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―――とりあえず、こんな感じなら何も言われねェだろ、と目の前のレイを見ながら思った。
前髪をトラウマでもある右目を隠す様にアシンメトリーにし、後ろも綺麗に整え、切りたくないというのでせめて、結べとポニーテールにしてもらった。服も子供ながらかっちりとしたジャケットを羽織ってる。
こいつにとってはすべてが初めてだったのだろう。店に入る前より、少し疲れた顔をしていた。・・・なんか、この格好は可愛さが増すな、と内心呟きながら、「ほら、行くぞ。」と声を掛ける。
すると、何故かびくっと反応をするレイに、なんだ?と顔を覗き込む。特に何も言わないレイにまぁ、ただ緊張でもしてんだろう、とそのまま、城に向かって歩き始める。
それに気づいたレイは小走りで俺の後ろについて来る。・・・なんか、ヒヨコ・・・アヒル?っぽいよな、と小さく笑みが零れた。
しばらく歩くと、ルピナス城の城門にたどり着く。門番に視線をやると、門番は俺に気付き、敬礼をしてみせた。その行動に俺の後ろを歩いていたレイはビクリと肩を跳ねらせた。
「ほら、レイ。隣、歩け。」
少し立ち止まって、後ろを歩いていたレイへそう声をかけると、「うん。」と頷き、慌てて隣へ小走りで寄って来る。それを確認すると、ゆっくりと歩き、移動サークルへ向かう。
「えっと、ジェイドさん。これ、何?」
城の中に入る手前で立ち止まった俺にレイは足元にある光の輪を指しては不思議そうに首を傾げていた。・・・初めて見るのか、と内心呟くと、ポンッと軽く撫でてやる。
「ほら、説明するより、先に体験したほうが早いだろ。」
俺はその光の輪の中に立つと、「こい、レイ。」と腕を掴み、レイもサークル内に入れる。 “本”を呼び出すと、光のサークルが“本”に反応する。
『国王公認司書、ジェイド=オブシディアン様と確認致しました。』
機械的な音声がサークル内に響く。それに反応しては更にちっちゃくなるレイに小さく笑いが零れた。
『どちらのフロアへ行かれますか?』
「選晶の間。」
『かしこまりました。』
機械的な音声と共にサークルの外へ景色が変わる。
「わっ、え?何か、勝手に変わった!」
レイは目をキラキラと輝かせ、外と俺を交互に見遣り、少し興奮したまま、サークルの外へ出ようとする。
「ちょっと待て。」
少し慌てつつ、再度、腕を掴むと進むのを止めさせた。『到着致しました。』という音声を聞いてから、サークル内から外へ出る。
「さっきのは城内での移動手段で、あれは登録された人間しか使えねェ。・・・あんまり、城内をウロチョロすんなよ?」
「・・・うん、こ、怖いから、じっとしとく。」
・・・怖いって何だ、と苦笑を零しつつ、「嗚呼、そうしとけ。」と声をかける。
すると、何故かまた俺の後ろへ、半歩ほど下がると、チョコンと俺のローブを掴むとホッと安心した息をついた。・・・なんだこれ、可愛いじゃねェか。
選晶の間の中心にある輝きを放つ水晶へ向かうと、後ろにある光のサークルが反応し、こちらに誰かが来ているのを確認できた。面倒だな、と内心呟きつつ、誰が来ているのかを確認すると、更に面倒だ、と大きな溜息を零した。
彼は、優雅な歩みでこちらに来ると、まだ職務の途中だったのだろう、正装でごてごてとした金の装飾を施してあるローブを身に纏い、長い金糸の髪は後ろで三つ編みに緩く結ってある。
彼の口元にはデフォルトになっている微笑みが張り付けてある。
「ジェイ、珍しいね。ここに来るなんて。」
「・・・お前こそ、ここに居ていいのかよ?」
「ん?心配してくれるんだ?まぁ、大丈夫だよ。ジェイが来てるって連絡があってね。・・・って、そっちの子は誰かな?」
目の前のこいつは後ろに居るレイに気付いたらしく、覗き込むようにしてレイを見遣る。その視線にビクつくレイは俯いて、掴んでいた服を更にギュッと握った。
「・・・名前はレイ。俺の、息子。」
・・・まだ届けを出してはないが、まぁ、結果的に変わりはないしな、と後ろに居るレイへ視線をやると、またしてもキラキラとした目で俺を見ていた。




