愛に限りなく近い優しさ
あなたは、道を進むことが苦手らしい。
知らない道に入ると、必ず場所を見失ってしまうらしい。
地図を見ても、予習を入念にしても、ひとりで目的地にたどり着いたことは、一度もなかった。
ずっと、あなたのことが心配でたまらなかった。
心配で心配で、僕には彼女がいるのに、気が付けば後ろを付いていっていた。
愛は、あなたではなく、彼女に注いでいる。
でも、年上の彼女より、年下のあなたのことを考えている時間の方が長くなっていた。
「あれっ、松田さん?」
「おう」
「こんにちは。ちょうど良かった。昨日話していた面接会場が、どうしても分からなくて」
「一緒に行ってあげようか?」
「いいんですか?ありがとうございます」
これは愛ではない。
ただの優しさだ。