最高のサンタ 2
私がベッドで微睡んでいると、背中の方で揺れた。そして私の頭の上の方に何か置くのが分かった。サンタさんは寝ている間にやって来るのだ。ここで起きてはいけない。寝たふりを続け、そうしているうちに本当に眠ってしまっていた。
目覚ましに起こされて時間を確認する。もうお弁当を作る時間だった。
主人はまだ寝ている。昨夜、ベッドの上に何を置いたのだろうと、ベッドの上に目を向けてみる。見るとスノードームだった。中にはシャンパンが入っている。PERZY製だ。
PERZYは歴史あるメーカーで、スノードームにかけては100年近く歴史がある。シャンパンは思い出だし、ブランドは好きだけどちょっと違うんじゃない?と微笑んでみる。私のものまで買わなくていいのに。と実は嬉しい気持ちを隠せない私がいた。
下にはメモが敷いてあり、こうあった。
「寛子、いつも家事をしてくれてありがとう。子供たちのことも感謝してます。いつまでもシュッとした奥さんでいてください。 ヨシヒト」
おいっ、ツッコむと同時に私は吹き出しだ。祥仁って自分の名前くらい漢字で書きなよ。それにシュッとしたって。ねぇ、忘れちゃった? シュッとしたっていうのはね、見た目なんだよ? 垢抜けた、洗練されたっていう意味もあるけど「スラッとした」って言う意味もある。
あなたは「いつまでも素敵な奥さんでいてね」って言ってくれたんだろうけど、いつまでも綺麗でもスリムでもいられないんだからね。
父からと主人からとスノードームが2つ並んだ。主人はやっぱり負けず嫌いだ。
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気付いてた? 大学時代、あなたが覚えたての大阪弁でしっかり者と言うために「シュッとしてるね」と 使う度に、周りの女の子たち、とりわけ初対面の大阪女子が喜んでいたのを。シュッとする、っていうのは普通は女の子から使う言葉だけれど、女の子だって言われたら嬉しいんだよ? スマートだね、おしゃれだねと言われてるのと同じなんだもん。
そのうちに、同級生の女の子たちはあなたの言葉に特別な意味はないと分かって、自分は恋愛の対象外なんだと知って「せや? そうせな、良い男ゲットできひんもん」っておどけてくれてたんだよ。良い友達に恵まれたね。
私もあなたの事、あなたが言う“シュッとした”人だと思ってるよ。今は恵たちもいるから、ロマンチックなデートはなかなかできないけれど、時々は本のおばあちゃんか猫のおばあちゃんに子守を頼んでデートしようね。夏目君
シュッとした私でいられるように頑張るからこれからもよろしくお願いします。ずっとね。
私は主人の今日のお弁当を作りに部屋を出た。
完