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Egyptian Starcluster  作者: 狗月
32/45

2-15



 ―――えらく機嫌が良くなったな、とアイリスと会ってから、無表情が戻りつつあったレイに笑顔が増えているのを感じながら、“最初の本”のある部屋から出た。


「次はお前の“本”、探しに行くぞ。」


「僕の、本・・・?」


 “本”の意味が分かっておらず、小さく首を傾げ、見つめるレイに小さく苦笑を零す。


「俺でいうこれのこと、な?」


 俺の“本”を呼び出して見せると、“本”の意味に気付いたらしく、キラキラとした目で見つめているレイに「ほら、早く来い。」と移動サークルへ呼ぶ。すると、口元に微笑みを浮かべながら、レイがこちらへ小走りで向かってきた。・・・なんか、ぴょんぴょん跳ねて走るな、コイツ、と思いながら見守る。


 サークルを利用して移動した先は中央塔の書庫だ。沢山の本が収納してある本棚が両側いズラッと並んでいる。その様子に更に目を輝かせ、本棚を順々に見ているようだった。


 ・・・随分と嬉しそうだな、と様子を見ていると、ある本棚の前を通ると、レイがビクリと反応を見せた。本棚・・・というより、一冊の本を頻りに凝視していた。


「・・・なんか気になる本があるなら、取っても良いぞ?」


「・・・うん。」


 小さく頷きながら、手を伸ばすレイを見ていたが、本に触れた瞬間に光が見えた。それに視線を移しては見つけるのが早いな、と思わず笑みが零れた。


 それを手に取ったレイは光るそれに困った様子であたふたとしている。


「レイ、それ持ってこっちに来い。」


 俺の声が聞こえると、助かった、という様に安心の溜息を零して、またぴょこぴょこと跳ねる様に小走りでこちらへ来た。・・・段々、仔ウサギっぽく見えてきたな、と思いながら、「ほら、本貸してみろ。」と手を差し出す。レイは何の迷いもなく、俺に本を渡す。


「・・・これ、お前が好きな『はじまりの話』じゃねェか。」


「う、うん・・・、だから、目に入って、取ったんだけど、急に光って・・・って、ししょうが持つと光らない?」


「嗚呼、そりゃあ、これ、お前の“本”だからな。」


 少しキョトンとした面持ちだったが、俺の言った “本”の意味に気付いたらしく、「ほんとに?僕の本ッ?」と興奮気味に食いついてきた。嬉しい、と全身で表しているレイはその場でぴょんぴょんと跳ねていた。・・・やっぱり、仔ウサギ、だな。


 レイから受け取った“本”に手を翳し、エラーが発生していないかを確認する。

・・・この時の“探る”というのはあまり好きじゃねェな、と手へ力を集め、力だけではなく、意識も“本”へと移す。


“探る”際は、“本”へ集中するせいか、外からの情報がすべて奪われる。脳内は目から入る情報が流れていたはずだが、すでに“本”の物語が高速で再生されている。・・・相変わらず、酔いそうになるな、と思いつつ、物語のラストが見えた。


 それと同時に、視界が開け、力を解放すると、少し心配そうな、でもそれより驚きの感情の勝ったレイの顔が見えた。思った以上に力使うよな、これ、と愚痴を心の中で零しながら、ふぅ、と一息つく。


「ほら、終わった。特に問題ねェから、・・・後は中央塔に行って、登録するだけだな。」


「・・・今日、持って帰れる?」


「嗚呼、今日から魔力使える様に色々教えてやるよ。」


 俺の言葉を聞き、本日、何度目かの嬉しげな笑みを浮かべるレイに少し満足というか、としょかんに来て良かった、という気持ちに浸った。


「・・・ししょう、“本”は嬉しいけど大丈夫・・・?」


 ・・・何がだ?といつもであれば軽く返していたが、心配だ、と顔に貼り付けたレイを見れば、こちらまで心配になってきた。


「・・・目が、右目が光ってて、声かけたのに全然返事してくれなくて・・・。だから、大丈夫、かな・・・って思って。」


 目が光っているのは分からなかったが、返事してくれないという言葉で先ほどの“探る”時のことだと気付いた。・・・俺の目って光るのか?初めて知ったぞ、と別の所で驚いた。


「大丈夫。自分では目が光ってたのは知らなかったけど、今、一応、力使ったんだぞ?」


「え?・・・だから、あったかかったのかな?」


「あったかい?」


 ・・・初めて言われたな、とまじまじとレイを見ていると、コクコクと必死に頷いていた。


「僕はししょうの力、あったかくて好き。・・・怪我治してもらった時も、さっきも、どっちもあったかくて好きだなって・・・。」


 レイは俺を見ながら、“本”を抱き締める様に持ち、何度も表紙をめくったり、閉じたりを繰り返していた。そんな行動もレイなりに嬉しいという表現なんだろうけども、今は無表情の為、分かりづらいな、と思いつつ、「そう言われんのは悪くねェな。」と返すと、「そっか。」とレイは満足気な表情を見せていた。



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