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11 世界中で「タローを探せ」のゲームが流行ってるんだって

 会社でホソカワに呼び止められる。

 「フルタ、おまえ、ネットで随分有名になっているみたいだな」

 「えっ、なんのことだよ。おれがネットで有名だって。おれユーチューブもフェィスブックもインスタグラムもしてないよ」

 「だけど、おまえ世界の観光地に出没しているそうじゃないか」

 「おまえも知ってるだろうけど、おれ毎日仕事に出て、夜は寝るだけだぜ。休日だって部屋でゲームするくらいだし。おれが出不精なのは知っているだろう。ましてや海外なんて。パスポートを持っていないんだから、行けるわけないだろう」

 「そうだよな。おれもお客さんから聞いて、おまえが世界旅行しているなんて、信じられなかったよ。でも、この映像を見てみろ。このニューヨークの地下鉄に写っているのおまえだろう」

 「おっ、おれじゃないか。でも、おれニューヨーク行ったことないからさ」

 「それにカナダ側のナイアガラの滝、ここでもおまえが写っているんだよ。ほら」

 「うん、そっくりだな。ナイアガラの滝なんか見たこともないよ。華厳の滝なら中学生の時に行ったことがあるけどな」

 「アフリカのセレンゲティ国立公園のツアーでキリンを見ているのおまえじゃないか」

 「おれみたいだな」

 「ガラパゴス島のツアーやノルウェーのオーロラツアーにもおまえが小さく写っているんだぜ。おまえが世界中に出没しているからネットの世界では大評判なんだって。まるで一昔前の「ウォーリーを探せ」のようになっていて、世界中のマニアの間でゲーム化しているらしいぜ。ほら、ローマのスペイン広場の群衆をズームしていくと、おまえが現れるだろう」

 「こんなに小さいところからおれを、いやおれに似た奴を探すのか。これは「ウォーリーを探せ」のインターネット版みたいなゲームだな」

 「だから楽しいんだろうな」

 「おれの名前はばれているのか」

 「いや、ばれてはいないようだ。世界中でこの男はタローと呼ばれているそうだからな」

 「そう言えば、最近、歩いていたらスマホを向けられることがちょくちょくあるな。それかな?」

 「うん、そうかもしれないぞ。そろそろマスコミでも取り上げるんじゃないかな。いきなり海外のメディアがインタビューしに来るかも知れないぞ。覚悟しておけよ」

 「おう、ありがとう」

 「だけど、これがおまえじゃないとすると、いったいこいつは何者なんだ」

 「そうなんだ。おまえも知っているだろう。おれが強盗に間違われるきっかけになった防犯カメラの映像。あれ以降、おれと似た奴が、いろいろなところに出没しているらしいんだ。とんでもなく活動的な奴なんだ。こうしてワールドワイドに動き回っているんだからな。どこかで事件に巻き込まれなければいいんだけど」

 「そいつ、何か事件を起こしたのか」

 「事件は起こしていないな。大間は・・・」

「大間で何かあったのか」

「いや、別に何でもない」

 「もしかして、インターネットに写っているタローと呼ばれている奴も、おまえと同じように犯人に間違われて迷惑しているんじゃないのか」

 「ああ、そうかもしれないな。おれと同じように被害者かもしれないな」

 「だけど、世界中に登場しているんだろう。世界を旅行するなんて、大金持ちじゃないとできないぞ。そいつもおまえと同じ年頃なんだろう。それで世界中を飛び回れるなんて。旅行社に勤める人間か、それともパイロットなのかな。おお、そうだ。忘れてた。ポルノ男優だったな。あれも趣味か」

 「そうだな。趣味でアダルトビデオに出演したり、旅行しているとしたら相当な資産家だ。親から遺産でももらったのかな。うらやましい限りだな」

 「でも、この「タローを探せ」をしているゲイマーたちの間から不思議な声が上がっているんだ」

 「なんだよ。おれにとっては「タローを探せ」だけで十分に不思議だけどな」

 「タローは一人じゃなく、何人もいるんじゃないかってことだ」

 「えっ、そうなのか。体形が違うのか」

 「いや、そうじゃなくて、リオデジャネイロとオスロに同時刻に登場していることがわかったんだ。それどころじゃなく、北京とカイロ、ハワイの三か所に同時に出現したこともあるらしいぜ」

 「それは時差が違うからじゃないか」

 「いや、日本時間の同じ時刻に登場しているそうなんだ。ありえないだろう」

 「そりゃあ、ありえないでしょう。たまたま似ている人間じゃないの。それで騒ぎまくっているんじゃないの。これは話が膨らみ過ぎているんじゃないのか。きっとオタクの集団幻想だよ。まあ、おれに迷惑さえかけずにみんなで楽しんでくれれば、おれは別に文句はないけどね」

 「だけど、気をつけなよ。何が起こるかわからないからな」


                 つづく

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