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この瞳にもう一度光を  作者: 夜闇
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第1話  意味のない手術と見えない目

 「あんな、見える?」

母がそう言って、目の前で何かを行った。


残念ながら、何もわからない。


「………」

無言で首を振ると、母は黙り込んだ。


 どんな顔をしているのだろう。

失望か、落胆か、手術をしてももう無理だと言う諦めか。


 「大丈夫よ、あんな。安心して、大丈夫よ、大丈夫よ。」

呪いのように何度も『大丈夫』を連呼する母は、声が上ずっていた。


 泣いているのか?

わたしは首をかしげるも、母の顔を見ることはできない。


 手探りで母を探して、その手を握る。

母がはっと息を飲んだ。


「ごめんなさい、ごめんなさいね、ごめんなさい………」

打って変わって、何度も謝る。


何度も、何度も。


 わたしはいたたまれなくなって、目を伏せた。


枕に頭を置いて、唇をかむ。
















 





 わたしはゆっくりと目を開けた。

もちろん視界には何も映らないが、色々見回して見る。


少し明るいとか暗いくらいならわからなくもないけど、それ以外はほとんどさっぱりだ。


 ほんの少しだけ音を立てて、スムーズにスライドドアが開いた。


「あんなちゃーん、起きてる?」

と言う、女の人の声がした。


 多分、看護師さんだろうと考えながら、

「はい。」

と返事をした。

声がする方に顔を向けると、看護師さんらしき人がこちらに歩いてきたのか、スリッパの音がした。


「朝ごはんを持ってきたわよ。」

「ありがとうございます。」

ベッドの上についているテーブルの上におかれる音がして、わたしは看護師さんがいると思える場所に向かって頭を下げた。


「あら、いいのよ。いつもいつも。」

看護師さんの照れたような声がする。


 でも、わたしからしたらそうはいかない。


なぜなら………


 「はい、アーン。」

「あー。」

わたしは目が見えないので、箸もつかめなければ、どこに何が置いてあるかもわからない。


そのため、いつも看護師さんに口に運んでもらわないと、食べることができないのだ。


 毎度毎度そんなことをしてもらうのがいたたまれなくて、わたしは食事なんて取らなくて栄養分だけでいいと思っている。


 いや、もう栄養分も何も摂らずに死んでしまえばいいのだ。


 目を開けても閉じても変わらない世界に飽き飽きして、わたしは目をつぶって食事を食む。



 「はい、これで最後ぉ〜。あ〜ん。」

看護師さんがそう言って、わたしは口を開けた。


最後のひと匙をゆっくりと食べる。


そして、ごくんと飲み込んだ。


 「それじゃあわたしは、これを片付けてくるから。」

看護師さんは明るい声でそう言って、どこかへ行ってしまった。


 わたしはため息をついて、天を仰いだ。


前髪が目にかかっている。


目を閉じて、ため息をつく。



 ごめんなさい、か。


母の口癖を頭の中で繰り返してみる。


それを言うのは、わたしじゃなくちゃ。


母は、それを言う必要がないのに。


それを言う理由がないのに。



 「ごめんなさい。」

わたしはそう呟いて、ベッドに寝転がった。

 読んでくださってありがとうございます!!


 アニメイト耳聴き1には、複数作品を投稿してもいいらしいので、これも、と思いまして。


ま、前回の『昼中の怪盗』と同じく、『人が読むと魅力が増す作品』の意味はさっぱりですけどね。


 けど、この作品の主人公は盲目です。

あんなは言葉でしか人と意思疎通を測れませんから、人に読んでもらえると言うことは………ってな感じで。


 それではこれからも、『この瞳にもう一度光を』をよろしくお願いします!!

(連載期間は短いでしょうけど。)


 というわけで、次のお話でお会いしましょうっ。

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