彼らはそれでも信じている
「さて、ここにあいつがいるのか?」
アカネを含む面倒事、その全てを振りきり駆け抜けた路地裏の先。
異質な雰囲気を漂わせる扉を前に、希望は立ち尽くす。
扉は扉である。だが、その輪郭は酷く朧気で、取っ手にあたる部分がない。
パッと見た印象としては窓と言った方が近い。水面のように半透明にも見えるが、扉としての役割は保っているらしくその向こうを見通すことは出来ないようである。
希望は背後を確認し、追手が来ていないことを確認し、
「……よし」
――ぶち破るか。
どれだけ異質であっても所詮は扉。蹴り破れないのであれば、それはそれで。
試してみる価値くらいはあるだろうと、数歩下がり、脚に力を込め――。
――希望のすぐ目の前を、槍が通過した。
「…………ッ!?」
先ほどまで立っていた位置に落ちる、凶器。
後ろに下がらなければ――。そんな仮定に、さしもの尾張希望も気圧される。
「なぁんでまだ生きてんだぁ?」
カツ、カツ、と背後から追ってくる足音。間延びした声が白々しく。この槍を放った者が誰かを明確に主張する。
「……随分しつこいな。てっきり、追ってこないもんかと思ってたが?」
「男のケツなんざ好きで追ってるわけもねぇ、だがこう見えても俺ぁ律儀で有名なんだよ。やられたらやり返す、鉄則じゃあねぇか」
ニヤリと、アギリが口を歪めた。
「だがまぁ私怨だけじゃねぇな。さっきの身のこなしといい、お前なにもんだぁ? 魔女になんの用がある」
「知り合いの家訪問すんのに、いちいち理由が必要か?」
「無害なゴミ虫が勝手に野垂れ死にてぇって虎の穴に入んなら止めねぇさ。だがなぁ新入り、『女神の盾』はゴミだが無害じゃねぇ。害虫駆除を頼まれた俺が毒虫をみすみす見逃すと思うかぁ? お前も――」
アギリは酷く楽しそうに片刃の剣を希望に向かって投げつける。
縦に鋭く回転したそれは希望の真横スレスレを通り抜けて、背後の壁へと突き刺さった。
「何処に針があるかもわからねぇ新種の虫だぁ。知り合いだってんなら洗いざらい魔女との関係と手前ぇの素性を吐き出しやがれ。それで俺が納得出来んなら骨の五、六本折って魔女の家に放り投げてやらぁ」
愉悦に満ちた顔をしながら、骨の五、六本とは穏やかではない。加えて、どうあっても力比べに持っていこうとするその雰囲気が、何処となく森でのレイナを想起させた。
やはり、これがここでの普通なのか。
(いや……確か、この世界じゃ一番でかい街とか言ってたな――)
ならばきっと、極大化されてしまっているだけなのだろう。世間一般でこれだけ気性の荒い人間が闊歩しているのだとすれば、先刻に見た決闘が至る所で起きていても不思議でない。
それに、用件があったとはいえ粗暴な輩の跋扈する路地裏へと足を踏み入れたのは希望なのだから、相手にばかり非があるとは言えない、ともすれば被害者面は筋違いだろう。
希望はちらりと背後の扉へと目を向ける。
「あぁ、一応親切心で教えといてやるがぁ。手前ぇの背後にある扉、その先にゃ確かに手前ぇが会いたがって会いたがって止まない魔女様がいる。だが、間違っても触れんな。何が起きるか分からねぇが、下手すりゃここら一帯が消し飛ぶぞ」
これまでになく真面目な調子で、アギリは言い募る。
「……爆弾でも?」
「かもしれねぇし、邪魔されたことでキレた魔女が直々に顔出すかもなぁ」
「この世界はそんなんばっかか……」
げんなりと肩を落とすその一方で、魔女とやらが逢魔遥奈であるとして、そんなことを本当にするだろうかという疑問も希望にはあった。
(まぁ、いつこっちに来たのかは知らんが、三年も経てば人は変わるか――)
希望が《先駆者》となってから三年。ならば、記憶にある雪景色からは実に三年以上の月日が経っているとみて間違いはない。
時は人を変えるのだ。――劣化にせよ、向上にせよ。
それはきっと、この世界で『魔女』などと呼ばれている逢魔遥奈も例外ではない。
「……と、いいんだが」
「なぁにぶつぶつ言ってんだぁ?」
怪訝な顔をしたアギリが、気だるそうに首を鳴らす。
「……あのよぉ、俺だってこんなこた言いたかねえが――お前、なんでここにいんだぁ?」
苛立ちを隠そうともしない眼が、希望を見た。
「この世界にって初歩的な問いじゃねぇ。どうせ『女神の盾』から脱出口のこた聞いてんだろ? 知り合いに会う為っつってこの街の戦士を敵に回す意味がわからねぇ。勘違いのねぇように言っとくが――街中で直接的に殺せねぇってこた死なねぇってこととイコールじゃねぇぞ」
「…………」
「この地に立つなら戦え、戦う気がねえなら東に失せろ。さっきは手前ぇのペースに巻き込まれたが、交渉だなんだってぇ柄にもねぇ。最初からこうしとけば早かったなぁ」
告げた瞬間、アギリの片手に虚空から槍が現れる。
――因子。それも、アカネのような守りに特化したものと対照的に、攻撃寄りの。
「生憎と剣は飾りだぁ、一度だけ言うぞ。――構えろ」
槍を手にしたアギリは一段と低く溢す。
狂戦士の様でありつつも、新参者として疑わない姿勢は武人のようですらある。
また、なんだかんだ言いつつもここまで話が通じたあたり、やはりレイナと近しいものを感じる。
それはつまり、この戦いが避けられないということであり、
「……どいつもこいつも」
眼前に立つ戦士もまた、打ち負かされるまでは止まらないということに他ならない。
それを悟った希望は、僅かに腰を落とし半身となる。右こぶしを軽く握り腰の辺りに、左手は緩く開いたまま胸の辺りに構えた。
「…………抜かねぇ、か」
ふっと呆れたようなため息が漏れ、くるりと槍が回転する。
やがてその穂先がピタリと希望の足の辺りを捉えた瞬間、
「舐められたもんだぁ」
声を置き去りに、アギリが踏み込んだ。
「らぁッ!!」
低い姿勢のまま一足に距離を詰め、低い位置にあった穂先が急速に跳ね上がる。
「と……ッ!」
いなすことは許されず、希望は息を飲みながら上半身を逸らして逃げる。それを予期していたかのように、くるりと回転したアギリに合わせ、槍の柄が横なぎに襲い掛かった。
見える、目で追うことは出来る。――それでも、この世界に来てから群を抜いて重く速い一撃を前に、碌な心得のない希望に出来たのは、真正面から打ち合うことだけだった。
固く握った右手の甲で殴りつけるようにして、襲い掛かる一撃を弾く。
ガキィン!! ――と、二人の間に鈍い衝撃が走った。
「なかなかの反応じゃねぇかッ! 剣士にしちゃ及第点だぁッ!」
笑みをいっそう深めたアギリは槍を引き、希望の肩口に――否、関節という間接、急所という急所、内蔵という内蔵を狙いつくし、傍から見れば粗雑に、しかし精密に狙いをつけて必殺の一撃を連続に撃ち出していく。
希望がそれを食らうまいと、常人として超人的な膂力をもって足掻くが故、
手の平で逸らし、手の甲で弾き、時に拳でもって打ち払い続けるが故に。
当たれば致命傷となりうるそれらは連撃となり、断続的に撃ち出されていく。
上下左右から遅い来る脅威。
何回、何十回目かも分からない一撃が腹部に差し迫り、
「――おおおおおおおおおおおおおおッ!!」
猛る拳が、穂先を地面へと殴りつけた。
「……ッ!? やるなぁッ!」
アギリが驚きに目を見開いたのも一瞬、すぐに持ち直し引き上げようとする――その穂先を希望が強く踏みつけて妨害すると、アギリはなんの抵抗もなく槍から手を放した。
後方へと飛び退いたその手には、新たな槍の輪郭が形作られる。
(また槍……!)
先ほど希望の目の前に落ちたそれといい、どうやらアギリの持つ《因子》は、『槍』に起因するものらしい。
それが製造なのか、あるいは複製か転移、貯蔵なのかはわからない。
だが、いずれにせよ希望の両の手は既に血が滲んでいる。土台、刃物を相手に素手で挑むこと自体が現実的ではない。それが槍だというのだから、間合いを考慮しても尚更だろう。
「いいねぇいいねぇ、いいじゃねぇかッ! 思ってた以上だぁ新入りぃッ!!」
なにがそんなに楽しいのか。――希望には不明な悦楽を得ているらしいアギリの手に、これまでとは見栄えの異なる槍が出現する。
希望は槍の種別になど詳しいわけもなく、これまで打ち合いを繰り広げてきた槍でさえ、どれを特徴とするべきかわからない始末である。いまアギリの手にある槍の方が長さが短いか、それぐらいのことしか思いつかない。
そもそも槍といえば、なにが思いつくか。
ゲームで見るようなものは盾とあって真価を発揮するものだったか。有名なところではポセイドンやオーディンが持っているものが該当する。もっと身近なところではスポーツ……――?
「投擲か……ッ!?」
ジャベリン。それは投擲を主とする槍の総称である。
希望の辿り着いたそれは、やがて現実のものとなり、アギリが緩やかに肩を回した。
本来であれば、助走をつけ全身を使って投げるものであるはず。
しかし握っているのは、現実基準の人間ではない。
「おらおらおらぁッ! 風穴が開かねぇよう、せいぜい尽力してみろッ!!」
酷く軽い調子で、超速の槍が無数に希望に降りかかる。
幸いにして直線軌道である為、対処事態は先ほどの縦横無尽な連撃よりも楽ではあるが。
(こうも玉数が多いと、こっちが攻めれない……ッ!)
投擲武器の強みとは、安全圏から一方的に的を射れる自衛要素の高さに尽きる。
「く……ッ!」
弾き損ねた一本が腹を掠り、希望の顔が苦痛に歪む。いかに能力値が振り切っているとは言え、技術もない対処では徐々に距離が開くのは必然である。
では、その開いた距離をどう埋めるか。
踏み出せない一歩をどう踏み出すか。
否、これ以上の距離を開かない為にはどうするべきか――――?
その時だった。
「……? どういうつもりだ?」
不意に止んだ猛追。意図を図り兼ねた希望は眉を顰める。
思考が続かなかったことは事実であり、助かったことは否定できないが。
「止めがさせる獲物をいたぶるのは、あまり趣味がいいとは言えないぞ」
何本もの槍が突き立った路地裏でアギリが笑う。
「なぁに、先輩としての心遣いじゃねぇか。このまんま死ぬまでいたぶんのもいいがぁ……戦士の性ってぇやつだな。どうせなら、本気の手前ぇをぶちのめしたいってぇ我儘だ」
「本気……?」
希望はさらに、眉間に力が込められるのを感じる。
それは、ここに来てまだアギリの言動を飲み込めないからではない。
(……本当に、どいつもこいつも―――)
奥歯を噛みしめ、眼前の戦士を名乗る狂人を睨みつけるそれは、元の世界でも時折、覚えのある感情だった。目覚めてから数時間、募りに募ったそれを、ここに来てようやく自覚するに至る。
「そう難しく考えんなよ。ここらで互いに手札を見せあおうぜってぇ提案だ。見事な捌きと言い、その恰好といい。腕に覚えがねぇわけじゃねぇんだろ?」
レイナがそうだった。よく知りもしない風でありながら、希望に対する期待だけは確信を持っていて、まだ状況を掴み切れていない希望へ、容赦のない洗礼を送ろうとした。
「手前ぇの元の世界がどんなとこだったか知らねぇが、この世界の奴らってのはルールがルールだけに、そういうのに興味深々でなぁ。装備なり能力なり、強けりゃ強いほどに、新たな強者を求める傾向にある」
アカネがそうだった。記憶を失ったのだと理解しながら、実の友人のように親切に振舞うその姿はちぐはぐで。現実に立つ尾張希望を度外視した言い分は、レイナの比ではなかった。
そして眼前で吠えるアギリもそうだ。
「俺もそうだぁ。――顔を隠し、剣も抜かねぇ。加えて魔女の知り合いだってぇ手前ぇの本気にゃ興味がある。そいつを見せてみろッ! 代わりと言っちゃあなんだが俺からは、形容し難いくらいには凄惨な末路をプレゼントしてやんよッ!」
期待を、ルールを、正義を、戦士であることを希望へ押し付けようとしている。
希望が強者であると、妄信している。
そのことが堪らなく、
「うるせぇよ」
尾張希望の苛立ちを助長する。
「ッ!?」
呟いた希望が身を低く地を駆けた。
遅れてアギリの両手に新たな投擲用の槍が握られると、そのうちの一つが希望へと向けられる。――それを難なく掴みとった希望は、一度回転して勢いを殺すことなく打ち放った。
続くアギリの一槍と希望の奪った一槍。
それらが空中で耳障りな音を生み出し弾け合う。
宙空の火花を追い抜き、弧を描きながら疾走する希望が、ついにアギリへと肉薄した。
「はッ! 別人みてぇだなぁ、そうだ本気で来いッ!」
虚空を捻じ曲げて出現する太い柄の槍。
それと同時に抜き放つ――黒い刃の剣。
「うるせぇって言ってんだろッ!」
振り回される槍から放たれる縦横無尽の連撃。それに真向から打ち合うようにして希望は両手で握った剣を暴力的に振るった。
そこに技術などない。
あるのは苛立ちと確かな意思。
「こいつはどうだぁッ!」
後方へと飛び退いたアギリが手を翳す。すると目に見えて重厚な先端の槍が数本、希望の頭上で生み出される。
出現するのは手先だけに限らないのか。――アギリの持つ《因子》の高い汎用性に、希望は目を細め、臆することなく前進した。
移動する希望を追うように次々と降り注ぐ槍。
「チィッ!」
追いきれない。そう確信を抱いたアギリが槍を構え、再び槍と剣が交差する。
この世界に来てから受動態ばかりだった記憶喪失の少年、初の攻勢。
反射で対応するのではなく、奇を衒うことで避けるのではなく。自らの意思で剣を握り、目の前の調子に乗った輩が気に食わない、だから黙らせるという短絡的な意思を実現する為に。
手に伝わる馴染んだ感触が、重いはずの剣を、軽いものと錯覚させる。
十数秒と続いた打ち合いの果て、希望の剣がアギリの槍を強引に打ち上げた。
「いい加減――」
「…………ッ!?」
ビリビリとした衝撃がアギリと希望、両名の手へと伝わる。それを無視して剣の柄から離した片手を伸ばし、希望は呆気に取られたアギリの襟を握って引き込んだ。
「黙ってろッ!!」
ガツンッ!! ――イニシアティブを奪う、轟音が響く。
「……ぐ……ああぁッ!?」
無防備な額へ渾身の頭突き。揺らいだ意識をそれでも保ったのは戦士としての矜持か。
脚へと伝わった衝撃に耐えたアギリは手の内で回した槍の先端を希望へと向ける。
先ほどまでに比べれば酷く直線的な一撃である。希望は剣を空中に放り、空いた手の平で突き出されたアギリの腕を掴むと、身を沈めてぐるりと背を向けた。
元の世界の記憶しかない、希望の持つ数少ない技術。
否、技術というには余りにも粗削りで、ただ結果だけ見れば同じというだけである。
「お、おお――らあッ!」
相手の片手を掴み、背負うようにして投げる。
それを希望の世界では、一本背負いと呼んだ。
「……かッ……はぁ…ッ!?」
一瞬の浮遊感と激痛。
地面に叩きつけられたアギリの口から押し出された空気が漏れる。
「はぁ……はぁ……まだやるのか」
集中と苛立ちの糸が切れた希望は目を疑った。
頭突きに、背負い投げと、体内へ衝撃を伝えるそれらはどちらも無防備に食らえばただでは済まない。特に後者は、ここは衝撃を吸収するような場ではなく、補正された路地裏なのだ。
「当然だぁ……手前ぇはまだ本気を出してねぇ……ッ!」
おそらくは初見、受け身だって取るという思考が追い付くはずがない。だが、それでもアギリはのそりと、ゾンビのように立ち上がった。
相当な衝撃だったろう、ダメージがないわけではなさそうだが、それでもアギリの戦意を削ぐには至らないらしい。体力、精神ともに戦士を名乗るだけはあるというか。
「……ほとほと呆れるぞ。俺が本気を出してないって? なんの確信がある。お前は俺じゃない、たった数分足らずのやりとりで、どうしてそんな他人を分かった気になれる」
アカネにも言えることだった。
どこかの後輩にも言えることだった。
希望からすれば、誰にでも言えることだった。
「確信はねぇが、予感はあるさ」
だが、アギリは笑みを深め、確信ならぬ核心を口にする。
「手前ぇは戦士じゃねえ」
「…………」
「だが、無力な雑魚でもねぇ。身体と精神の鍛え方が尋常じゃねぇし、担いでるその剣も棒切れみてぇに振り回しちゃいたが、切れ味といい量産品じゃねえな。とっさの機転も利く――だが、だからこそおかしい。まるで経験だけがすっぽりと抜け落ちたみてぇだ」
アギリが、フードを被った新参者の欠陥を言葉にする。
「……っ」
思わず、息を飲んだ。
戦士を自称するだけある。アギリの持つ鋭さ、観察眼はまさに歴戦のそれである。
不意に、その顔がへらっと笑った。
もう回復したのかという衝撃よりも先にこの状況でまだ笑う異質さが勝る。
「オーケーオーケー、つまりアレだぁ。出し惜しみすんなっつぅこったろ。俺が本気を出してねえから、本気を出すまでもねぇ。そういうこったろ? なら話は早ぇ、さっきは何でスイッチが入ったか知らねぇが、分からねぇなら数撃つまでだなぁッ!」
勝手に言い募り、アギリは天へと手を伸ばした。
その先に、なにかが集まり、やがて目に見えない何かか力強く握られる。
「さぁて――こいつがなんだかわかるかぁ?」
「…………?」
目を凝らすも、アギリが何を指しているのかわからない。
そもそも、アギリの能力――《因子》はなんだ?
槍を起因とすることは間違いない。手で投げていたことに加え、空中に出現した重厚な穂先の槍が直線で落下してきたことから、その特性に射出は含まれていないだろう。
残弾を考えているとは思えない攻撃の波から貯蔵や転移という線が消え、複製という可能性が残る。しかし、それでは目の前の説明がつかない。そもそも、それらをアカネの《守護の因子》と同列に考えるのは些か強みが足りない気がした。
「……まさかとは思うが」
致命的なの欠点と極大の利点。それが《因子》の特徴であるはず。
だから、希望はアギリの握るそれを驚くほどにあっさりと飲むことが出来た。
「お前の《因子》は、想像した槍の具現――お前がいま握ってるのは、透明な槍……か?」
槍という括りに限定されるものの、想像できるものであれば具象化が許される。
それは投げる目的に適して長さを調節することは勿論、穂先や柄の太さだって――見えないという特徴を付与した槍でさえ。
「くっ……くくく、はははははッ!」
一拍を置いて、アギリが耐えきれずに笑い出した。
「大正解だぁ――俺ことヒサギリ・アギリは想像上の槍を具現化出来るッ!! 反射神経にゃ自信があるみてぇだが、見えない槍だって防げるもんなら防いで見せろやッ、新入りぃッ!!」
風景に溶け込んだ一投。
(剣を――ッ!)
床に転がる剣に希望が手を伸ばす。
風きり音だけを伝え姿の見えない脅威が迫る。
無数の槍が散乱した路地裏に血しぶきが上がった。
ブックマーク=2ポイントというのを知りました。お恥ずかしい。
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