第2話 フユゾノケイという人
目を開く。
何も見えない。
それを何度も何度も繰り返して、もう何年経ったかカレンダーすら見られない。
ゆっくりと体を起こすと、ベッドに座った。
近くの手すりをつかんでゆっくりと立ち上がると、
「あんなちゃん!?どうしたのっ!?何かあった!?」
なぜか変な時間にやってきた看護師さんが、わたしを呼び止めた。
どうして、看護師さんがここにいるの?
だって、ご飯はさっき食べたもん。
確かサバの味噌煮があったはずだわ、覚えてるわ。
いくら昼寝をしたと言ったって、もう昼ごはんの時間なわけがないわ。
「なんでもないです、大丈夫です。」
わたしはそう言ってベッドに座り直した。
おばあちゃんのようにゆっくり時間をかけて、ベッドがちゃんとそこに存在しているのを確かめながら、そろそろと座る。
それから、本来なら扉があるはずのところに顔を向けて、
「どうしたんですか?」
と聞いた。
「ふふふ。あんなちゃんにいいお知らせよ。」
と、わざと作っているような声じゃないような、本当に楽しそうな声で看護師さんが言った。
「どうしたんですか?」
わたしはもう一度繰り返す。
「同じ部屋に、男の子が入るのよ。」
「え?」
「ほら、この子があんなちゃん。挨拶してあげて。」
看護師さんは誰かに向かって言った。
パタ…パタ…と、スリッパを引きずるような足音がして、だれかが今までわたし一人だった病室に入ってきたみたいだ。
「こんにちは、あんな、さん。」
耳に心地いい、男の子の声がした。
今までずっと、母さんと看護師さんの声しか聞いてきてなくて、男の子の声を聞くなんて久しぶりだった。
「ぼくは、フユゾノケイです。これから、よろしくお願いします。」
「よろしくお願い、します。」
わたしはいつも人と話す時と違って、目をしっかりと開いて言った。
そのちょっとの変化は、これからの大きな変化の序章にすぎなかった。
読んでくださってありがとうございます!
長さを調節するのが大変ですが、恋愛ものなので二、三話では終わらせられないのでね。
さて、今までひとりきりだった病室に、フユゾノケイという男の子が入って来ました。
あんなはどうなっていくのでしょう。
これからも読んでいただけると嬉しいです。
それでは、次の話でお会いしましょう!!




