最高のサンタ 1
主人からのプレゼントと言えば大学の卒業祝いだけだ。バレンタインデー、バースデーも大したことはしていない。もらったらもらった以上に返したくなってしまうから、と主人は言った。君と結婚したらそれでは困るでしょ?と子供みたいに笑った。
何を軽くプロポーズしてんねん、とツッコんだけれど、とぼけてはくれなかった。
「確かに私はブランドは好きだけども…」
それ以上何も言う事はなかった。
私もカップルとして釣り合うように同じくらいのルックスでいて欲しかったけれど、私が降りる所なのかな、と観念した。これからこの人と共に歩んでいくんだとしたら、ブランドなんて重荷だ。
彼は卒業後大阪でヘルパーの資格を取ってヘルパーステーションで働き始めた。そんな彼の後ろでブランドを漁っていて良いはずがない。私はこういう大事なものを見失わない彼を好きになったのだ。愛知でもヘルパー不足だと聞いた彼は今の職場に後ろ髪をひかれつつも地元へ帰っていった。結婚の申し出があったのはそれから少ししての事だ。
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「お母さ~ん、出たよ~。服忘れちゃった~」
光希が呼ぶ。「めぐちゃん、待っててね」と告げてから、服を持って脱衣所に向かう。今度は恵だ。もちろん私も入る。家は夜に洗濯し翌日の午後まで干しておく。昔からの習慣だ。気付くともう8時を過ぎていて、子供たちを寝かし付ける。光希はまだ起きていられそうだったけど、寝ると言って今日は早くベッドに就いた。
「お父さん、プレゼント買ってきてくれるよね?」と言い残して。
ピンポーン、本を読んでいると玄関のチャイムが鳴った。
「はーい」
ちょっと開けてくれる? 返って来たのは主人の声だった。沢山の荷物を提げてゆっくりと入る。
「買ってきたよ。全部」 そう言って、主人は提げていた荷物を軽く持ち上げた。
「恵には、ナナイロタウン、コウキにはレゴの忍者の…何とかってやつ。インターネット。キュアドールは2人だけ買った。2300円だったから。
あっ、実家を宛先にしたんだ。父さんが出してくれたからお金はかかってないよ。あぁ疲れた。先にシャワーいって来る。ビールとかあったかな。後で飲みたいんだけどある?」
ごめんね、今日は先に休んで。また一緒にシャンパン飲もうよ。1本だけ飲んだら寝るからさ。そう言って主人は荷物を寝室に運び込んだ。