迷子
前半ティナ視点
後半カイル視点です♪
↑一度やってみたかった✨
死亡フラグ回避に成功した。
もうこれで将来幸せに生きることができる!若いうちに死なずに済む!
叫びそうになる体を押し留めて小さくガッツポーズをするだけに留めておく。
そんな現在変なテンションの高い私はふと思った。
(カイルとの関係がなくなれば、もうこの庭を見ることができなくなってしまう……そうなる前に庭の散歩でもしておかなければ!)
こう思ってしまったが為の悲劇そして私を狂わせた悪魔との出会いだった。
あれは…庭を回っている時に毛がとても、もふもふしている子猫を見つけた私はもふもふ主義者としての責務を果たすため子猫を追いかけた。
私の自身の最高の笑顔を向け子猫に近づいていった。
「怖くないよ、大丈夫だよ?」
そう安心するように声をかけていたのに子猫をはビクッと驚いたかと思ったら逃げ出してしまったのだ。
しょうがないので、おいかけっこを始めた子猫の勝負は私が壁際に追い詰め逃げ場のなくなった子猫の敗北で幕を閉じた。
暫く、一心不乱にもふった私ははっと気づいたー
……迷子の迷子の子猫ちゃんあなたのお家は何処ですか?
このメイビィス家の広大な庭。
特に考えもなく子猫との追いかけっこを繰り広げた私は今自分がどこにいるかわからないのだ。
要は認めたくはないが迷子である。
私の迷子の原因の子猫は仕事帰りのお父さんの様に温かい日向の下でぐったりとしている。
……どうやら少しもふり過ぎたようだ
(こめんよ…君がもふもふ過ぎたのがいけないんだ…なんて罪な子猫…)
《にゃ〜》という疲れたような鳴き声と私のため息がこぼれた。
* * * * *
俺は由緒あるメイビィス家の公爵子息。カイル・メイビィスとして生を受けた。
昔から公爵子息という立場からか、俺の思う通りにいかないことはなかった。
俺が望めば両親はなんでも買ってもらえた。
俺が望めば周りは何でも言うことを聞いてくれた。
だからこの世界は自分中心で出来ていると思うのにそう時間はかからなかった。
*****
そんなある日、父さんの親友とその娘が家に尋ねてくることになった。
正直言うと会うのはとても面倒くさい。ましてや女の対応ほど面倒なことは無い。
だが、部屋に入ってきた少女を一目見た時から俺は面倒と思っていた事など忘れ、少女から目を離せなくなってしまった。
甘い蜂蜜を髪に垂らしたようなブロンドの髪が少しウェーブがかかり腰近くまで伸ばされていた。
彼女の名前はティナ・バレンシアというらしい。
ずっとティナのことを見ていた俺は自分が自己紹介の時間になった時に素っ気ない挨拶しかする事ができなかった。
彼女と俺以外が話している時のティナの笑顔は花が咲いたような笑顔で…
ティナと話したい。そう思った。
だけど自分の親がいる前で女に話しかけるのは恥ずかしいし、
それを察してか分からないが父さん達が気を利かせて俺達を部屋から追い出した。
いきなり庭で二人きりとなった俺達の間には会話などなく沈黙が訪れていた。
やっと話すチャンスが回ってきたというのに何を言えばいいかわからない。
俺の場合いつも他人と話すときは向こうから話しかけてくれるので、
まず自分から話しかけることはない。
女子が楽しめる話題など知っているはずがなかった。
それでも、このチャンスを逃すわけには行かない。
勇気を振り絞り話しかけた。
「おい!」
聞こえていないのか返事はない。
「おい!そこの!」
もう一度言ってみたがやはり返事をしない。
(耳が悪いのか?いや、さっきまでは普通に受け答えをしていた。)
聞こえないから返事をしないのではない。
聞こえているが無視をしているのだ。
(せっかく俺が話しかけているのに!)
気持がムシャクシャしてくる。
「今話しかけているのは俺なんだぞ!無視すんな!!」
ここまで言ってもティナは俺の声が聞こえていないかのように無視を続ける。
そんなティナの反応に苛立った俺の口からこぼれ出た言葉は
「俺はお前より偉いんだそ!分かっているのか!たかが伯爵令嬢の分際で!!だから本当は会いたくなかったんだ!父さんの親友だと言っても伯爵ごときが…」
そんな言葉だった。
自分でも関係のない事を言っているとは思うが
その俺の発言で初めてティナの表情が変わった。
その事実がただ嬉しかった俺は言葉を続けた。
「どうせお前の兄だって低レベルな考えを持っているんだろ?お前の家族はバカばっかりだな。」
そう言うとティナは
『すいません。カイル様』
ついに俺に向かって喋った!
「なんだ?正論過ぎて感服したか?」
会話ができている。それが嬉しくてもっと話したいから、わざと挑発的に話かけた。
『いえ…』
その後ティナは俺に歪な笑顔を向け
『人間の言葉って喋れます?』
と言った。
……少し遅れて自分が馬鹿にされたのだと気づいた。
*****
『カイル様は自分中心で世界が回っているとでもお思いですの?』
『自分に誇れる事がないからそうやって、自分が築いたわけでもない地位を自慢できるんですよね―』
最初何を言われたかよくわからなかった。
いつも周りが言うのは俺を褒める言葉ばかりで、
こんな風に正面から俺に意見してくる奴なんていなかったから。
悔しくて涙が出てくる。思わず
「…お前なんて嫌いだ!早く帰れ!!…」
と言ってしまった。
言ってから後悔するがティナは俺の方を向いて礼のお手本ともいえる完ぺきな一礼をした後、
俺に背中を向け去っていた。
去っていく時のティナの口元は先程の歪な笑みではなく皮肉にも俺が望んでいた花が咲いたような笑みだった…
*****
暫くして冷静になった俺はティナから言われた言葉の意味を考えてみた。
どれも正論で今の冷静な状態で言われても多分反論することもできないだろう。
でも、いや、だから、ティナとはちゃんと話さなければ言けないと思う。
俺は自分の涙が完全に止まっていることを確かめ彼女に
さっきの失礼な事を詫びるため、、
また自分の気持ちを話すため。
ティナを探す事にした。
誤字脱字等がございましたらご指摘きお願いします。m(__)m
感想など頂けると嬉しいです(ノ´∀`*)




