第二話「新世界の人々」
段々と街らしきものが見えてきた。
「着いたぞ、ジンヤの街だ。とりあえず中央役所に連れて行く」
「結構にぎやかい場所なんですね」
車などは見かけず、中世欧州のようなイメージの雰囲気といえばいいのだろうか。多くの人の流れがある。道の両側には商店が並び、食材らしきものを売っているようだ。少し土の匂いはするものの、変なにおいは無く、全体的に清潔な印象だ。
(中世欧州はもっと暗い感じかと思っていたけど、ここは明るいな)
「まあここは商店が立ち並ぶ中央通りだからな。細い路地には寂しい雰囲気のところもあるさ」
「ところでさっきから気になってるんですが、どうやら俺はこの世界の文字が読めないみたいです」
所々看板らしきものが出ているが、書かれている文字が全く読めない。男は前を向いて馬車を走らせたまま答える。
「異世界人は皆そうだ。それがお先真っ暗の理由の一つさ。出来る仕事も限られているからな。文字は勉強して覚えるしかない。まあ時間が経てば普通は覚えられるけどな」
「その異世界人なんですけど、普通の人間ばかりとのことでしたが、凶悪な奴とかはいなかったんですか?あなたが俺に全然警戒してないのが何か不思議で」
「普通の奴ばかりさ。凶悪な奴なんて見たことも聞いたこともないな。とりあえず異世界人がいたら中央役所へ連れてくるというのが俺らの認識さ」
すぐに周囲の建物に比べて立派な建物が近づいてきた。
「ここが中央役所だ。街道から一直線だから初見のお前でも場所を覚えただろ?」
「いや、他の場所を全く知らないから覚えるもなにもないです」
リョウマは冷静に突っ込みながら馬車を降ろされた。彼は降りようと思ったらちょっと高くて降りられなかったのをバーデラに担がれて降ろされたのである。リョウマはバーデラがこんなに大柄だとは思っていなかったのでちょっと驚いた。
「あ・・・すみません」
脇から手を入れられて降ろしてもらったのが妙に恥ずかしかった。
「よし、行くぞ」
バーデラはそう言うと役所の入り口の扉を開けた。
2人は中に入った。それほど人はなく、リョウマの想像よりも涼しい室内であった。バーデラは受付と思しき所にいるオバチャン目掛けて一直線に進み、リョウマは彼に遅れないように付いていった。
「こんにちは。今日はどんな御用で?」
受付カウンターにいたのは落ち着いた優しそうな雰囲気のオバチャンであった。オバチャンというのは顔や髪型が子供のいそうな感じだからである。
「こんにちは、今日は珍しいのを連れてきた。異世界人だ。そこの街道で拾ってきた」
そう言われたオバチャンはちょっと驚いたような顔をしてリョウマを見た。
「あら異世界人さん、久しぶりに来たわね。前回の人は何年前だったかしら・・・」
そう言いながらオバチャンはリョウマとバーデラにそれぞれ紙らしきものを渡した。
「バーデラさんはこっちに詳細を書いて。異世界人さんはこっちに後で一筆書いてもらうわ」
オバチャンはバーデラとリョウマの紙にそれぞれ順番に指をさしながらそう言った。
「あ、でも俺文字が分からないんです」
「大丈夫よ、教えてあげるから安心して。あなたが一番最初に覚えるテンドリアの文字になるわね」
リョウマには何のことやらさっぱりだったが、バーデラが言った内容で理解した。
「こっちにはお前の発見状況を書いた。今からこれをお前に読み聞かせながら内容の確認をする。内容に間違いが無かったら『間違いありません』とお前がそっちの紙に書く。書く文字はこの人が今書いてるものだ」
オバチャンが書き終えてリョウマに見せながら言った。
「これで『間違いありません』という意味よ。真似して書いてくれればいいわ」
リョウマとバーデラの2人は中央役所での手続きを終え、オバチャンにお礼を伝えて入ってきた扉の外に出て馬車に乗った。オバチャンが言うには住居は明日には決まっているらしいが、それまでは公共宿泊施設で1泊しないといけないらしい。詳細は明日とのこと。宿泊施設は中央役所から4軒隣ですぐに見えた。
「リョウマ、元気でやれよ」
リョウマが馬車から降りると、馬車に乗ったままのバーデラがそう言った。
「ありがとうございました」
リョウマは頭を下げながらそう言った。
「言い忘れていたがシャラガによって生活は変わる。仕事探して生活が安定したらシャラガを覚えるといい。もしお前に才能があれば生活環境を改善出来るだろう。まあお前の年齢から始めても大して伸びないと思うがな」
「はい、分かりました。何から何までありがとうございました!」
「じゃあ元気でな!」
バーデラはそう言うと馬車を走らせてさらに道の奥へと去っていった。リョウマは再び下げた頭を上げ、シャラガが何なのか分からないけどとりあえず分かりましたと簡単に恩人へ返答したことにちょっと罪悪感を覚えつつ、宿泊施設へと向かった。
リョウマは役所でもらった紹介状を宿の受付の男に見せるとすぐに部屋に案内された。食事が今日の夕飯と明日の朝食の計2回出るとのこと。風呂場は共用のところがあってそこを使うことになった。部屋に入って一通り説明を受けてベッドに座るとドッと疲れが出た。
(・・・ああ疲れた・・・ここは何なんだよ・・・異世界って・・・マジで・・・夢じゃないのか・・・父さん、母さん・・・)
リョウマは両親のことを自然に思い出していた。彼が今まで将棋一筋でやって来れたのは間違いなく家族のおかげである。理解ある両親のおかげで打ち込んで来られたのだ。
(それなのに自分から諦めたんだ・・・俺は・・・ごめん・・・ごめんなさい・・・)
また強い後悔の念に襲われ、胸が痛くなった。また涙腺に痛みを感じ、涙が出てきたのが分かった。
と、そこへドアをノックする音が聞こえた。
「リョウマさん、いるかい?夕飯だよ」
出かかっていた嗚咽を押し留め、出来る限りの平静を装って答えた。
「はい、今行きます、ありがとうございます」
夕飯はシチューのような料理でリョウマの口に合った。浴場も先客が数人いたが誰とも会話も無く無事に出て来られた。
(下着の換えも無いんだよな・・・明日はどうなるんだろう・・・)
リョウマは心配で眠れないなんてこともなく、ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。
「・・マさん、リョウマさん?」
ドンドンとノックする音が聞こえた。
「あ・・・ふぁい」
リョウマは変な返事をしながら、まだ眠気でまどろんでいる頭を何とか起動させようとした。
「朝食ですよ、それと申し訳ないですが食べたらすぐに中央役所へお願いします」
「はい、ありがとうございます」
リョウマはなんとか言われたことを理解してベッドから降りた。
リョウマは朝食を食べ終えると、何の荷物もないので手ぶらのまま宿泊施設の人に礼を言ってすぐに出た。外に出ると曇り模様で昨日と比べてちょっと寂しく感じた。
(そうか・・・電灯とか無いもんな・・・)
そう思いながら中央役所へ入った。
昨日とは違うオバチャンだったが、やっぱりオバチャン的な雰囲気の女性が対応してくれた。彼女の説明を要約すると、コースター西区という場所がリョウマの住居のある区域で、ジョージ・バランタインという人が区長で、まずはその人を訪ねろとの指示であった。リョウマは役所を出て彼女が書いてくれた地図を見ながら歩いていたが、程なくして迷子になったので、近くの商店の店員と思しきオジサンに道を聞いてみることにした。
(緊張するなあ・・・)
リョウマは緊張しながらそのオジサンに尋ねた。
「すみません、道をお聞きしたいのですが?」
「あ?ああ、道ね、どこへ行くんだ?」
リョウマはそのオジサンを優しそうに感じてほっとした。
「この西区なんですけど」
とリョウマが言いかけたところで、オジサンの背中をぶっ叩く者が現れた。
「痛ってえなあ!」
とオジサンは言いながら自分の背中をぶっ叩いた者の方を振り向いた。
「なんだ、マイアかよ!いきなりぶっ叩くんじゃねえ!」
リョウマはオジサンがそう怒鳴った方を見ると、そこには腕組みしたドヤ顔の少女がいた。ブラウンの長い髪に白の服、その上に茶色のベスト。オジサン同様、やはり中世っぽい服装である。
(ここの店員?白人かな?)
「さっきね!うちの地区とオジサンの地区で模擬戦やったんだけど、うちが3-0でボコってやったんだから!その報告!」
そう言われたオジサンはリョウマの方からは表情が見えないが、さっきより荒げた声で言った。
「どうせザコを厳選して無理やり相手させたんだろ!お前んとこのバーデラが考えそうなこった!!」
(バーデラ?昨日の大男か?)
「バーカ!違うわよ!」
マイアは組んでいた腕を解いて今度はその手を腰に当てながらいかにも得意げな表情でそう言い放った。
「バカとはなんだ!こっちのラインナップは誰だったんだ!」
「ふふーん!聞いて驚きなさい!ケルボ、スーザ、フリオの3人よ!」
そう言われたオジサンは一瞬ビクっとして怒鳴った。
「嘘をつけ!!!それかどうせ酔っ払ってるとこを無理やりやらせたんだろ!!」
マイアは間髪いれずに答えてみせた。
「そういう疑いがないようにわざわざ早朝にやったのよ!分かる?うちの完勝なんだから!ログだってあるのよ!!」
ぐっ・・・とおじさんは一瞬呻き、悔しそうにこう言った。
「ちくしょう・・・もう帰れ」
「あ、あの・・・道なのですが・・・すみません他で聞きます・・・」
リョウマは明らかに場違いな雰囲気を感じながらも勇気を出して聞いた。オジサンはリョウマの方を振り向くと真っ赤な顔で彼を睨んだ。
「ん?道?あなた迷子なの?」
リョウマの話が聞こえたマイアがそう聞いた。リョウマは何となく小バカにされた気もしたが道を教えてくれるなら誰でもいいと思った。
「ああマイア、お前道案内してやれよ。そんで二度と来るな」
そう言いながらオジサンは店の奥にある椅子に座り込んで天を仰いだ。
(よく分からんけど余程のショックだったんだな・・・)
「で、どこに行きたいの?」
少女に急かされて本題に戻った。
「あ、ああ、この西区の区長のジョージ・バランタインさんにお会いしたくて・・・」
「その人なら私の父よ」
あまりの偶然にさすがに驚いた。
「ええ?マジで?」
「マジよ」
マイアは真顔で答えた。リョウマにとっては天の恵みであった。
「それは助かります。私は異世界人の糸田リョウマと言います。今日から西区に住むことになりまして」
「ああ、1人来るって役所から連絡来てたのはあなたのことね。案内してあげるわ」
「ありがとうございます!」
リョウマは別に区長とやらに会いたかったわけじゃないが、何かクエストを達成したような気分になってちょっとテンションが上がった。
(この子めっちゃ早歩き・・・)
マイアがすたすた歩いていく。リョウマには歩き慣れない簡易舗装のような道であり、彼女に遅れないよう付いていくのが精一杯であった。
「あのー、ジョージさんのいらっしゃる場所はここから遠いんでしょうか?」
とリョウマがマイアに尋ねると、彼女は振り向きもせずに歩くペースを保ちながら端的に答えた。
「この中央区を越えたらすぐよ」
(可愛げが無いな)
いかにもリョウマに興味無さそうなマイアの雰囲気が若干癪に障りつつも付いていくと、彼女は急に止まって彼の方へ振り返った。
「ここからが西区よ」
「へぇー・・・」
中央区と比べて特に風景に変わりは無い。
(こりゃ道覚えるの大変そうだな)
「そこにあるのが西区の役所よ。まあ役所と言っても中央以外の各区の物は大したものじゃないわ」
マイアはそう教えてくれながら役所の建物に向かった。リョウマも慌てて付いていった。
役所の中はマイアの言った通り、簡素で中央の雰囲気とは全然違っていた。
「お父さ・・・区長さんいますか?」
マイアが受付の若い女性に声をかけた。
「執務室にいるけど、どうしたの?」
「昨日役所から連絡が入っていた異世界人を連れて来たんです」
「あら、そうなの。異世界人さんこんにちは。マイアちゃんご苦労様、奥へどうぞ」
と受付の女性がマイアに手で執務室の方を案内すると、マイアはすぐにそちらへ向かい始めた。
「あ、糸田リョウマですこんにちはって、あ、ちょっと待って」
マイアはリョウマの挨拶を待たずにすたすた行ってしまった。
「糸田リョウマさんね、伺ってます」
そう言いながら女性は会釈してくれた。ちょっと嬉しかった。
リョウマが大急ぎでマイアを追いかけると、彼女は執務室とおぼしき部屋のドアをノックしているところであった。すぐに中からどうぞという男性の声が聞こえた。
リョウマがマイアとともに入ると、中にはザ・イケメンオヤジが座っていた。
「君が糸田リョウマ君?」
すぐにイケメンオヤジが話しかけてきた。
「は、はい、糸田リョウマです。よろしくお願いします」
お辞儀をすると椅子に座るように促された。
「マイア、ありがとう。ここからはこちらで手続きを進めるから下がってもらっていいよ」
ジョージはマイアに出て行くように促したがマイアはそれを断った。
「手続きが終わったら住居への案内が必要でしょ?今日はちょっと気分がいいから案内してあげるわよ」
マイアはリョウマにそう言うとジョージの横に座った。イケメンオヤジがリョウマにも座るよう促してくれたので、リョウマは向かい側に座った。
「私はここ西区の区長のジョージ・バランタイン。隣が娘のマイアだ。君は異世界から急に来て戸惑っていると思う。現実をすぐに受け入れろとはとても言えないが、君がここでの生活に慣れるようにこちらもサポートするよ」
ジョージは淡々とした感じでそう言ってくれた。変に気を遣われるよりは居心地がいい。
「ありがとうございます。ちなみに自分の世界に帰る方法はご存知だったりしますか?」
リョウマはあまり期待せずに聞いてみた。
「すまないな、全く分からない。過去に異世界人が帰還したという話を聞いたことが無いのでな、残酷な言い方かもしれないが、まずはここでの生活基盤を作ることを奨めるよ」
ジョージは真面目な表情でそう答えた。その表情に同情らしきものは伺えなかった。
「そうですか・・・」
リョウマはジョージが帰還方法を知っているとは期待していなかったが、過去に帰還した例すら知らないと言われ、さすがに落胆した。
「年齢の欄に19とあったが、これはそちらの世界の年齢だよな?異世界人はこちらの概ね半分の年齢を言うが、君もそうなのだろうな」
ジョージは淡々と次の質問に移った。
「え?あ、はい、そうです。こちらでは数え方が違うのでしょうか?」
「恐らくそうだ。例えばマイアは32歳だ。だが恐らく君より若い。基本的にこちらの数え方はそちらの2倍と考えると近くなるそうだ。」
「え!?32!!?びっくり・・・どう見ても15、16・・・ああ、だから2倍とか半分とかなのか・・・」
リョウマはそう驚きつつ理解しながらマイアの方を見ると、彼女は怒っていた。
「は!?失礼ね。数え方が違うだけじゃない。32なんてこっちじゃ若くて引く手あまたのモテモテなんだからね」
「ああそうなんだすみません」
「何かその言い方癪に障るわ」
引き続き怒られそうだったので何とか話題を切り替えることにした。
「あ、ところで仕事をしろと言われたのですが・・・」
「仕事については現在紹介出来るのが2つしかない。一つは体力系、もう一つは体力系だ」
「へ?2つとも体力系?」
「そうだ、冗談ぽく言ったつもりだったんだがな」
「そ、それはすみません・・・」
リョウマは緊張した方がいいのかどうか分からなくなってきた。
「両方体力系というのは冗談ではない。一つは新聞を配達する仕事だ。新聞以外の物もたまにある。朝夕の2回配達する。もう一つは害虫駆除だ」
「新聞配達やります!」
立ち上がりながら間髪入れずに答えた。ジョージとマイアが驚いた表情を見せたが、ジョージはすぐ真顔に戻って核心を突いた。
「虫、ダメか?」
「はい・・・全然ダメで・・・」
リョウマは虫が超絶苦手で虫の名前を聞いただけでも不快になるほどである。彼は自分が虫を駆除している様子を想像してしまいそうになるのを必死に食い止める。
「分かった、新聞配達だな。だがな、これはテストがある」
「テスト?何のですか?」
「道と配達先の家を覚えなきゃ話にならないからな。ちょっと厳しいが1週間で覚えてもらう」
「え?1週間?」
と、リョウマは驚いておいたが、仕事のボリュームが分からないのでもしかしたら楽なのかもしれないと思い、再び座った。
「そうだ、1週間で西区の配達範囲を全てだ。最低限の文字も覚えてもらわないといけないということでもある」
「えーと、どのくらいのボリュームでしょうか・・・?」
リョウマは恐る恐る聞いてみた。
「400軒くらいだな!」
ジョージは悪い笑みを浮かべながら元気よく答えた。
「ここよ」
マイアが指差した建物がリョウマの新居である。
「え?こんなにデカいの?」
「バカ、集合住宅よ」
一瞬カチンと来たが冷静さを保った。
「そ、そうだよね。俺の部屋はどこ?」
「11番よ。これカギね。じゃ」
というとマイアはすたすた歩き出して去ろうとした。それを慌てて引き止める。
「ちょっと待って!11って言われてもどこかに表示があるの?文字読めないよ」
「ああそうだったわね、忘れてたわ。11はこうやって書くのよ。ていうかそこの階段から2階へ上がってすぐの部屋よ」
マイアは11を書きながらそう言って階段を指差した。
「ありがとう、助かるよ」
「じゃ」
とつれない返事をしてマイアはすたすたと去っていった。
後付けっぽいギィギィ鳴る木造の階段を上るとすぐ部屋があった。マイアの説明と教えてくれた文字と同じ物が書かれていたのでそこが自分の部屋だとすぐ分かった。
(あれ・・・?思ったより綺麗じゃん・・・もっとホコリまみれとかを想像してた)
その部屋はつい昨日まで誰かいたとしてもおかしくないような雰囲気であった。もちろん家具は何も無いが。
(そうか、今日からもう自分で買ったり食ったりしないといけないんだよな)
役所から出る際、リョウマはジョージからお金をもらっていた。およそ2ヶ月分の生活費に相当するらしい。来年の今日が返済期日だそうで、利子は無し。返すにはかなり節約しないといけないそうだ。それと給与の支払日や生活に関する情報を教えてもらい、近隣の地図など数点の資料をもらった。
(あ・・・来年と言ってもこっちの世界の来年だからつまり半年後に返済しなきゃいけないのか・・・)
マイアは役所に戻った。ジョージに一つ確認をする為だ。
「ねえお父さん?あのお金って返済しなくてもいいんじゃなかったっけ?」
「ああ、もちろんそうだ」
「じゃあなんで返済するように言ったの?」
「生活基盤を整えて、貯蓄出来るくらいになってくれれば心配無いだろ?本当に返してもらおうとはしていないよ」
「なるほどそういうことね!」
マイアはさすがお父さんと心の中で敬った。
矛盾等御座いましたらご指摘頂けますと幸甚です。