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その記憶喪失、最悪につき  作者: 沼田ゆう
10/23

逢魔遥奈の事情

 希望の知る限り逢魔遥奈おうまはるかなは天性の裏切り者である。

 なにもそれは、肝心なところで手の平を返し、悔しがり絶望する阿鼻叫喚を至上の喜びにしているというわけではない。そんなやつがいれば人類悪に他ならないだろう。

 例えば、こんな話がある。

 希望がまだ中学に上がった頃。初めて逢魔遥奈という人物を見た時、大半が初対面にも関わらずクラスメイトに囲まれているその姿から、まず自分には接点のない生き物だと思った。

 だがその放課後、そんな希望の勝手な認識は見事に裏切られ、何故か遥奈の家へと強引に招待されていたのだ。尾張希望が初めて目撃した裏切り者の片鱗である。

 第三者が聞けば、なんだそんなことかと笑ってしまうかもしれないが、その話には続きがある。

 わざわざ希望を家へと招待した理由を問い詰めると、遥奈はあっさりと「丁度よさそうだったから」と答えた。一緒にゲームが出来る友人が欲しかったそうだ。

 勿論、希望は突っぱねる。友達など求めていなかったし、そもそも遥奈の提示したそのゲームは機体すら持っていないものだったからだ。

 すると、遥奈は爽やかな顔でこう言った。

『だから、買えと』

『………………』

 絶句である。

 初対面の人間に頼られ、瞬く間に人の心を掴み、集団の核となる。

 であれば尚のこと、人格者ではないのかと思った。当時からすでに達観したところがあった希望だが、それでも見通しが甘かったということか、その思想ごと見事に裏切られたのだ。

 その後も、逢魔遥奈の裏切りは続く。

 学校では先輩後輩クラスメイト、教師や校内で働く清掃員に至るまでの信頼を構築しながら、校外では自身の欲求の為に、一目を忍んではその悪辣な根幹を希望に見せつけた。

 そうなれば必然、人の目があるところでは聖人君主を演じ影では己の利の為、非道に手を染める。こいつはこういう奴なのだ、という人物像が希望にぼんやりと浮かび始める。

 すると今度は、迷子の手を引いた為に学校を無断欠席し(もちろん希望も道ずれとなった)、無遅刻無欠席の褒賞を受け取り損ねる。コンビニで老人に傘を譲ったが為に自分が雨に濡れる(この時傘を持っていなかった希望も雨に濡れた)、挙句の果てにそれを理由に風邪を引く(なぜか希望が看病した)など自身の利を度外視した目に余る善行も見受けられ、人物像が形を成すことはなかった。

 掴めそうなところ逃げられ、出来上がりかけのそれは打ち砕かれる。

 半ば悔し紛れに出来上がったのは『こいつは裏切ることに長けている』という暴論だった。

 言うまでもなく、それはこじつけであり、当時まだ中学生だった希望の思い付きでもある。

 だから、事実は全く異なるのだろう。

 けれど、一側面から見ればそれは一つの真理であるように、今の希望には思えるのだ。

 (きっと、逢魔遥奈像を作りかねたのは、俺だけではない――)

 何時だって期待に応えることはなく、何処にいても想いに沿うことはない。

 希望とは違った意味で他人を考慮しないその様は、やはり裏切りに他ならないのだから。

 そして、異世界に来ても、三年経ったらしい今もそれは変わらないらしい。

 変わらないだろうという期待を外面的に裏切り、変わっているだろうという期待を内面的に裏切り、今だって鼻歌まじりの逢魔遥奈は、先刻に抱いた希望の想像を裏切り続け、予想以上に手の込んだ料理を着々と進めている。

 やはり、逢魔遥奈の本質はただ裏切ることにある。

 希望はパっと見、裸エプロンと見紛う幼女が台所に立つ姿を見てそんなことを思った。


「……どうだ? うまいか、うまいだろう? 私が作ったんだからうまいよな?」

 逢魔遥奈は小さな体躯をテーブルの上に乗せ、肘をつく。

 手料理を振舞ってもらった手前、希望も自重してはいたが、色々と限界だった。

「お前さ」

「なに、うまいって? いや照れるなぁ」

「うっ――――――――――――――ぜええええ」

 確かに旨かったことは認めよう。そこも含めて色々な期待と想像を裏切られたことも。

 だが、何よりこのキャラクターが三年経っても一切変化されないことに意義を唱えたかった。

 希望としては、その期待が最も重要で、裏切られてしまったことが一大事だった。

「というか、いい加減突っ込ませてもらいたいんだが?」

「人が女になったからって、一体私の何処にナニを突っ込む――」

 ガツンッ!! ――イニシアティブを奪う、轟音が響く。

「――で、私の何処にナニを突っ込むって?」

 奪えなかっただと!?

 一方的に衝撃を受けた希望を驚愕が襲う。

「おい、お前いま何をした。少し見ないうちに石頭になりましたってレベルじゃないぞ」

「さてな。というか、人がせっかく持て成してやってるんだ。飯くらい静かに食えよ」

「…………」

 このガキ。――ジトリ、と希望が真正面の幼女を睨む。

「そう睨むな睨むな。こう、アレだ。この私がシリアスな空気を和ませてやろうとしてるんじゃないか。お前の置かれてる状況を鑑みての配慮だ。そう邪見するなよ」

 最後にニッコリと、可愛らしい女の子の笑顔を作る遥奈。

「ほう、俺の状況を鑑みてねぇ……」

 明らかにいま思いついた風のそれを聞き流し、希望はジッと、文字通り目と鼻の先にある淡い瞳を見つめ返した。

 希望の記憶にある限りでは、逢魔遥奈が戯言を並べた際には大抵これで自白した覚えがある。

「…………、」

「…………、」

 見つめ合い、数秒。

 意外と粘るな。――希望がそう思い首を傾げた瞬間、もう一度遥奈はニコリと笑みを作り、

「ちゅ」

 遥奈の突き出した唇が、希望のそれを啄むように触れた。

「……………………………………………………………………よし、死ぬか?」

「あっはははははははッ! キボウのファーストキス貰った―っ!」

 脇に立て掛けてあった剣を抜きに掛かった希望に、腹を抱えて笑う遥奈。

 殺したい、いやしかし。――冷静な部分が囁く。

(落ち着け、こいつのペースに飲まれるのは思うつぼだ……)

 唇と唇が触れただけである。健全な好青年としては気を荒げるところであったとしても、そこは尾張希望、当然ながらずれている。遥奈の人を小馬鹿にしたような態度に対する怒りのみであり、それさえ鎮めてしまえばどうとでもなるのだ。

 希望は柄へと伸ばしかけた手を下ろし、ゆっくりと深呼吸を開始……、

「お、お、やるか? 愛らしい女の子相手に剣抜いちゃうかー? きゃー怖ーい!」

 ――一度くらい殺しても罰は当たらないのではないか?

「……っ?」

 剣を引き抜いた勢いそのまま切り払ってしまえと思った希望の意志に反し、鞘から剣が引き抜けず――否、引き抜こうとする希望の意志を邪魔するようにそれ以上の力が加わらなかった。

 疑問に満ちた希望を嘲笑うように、くっくっと遥奈が押し殺した笑いを漏らす。

「ふふふ、聞いてないのか? 街中で致命傷を与える攻撃は出来ない。厳密な線引きは曖昧だがこの状況で言えば、殺意の対象と獲物が明らかな以上、私は殺せないよ」 

「く……ッ! ……はぁ、もういい」

 街中での殺人は出来ない。それが事実、どういった形で収められるのか。それを確認出来ただけでもよしとしよう。――そう言い聞かせて希望は席についた。

「相変わらず可愛いなあお前は。ついつい虐めたくなる」

「……そっちこそ、相も変わらずいい趣味してんな。いつか絶対泣かす」

「そりゃいい、楽しみにしてるよ」

 ぶるっと身体を震わせた遥奈はそれまでのふざけた調子を少しだけ下げて、壁沿いに設置してある四角い箱を開け、そこから液体で満たされた瓶を取り出す。

 ぐいっと一口、唇を濡らした遥奈が切り出した。

「で……――そうそう、私がなんでこんな姿になってるか、だろ?」 

「わかっててやってたんだとしたら、もう一回お前を殺せないか試す必要性があるな?」

「そうかっかしなさんな。ほら、デザートをやる。これで機嫌とれないか」

 続けて四角い箱から切った果物が大量に乗った皿を取り出す遥奈。冷蔵庫かそれに近いなにかだろうと結論付け、呆れ調子で希望も言葉を返す。

「俺が子供に見えるのか?」

「何言ってる。子供は私だ」 

「…………うん?」

 言ってることは間違っていない。

 だが、対話として間違っている気がしたのは希望だけだろうか。

「ほらあーん」

「いや要らな、んぐ」 

 梨に近い。水っぽい感じと、触感と風味がそれらしい。

 無言で咀嚼する希望を他所に、遥奈もまた梨もどきを一切れつまみながら行儀悪く続ける。

「《因子》の話はもう聞いてるか?」

「ある程度はな。アカネの《守護の因子》とアギリの《具現化の因子》については、それなりに」

「自分の因子を聞いてないあたりがお前らしい」

 遥奈は笑う。

「一口に《因子》と言っても、その種類は現在分かってる限りでも三つはある。系統ごとに分ければもっとあるんだろうが、とりあえず大まかに三つだ」

「三つか……で、これは何の真似だ?」

「食え」

「…………」

「あーん」

 無言で差し出された梨もどきに抗議の視線を向けるも、受理されず。

 これを食べなければ話も続かないのだと気づくと、希望は観念してそれを口に含んだ。

 満足気な遥奈は指を一本立て話始める。

「一つ目はアカネやアギリのような、意識的に発動しかつ自分以外に働きかけるもの。これが最も多い《因子》の形となる。加護の付与、槍の具現化、ポピュラーなとこだと魔法なんかもこれに含まれるが、今日まで《因子》の保持者と他人の同時に働きかけるものは見つかってない」

 ――これを《外向因子》という。

 今しがた耳にした情報と、口に含んだ梨もどきを纏めて咀嚼しながら、希望は《外向因子》とやらは更に二つくらいに分岐できそうだなと、ぼんやりと考えた。

 アカネは強力な加護の付与という反面、自己には利かせることは出来ない。

 対してアギリは自分に付与するタイプでないものの、汎用性こそ高いが強力とは言えない。

 これは《外向因子》という大きな括りでは同一であるものの、性質としては余りにも違いが際立っている。もっとも、それはどちらが優良でどちらが劣等というわけもないが。

「随分とうまく調整出来てるもんだな……で、これは?」

「ん」

「…………」

 空いたばかりの口内にさらに梨もどきを迎え入れる希望。

 言うまでもなく満足した顔を浮かべた遥奈が二本目の指を立てた。

「次に《内向因子》。これは意識的、無意識的を問わず、自分に働きかけるものをいう。具体的には身体の変異、性別の転換、牙や羽、耳など獣の特徴を得る、ある種の異能を潜在的に得ることが出来たりと、大きな変化による不便さも目立つ半面、強力な《因子》だと言える」

「てことは、お前のそれは」

 性別の転換。

 一つ当てはまるものがあっただけで、容易に想像がつく。

「ああ、ご明察の通りだ。私、逢魔遥奈は《魔女の因子》によって、『魔法』という概念の研究開発技能とその運用権利を引き換えにして男であることを辞めさせられたよ」

 遥奈はそう言って、エプロンを少し引いて見せる。胸に巻いている布切れがなかった。

(幼女幼女と思っていたが、背丈だけか――)

 改めてみれば、幼いというよりは単純に背が低いのだろう。体組織がある程度成長している為か、幼児体系に見られがちな腹のふくらみがなく、胸元だって背丈にしては立派に主張している。身体の発育を見るに、年齢はそのまま二十といったところか。

 だからどう、ということもないが。

「女になってすぐの頃は『魔女』とは必ずしも女だけを示すものではないはずだと憤慨ものだったが、今となってはこの身体はこの身体で楽しめることも多い。不便があって参っているとすれば、少しばかり引っ張られることが多いくらいだな」

「……何に」

「女に、さ」

 言われて希望は声に出さず、ああ、と呻いた。

 変化はなにも身体だけに限らない。

 見方を変えればいまの遥奈は、『男である記憶』に引っ張られているとも言えるのだ。

 どんな気分なのか。希望はしばし空中へ視線を彷徨わせ、

「ふうん、大変だな」

 月並みな返答。――ものの数秒足らずで考えるのを辞めた。

 土台、どんなに現実に迫る想像をしたとて、それは想像の域を決して越えられない。自分に経験のない経験をした他人と、自分とを置き換えるということは、その他人がこれまで歩んできたあれこれを踏まえた価値観を想像するということであり、またその想像に理解を得るということでもある。

 それがいかに困難であるか、人付き合いの経験が浅い希望でも当たりを付けることは出来た。

「……ま、キボウはそれぐらいの反応だよな。いい具合の淡泊さがまさに私の期待通りだ」

 希望に対する理解なら恐らく最も高い遥奈は、さして気を害した様子もなく、というか笑みを深めてサムズアップした。

 本当に参っているのだろうかと疑問になるが、本人がいうのだからそうなのだろう。

 からかい調子で接吻までに至る程度には引っ張られているのだから。

「ともあれ、私がこんな身なり振舞いなのはそこらへんが理由だよ。最初は一人称も“僕”のままだったんだが、一度ふざけて“私”にしたら違和感がなさ過ぎて抜けられなくなった。この布切れ同然の服も男の時にはなかった解放感がな……ふふふ、無様な私を笑うといい」

「ははは」

「てめえもっぺんチューするぞッ!? 私の足腰立たなくなるまで舐め回してやろうかッ!!」

「おい、理不尽だぞ。料理が零れるからあまり暴れるな」

 バンバンっと遥奈が机を叩くたびに食器が跳ねて甲高い音を上げる。希望はその一つを料理ごしにフォークで押さえながらげんなりと溢した。

「もう少しあんだろうが、慰めの言葉がよ! 乙女だぞ、目の前にいんの可愛らしい女の子だぞッ! 感情欠損の朴念仁でも許されることと許されないことがあるぞゴルぁっ!!」

「なあ遥奈さんや、引っ張られてんの気づいてるか? ブレーキ踏めブレーキ」

「大体お前はもう少し――むごっ!」

 遥奈は口にねじ込まれた料理の一切れを暫し無言で咀嚼する。

 希望の倍近い時間を掛けて小さく口を動かす遥奈を無言で待ち、ようやく飲み込んだのを確認してから、希望は切り出す。

「落ち着いたか?」

「すまん、取り乱した」

 取り乱したというレベルではないと思ったが。

 またスイッチを踏んでは厄介だと、希望は取り零した会話のボールを探すよう仕向ける。

「……で、なんの話だった?」

「ん? ああ次は……《因子》の三つ目か? 私のこれについて話した以上、質問についてはここまでで十分に答えている。この先については完全に蛇足だが、聞いておくのか?」

「一応」

「そうか。お前も馬鹿じゃないし、ここまでの話で大体予想が出来てると思うんだがな」

 そういって本当にようやく、『男』としての落ち着きを取り戻したらしい遥奈は梨もどきを一つ掴み、口へと運ぶ。

「《外向因子》と《内向因子》。この二つの特徴に当てはまらないもの――つまりは、無意識的かつ自身を含む不特定多数に働きかける、言ってしまえば突発的な自然現象みたいな《因子》。これを《全向因子》、または《災厄因子》と呼んでいる」

「ふうん……しかし、災厄ね」

 遥奈の言う通りある程度は予想出来ていたものの、また随分と想像の範疇を裏切られた感が否めない話ではある。この場合は遥奈がどうというわけではなく、単純に規格外そうだという意味で、だが。

 突発的な自然現象。

 自分を含む周囲に見境なく災いを振りまくという、正しい意味での災厄。

 あるいは――。

「文字通り災厄の要素となりうる資質さ。そもそも私が考えるに、《因子》とは個々の肉体に新たな要素を加えることで怪物の類に変化させてるようなものだ。《全向因子》を持つ奴らは……そうだな、私やお前の感覚で言えばトラブルメイカーみたいなもんだ」

「ふうん、そう聞くと大したことない気がするな?」

「厄病神と言ってもいいが」

 一気に危険度が増した。

「なんにせよ、典型的な巻き込まれ型の主人公というよりは、逆だな。世界の平穏を突如として脅かす悪の大魔王のように、いらん騒ぎを巻き起こす側だと言える」

 起こり得ない確率を引き当てる事に特化した専門家。

 精工な物語に乱入して流れをぶち壊していく破壊者。

「……ところでキボウ。今の話とは全く関係ない話なんだが」

「なんだ唐突に」

「文字通りのラストバトル。龍王戦で絶対勝てるはずの戦いを敗北に導いた英雄――だなんて世間じゃ言われてる前のお前だが、千人に及ぶ実力ある戦士達をたった一人がどうやって邪魔したんだろうな?」

「どうやってって、そんなの……………………」

 考えて、言葉を失った。

 話の流れから連想しやすかったことが一つあり、その一つが連鎖的に色々な問題を想起させる。それら根底がどこにあるのか――否、その一つこそが根底ではないのかと想像してしまう。

『まさかとは思うが、手前ぇ……《最悪の――――』

 希望はアギリが吹き飛ぶ瞬間に呟いていた言葉を思い出していた。

 遥奈の裏切りによって阻まれてしまったが、もしあれに続く言葉があるとすれば――。

「わざわざ本人に気づかせるとか、本当にお前いい趣味してるよな」

「はてなんのことかな」

 察しがいいと、遥奈は柔らかにほほ笑む。 

 いまの希望にそれに対して詳細な記憶などない。

 だが字面だけでも十分すぎる主張ではないか。

「――《最悪の因子》、か。どうせ起こり得る最悪の結果を引き起こすとか、周囲に縁起の悪いことが起きるとか、その辺の能力だろ。なら、どうやって邪魔するもなにもない。前の俺は龍王戦に参加する、ただその場にいるだけで立派な妨害を果たした。違うか?」

 言って目を向ける。

 すると笑顔の遥奈が食べかけの梨もどきを、まるでご褒美だと言わんばかりに希望の口へと押し込んだ。

「事実は少々異なるが、今はその認識でいいさ」

「……あっそ」

 素っ気なく答える希望は何気なく空になった皿を見つめた。

(だが――)

 遥奈は邪魔をしたという表現を使ったが、その通りなのだろうか。

 戦闘に一切役立たない上、厄介事を引き起こす。百害あって一利なしとしか思えないこの能力をぶら下げて、前の尾張希望は何故龍王に挑んだ? その目的が見えない。

 また、アカネは何と言っていたか。その言葉を受けて、いまの希望はどういった回答を得たか。

 裏切り者として敗北の理由となった知られざる英雄。

 表立って千人と一人の悲願を邪魔立てした恥知らず。

「……どっちなんだか」

 話の切りがいいところで降りた沈黙に、遥奈は食器を下げていく。見つめていた皿が視界から取り下げられたことで、手持無沙汰となった希望は天井を仰いだ。

 『女神の盾』と『魔女』。

 どちらの言葉を信用するべきか答えは既に出ている。

 しかし、選ばなかったそれをただ切り捨ててしまっていいのか。答えの出ない問いに与えられたのは『保留』という簡潔な烙印だった。

思ったより(頭が)弾けたキャラになったけど後悔はしてない

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