森にて
そこは四方を海に囲まれた大陸
大陸の中央には巨大な火山帯が存在し、大陸を東西に分け隔てている
東は四季折々の特徴が顕著に現れたそれぞれの領土に、支配権を持つ5つの国家が君臨している人間の地【テラ】
西は太陽の光を完全に遮る程の漆黒の瘴気によって、魔のモノ達によって支配されている謎に満ちた不浄の地【アビス】
これはその大陸で生きる、とあるアウトサイダー達の物語…
「マズイ…。か、金が…金がもう底をついてしまう……」
夜空に美しい星々と月が煌めくテラの地。現地の村人でも近づくことすらしない森の中、今にも消えそうな焚き火を前にして男がポツリと呟いた。その手には、数日前まで片手では持てないくらい膨らんでいたであろう財布が握られていた。
「何度財布の中を見直したところで、中身は戻ってこないぜ。いい加減お前も酒でも飲めや、エルゴ」
財布を握っているエルゴと呼ばれた男、その対面に座っているガタイの良い大柄な男が酒瓶を片手に大声で言った。
「酒だと?!もうすぐ素寒貧になるというのに、呑気に酒を飲めるか!大体こんな事になっているのも、君が酒を大量に買ってきたからなんだぞギリガン!」
エルゴはそう叫ぶと、酒瓶を持ったギリガンをものすごい剣幕で睨み付けた。眼鏡の奥に見える瞳からは殺気すら感じる程である。しかし、そんなエルゴの事など気にも留めないギリガンは、何本目かも分からない酒瓶を飲み干しながら、
「おいおい、まるで俺の酒代だけで報酬金を使い果たしたみたいな言い方だなぁ?仕事の後に古物商へ行って、あれこれ漁ってた奴の言うセリフとは思えんなぁ?」
「うぐっ…。あ、あれは必要経費だ!私のような学者はその土地の文化や歴史、そして大地そのものに宿るエネルギー等を分析して有効活用するのが仕事なのだ。君のように娯楽や酒に金を注ぎ込むのとは違うのだよ!」
エルゴの先程まで殺気立っていた瞳は明らかに動揺しており、気づけば言い訳を並べる子供のような態度を取っているのは誰の目にも明らかであった。
「また下らないことで言い争っているのか、2人とも。たまには落ち着いて食事したいんだが…」
そんな2人に挟まれ、少し不機嫌そうに肉の串焼きを頬張る男がそう呟いた。エルゴは助け船を欲するかの如く男に近付いた。
「アイン!君からもこの酔っぱらいになんとか言ってくれよ。酒ばっか飲んでないで、もっと有意義なことに金を使えと!」
「有意義なことに、か…。その日の夕飯すら済ませてないのに、あちこちの薬や書物を買いに行く事が有意義だとでも?」
アインの眉間に若干シワが寄っているのに気づいたエルゴは、自身が地雷を踏んでしまったことに気付き、動揺していた顔が更にみるみる青ざめていくのを感じた。
「俺は夕飯を買う金がないから、お前達が呆けてる間に1人で森に狩りをしに行ってたんだが!!……それについて、何か言うべきことがあるんじゃないか?」
少しドスの効いた、しかし妙に落ち着いた低い声でアインはそう呟いた。鋭い眼光をエルゴに向けて…。
「ゴ、ゴ、ゴ、ごめんなさい!アインさんごめんなさい!」
なんとも情けない声を出しながら、頭を下げる自称学者の姿がそこにはあった。助け船を求めたが、逆に木っ端微塵に沈没させられてしまったのであった。
「ギリガン!お前も酒は夜だけにしとけとあれほど…」
そこまで口して、アインはギリガンのほうを振り向いたが、
「ぐがぁ~ZZZZZ…、ぐがぁ~ZZZZZ…」
怒られることを察知していたのか、先程までまだ残っていた筈の酒を全て飲み干し、いびきをかいて熟睡している大男がそこにはいた。
「こ、こいつ……また寝てやがるだと?!何て危機察知能力だ…。もういい、怒る気も失せた。俺も寝る」
「じゃあ俺も…」
「お前は駄目だ。罰として見張りを朝までするんだ。」
そんなぁ~、と叫ぶエルゴを無視して寝込むアインであった。
どーもマゴッツです。
前からやってみようと思ってた小説の投稿をやってみました。
取り敢えず今回は主要キャラを簡単に紹介するだけの回にしてみましたが、それぞれのキャラの特徴がちゃんと出せたか不安です。他にもストーリーの案が一応あるので、このシリーズでやれないのは別シリーズや短編でやっていこうかと思います。
1人でも多くの人に「なんかこれ面白いな」「このキャラなんか好きだな」と思っていただけるようなストーリーが書ければと思います。