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――― ふぅ、まったく最近、息子が厳しい。前までは師匠、師匠と後をついて来てくれていて可愛かったのに、最近は扱いが雑な上に師匠、いい加減に真面目に仕事してください、が一言目に出てくる、更に呆れ気味の溜息がおまけについてくる。まぁ、仕事をしない俺が悪いのだけれど、最近寂しい。
「おいおい、ジェイド。そういうのは心の中で言ってくれないか。」
東塔のリーダーであり、俺の上司兼相棒であるカラン=クンツァイト。厳つい顔ながら実際は見た目以上に優しい男である。まぁ、優しすぎるというところがたまに傷ではある。
「別にいいじゃねぇか。誰にも迷惑はかけてねぇだろ?」
実際に思ったことを素直に言っては心底あきれた、といった感じに深いため息をつかれてしまった。その通りじゃねぇか、俺以外にカランしか居ねぇし・・・、あぁ、カランにとっては迷惑、なのか?っていうか聞かれてる俺が一番恥ずかしくないか?まぁ、そんなことはどうでもいいが、俺的はもう少しゆっくりと昼寝したかったなぁ。
昼の俺の、俺たちの仕事は何かあった時の戦闘要員である。カランは公認司書を抜いた一般司書の中では武道では秀でている、公認司書では今では俺とレイ以外には現役は居ないものの、8年、か・・・?それぐらい前からこの西塔に所属している俺もいる。俺たちが揃っていれば隣国から攻められようとも一時的にはここを守ることぐらいは出来るだろう。それに今は入学することも卒業することも最難関と言われる司書学部を創立以来最速、最年少で卒業し、そのまま公認司書となった自慢の弟子でもあり息子であるレイもいる為、特に心配もしていないのである。
「・・・い、おい!ジェイド聞いているのか?いい加減、息子に迷惑かけるのをやめないか。レイは昼間もしっかり仕事をして本業も頑張ってやっているんだ。少しは見習ったらどうだ。」
珍しくお怒りなカランはいかつい顔が更に人でも殺しそうなぐらいの表情を浮かべ、先ほど褒めちぎったのにそれが帳消しといった感じだ。
「嗚呼、可愛い息子に迷惑かけられないからな。もうそろそろ真面目に仕事しますかね~。」
背伸びをしながら寝転がっていたソファから起き上がると、「監視部屋に行ってくる。」とだけカランに告げると、自分も行く予定だったのか、「嗚呼。」とだけ答えると、監視部屋へ向かった。
監視部屋は帝国図書館内に設置してある監視カメラすべての映像を見ることができる唯一の部屋である。この部屋へカギを持つのは西塔に所属している俺とカラン、そして各塔のリーダーの4人である。