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―――今日は久々に仕事がねェ。…まぁ、レイが武術習いたいと目を輝かせるもんだから、図書館へは行くのだが。どうせ、カランの仕事が終わらねェと始めねェだろうし、と思い、家を昼過ぎに出た。
街に行くついでに食料も買うかとレイに声をかけると、「本、買いたい。」とえらく食い気味に言うレイに押され、帝都一の書店へ足を向けた。店内へ足を踏み入れると、レイは無表情ながら、雰囲気のみワクワクと踊らせていた。
ふらりとどこかへ行きそうなレイに「おい。」とだけ声を掛け、金を差し出すと、俺と金を何度か交互に見遣ると首を傾げた。
「…金ねェと、本買えねェだろ?」
「自分のがあるから大丈夫、だよ?」
レイは孤児院から出たときに持ってきた小さな鞄から小さな財布を取り出し、中を見せながら、「ね?」と同意を求めるが、…それじゃ、何も買えねェだろ、と思い、「いいから、持っとけ。」と財布に無理矢理入れ、財布を鞄へ放り入れた。
レイは少し不満げに俺を見ていたが、「行って来い。」と声を掛けると、渋々と言って感じに頷き、沢山の本が並べられている方へ向かった。
俺は特に欲しい本もなかった為、適当に時間を潰していると、本を抱えたレイが戻ってきた。相変わらず無表情だったが、どことなく焦っている様子だった。
「こ、これ、高いッ!」
俺の方へ本を見せながらワタワタと忙しなく手を動かし、必死になって伝える様子にクスクスと小さく笑みが零れた。そんな俺に少しムスリとしたようにこちらを見るレイをグシャグシャと撫でてやる。
「…だから、俺が金やっただろ?それで買え。」
レイは俺が渡したであろう金の入る財布を覗き込みながら、本と金を比べるように見ながら、ちらりとこちらへ視線を向け、「…ありがとう、ししょう。」と口元に笑みを浮かべつつ言った。
それから本の会計を済ませ、書店を後にすると、ニコニコとまではいかないが、口元を緩めているレイを横目に、次の目的地である食材の揃う市場へ向かっていた。




