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―――コンコンッと少し控えめなノック音が広々として豪華な部屋に響いた。
「入っておいで。」
そう声を掛けたのはルピナス王国の国王であるアイリスであった。そして、「失礼します。」と声を掛けて入ってきたのは教皇であるカルミアと元帥であるアフェランドラの二人であった。
「・・・あまり、急に呼び出しをされると困るのですがね。」
カルミアは言葉通りに困った表情を浮かべつつも小さな笑みを浮かべた。アフェランドラは許可も取ることなく、アイリスの前のソファへ腰を下ろすと、ニヤリとした笑みを浮かべた。
「・・・今日のこと、だろ?」
アフェランドラはいかにも楽しそうな笑みを零しつつ、「カルも座れよ。」と未だに立ったままのカルへ声を掛けた。カルミアはチラリとアイリスへ視線をやると、アイリスも「こっちに。」とアフェランドラの隣に視線を移した。「では。」とカルミアが座ると、アイリスは肩の力を抜き、首から下げてある国王の印を外し、テーブルの上に置いた。
その意味に気付いたアフェランドラは腰にある剣を、カルミアはマントを外して、同じくテーブルへと置いた。
「全く、息が詰まるな、ここは。」
「悪いね、こんなところに呼び出して。」
「こんなところとは、歴代の王に失礼ですよ、アリー。」
それぞれの位の象徴を外した三人は昔からの親友同士に立場を下ろして話し始めた。
「・・・それで今日のことじゃなくて、何の話なんだ?」
アフェランドラは今日一日の疲れを感じたらしく、右手で肩を揉みほぐしながら、アイリスへと声を掛ける。
「いや、今日のことなんだけれどね・・・。あ、ジェイに息子が出来たってのは話したかな?」
アイリスの言葉に二人はピシリと固まったまま、アイリスを穴が開くほど見つめ、王の間には沈黙が下りた。
「・・・アリー、それはなんの冗談だ?」
「そうですよ、そんな質の悪い冗談、勘弁してください。」
アイリスはじっと二人を見るだけ見た後、冗談ではないと言葉ではなく、小さな苦笑で表した。
「・・・何をしてんだ、ジェイは。」
「そうですよ、アリーもしれっと爆弾発言しないで下さい。」
「僕が一番驚いているよ。まぁ、ジェイは全く気にはしないだろうけどね。」
アイリスはテーブルに置いた王の首飾りを指で弾くと、「その子のことで話があってね・・・。」と口を開いた。
「軍の報告からもあったけど、最初に侵入に気付いたのは少年で、それを捕らえたのがジェイという風になっていたけれど、それで間違えないかな?アフィ。」
アイリスがアフェランドラへ視線をやると、「嗚呼。」という声が返ってきた。
「そこからは部下が取り調べをしている最中で、まだ詳しいことは報告が上がってきてはいないぞ?」
アフェランドラは先に聞かれるだろうと思っていたことを答えると、アイリスは「いや、それは後からでいいよ。」とだけ返した。
「それがジェイとなんの関係が・・・まさか、その少年が?」
もったいぶってなかなか本題にいかないアイリスにしびれをきかせたカルミアはその少年=ジェイの子ということに気付いたらしかった。そんな様子を見たアイリスはニヤリと笑みを浮かべてみせた。
「そう、その子はね、“黒”だったんだよ。それも特殊持ちだったみたいでね。」
アイリスは楽しみで仕方がないといった様子でそれを告げた。




