第5話 ケイくんのお母さん
ケイくんは、寂しそうに、ポツリポツリと語り出した。
「ぼくの母は、有名なデザイナーなんです。何度もファッションショーを開いているような人です。マダム・Fと聞けば、わかりますか?」
わたしは、
「うん。」
と答える。
マダム・Fは、わたしの母も好きなブランドで、いろんな年代の人でも着られるような素敵な服がたくさんあるのだ。
そこのファッションデザイナーなんて、女性の憧れだ。
「ぼくが目を悪くしたのは最近です。AAだった視力は、だんだん下がって行きました。この間ここにくるまでは、色々な病院を転々として治療して来ましたが、術後経過は思わしくありませんでした。」
………わたしと、一緒?
「ぼくは高校を辞めて、しばらく家で過ごしていました。」
高校中退………それもわたしと一緒。
わたしの場合、中学までは義務教育なので音声や点字などの、触覚や聴覚を使った授業で教育を受けていたけど、高校になるとそれもできなくなってしまった。
高校になると難しい授業が増える。
よってわたしは、高校を中退しなければならなくなった。
「その間、母は仕事を休んでぼくの世話をしてくれました。でも、日々何も見えなくなっていくぼくを見ていて、母は気を患ってしまったのです。」
ずず、と鼻をすする音がする。
泣いてるの?ケイくん。
「母が飲む錠剤の量が毎日増えているのには気づいていました。だから、母の在宅診療に来ていた精神科の先生に、ぼくがどこか別の病院に入院できないか相談したんです。入院したら、母の負担が少しは減って、うつ病が治るかもしれないと思ったんです。」
そしてケイくんは息をついて、ふふ、と笑った。
「どうですか?つまらない話ですよね。」
「………ううん。」
沈黙を作れば、肯定になる。
それだけは避けたかった。
だってケイくんが、そんな深い家庭事情までわたしに言ってくれるなんて、わたしのことを信用してくれてるってことな気がした。
それを裏切るような真似はしたくないんだ。
「ねぇケイくん、わたしの話も聞いてくれる?」
わたしはケイくんにそう持ちかけた。
読んでくださってありがとうございます!!
ケイくんにも複雑な家庭事情があるようで………
次はあんなちゃんの話。
そしてそれぞれの過去を知った二人はどうなって行くのか………
それでは、次のお話でお会いしましょう!




