くを見ている隙に、ちょっとだけの勇気を振り絞り、無造作に放られた彼の手に自分の手を伸ばそうとして、引っ込める。
少年はそんな少女に気づかず、雲の形で何か面白いものでも見つけたのか、嬉しそうに指を指して、少女の方を向いた。
少年は何故か頬を膨らませている少女に首を傾げながら、何かをはしゃぎながら説明する。
一生懸命な少年に少女は毒気を抜かれ、プッと笑い始めた。
少年は笑われた理由が分からずに、馬鹿にされているとでも思ったのか、そっぽを向いた。
そんな少年を見て、少女は更に大きく笑い声を上げた。
それは遠い遠い、誰の記憶にも残っていない、少年と少女の日々。
今はもう手が届かない、刹那の日常。
ただの、過去の話。
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