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バレンタインで、魔女っ娘だぞ!

 今日は、待ちに待ったバレンタインデー。

 一年に一度、想いを寄せる相手に熱い想いを伝える大切な日。

 もちろん、三ヶ月前から準備していた私に死角はないの。

 今日こそ、まなみちゃんにこの想いを伝えなくちゃ。

「ねぇ、まなみちゃん!」

 私は、校舎から出ようと靴を履くまなみちゃんを呼び止めた。

「え、なに? さきちゃん」

 面倒臭そうに振り向くまなみちゃん。

 そんな死んだ魚のような瞳も素敵。

「まなみちゃん、このあと……」

「空いてない!」

 私の言葉を待たずに即答するまなみちゃん。

 そんな勘の良いところが素敵なの。

「そ、そっか。まなみちゃん忙しいもんね」

 本当はちょっぴり残念だけど、にこやかに笑う私。

「でも、事と次第によるわ!」

 まなみちゃんは、私に笑いかけた。

 まなみちゃんのショートカットが、小さく揺れる。

 突然のびっくりサプライズに驚く私。

「本当! 嬉しいっ!」

 私は、その場で小さくジャンプした。

 そして、私たちは街で買い物をすることになった。

 街のブティックで洋服を見たり、雑貨屋さんで小物を見たり。

 まなみちゃんとのショッピングは、とっても楽しい。

「ねぇ、さきちゃん。ただショッピングするためだけに私を誘ったの?」

 短いスカートをはためかせて笑うまなみちゃん。

「え? そ、そうだけど」

 本当は、まなみちゃんのためにチョコを作ってきたんだけど、それはまだ内緒なの。

 まなみちゃんの驚く顔が、とっても楽しみ。

「けっ! さきちゃん、今日なんの日か知ってる? ゴデュバとか行かなくていいの?」

 目が血走るまなみちゃん。

「あっ、今日はバレンタインデーだっけ。もう、私のうっかり屋さんっ。てへっ」

 焦らして焦らして、とびっきりのサプライズ。

「私、用事を思い出したから帰るね!」

 そう言って、走り出そうとするまなみちゃん。

 私は、慌ててしまったの。

「ま、待って! まなみちゃん!」

 私の呼び掛けにも反応せず、まなみちゃんはクラウチングスタートの姿勢から走り出した。

「ま、待ってよう!」

 私たちは、全速力で街を駆け抜ける。

「待ってってばあ!」

 まなみちゃんとの初めての追いかけっこ。

 私は、ドキドキが隠せない。

 そして、ちょうど商店街の角に差し掛かった時、まなみちゃんは突然止まった。

「えへへ、びっくりした? さきちゃん!」

 まなみちゃんは、とびっきりの笑顔を見せた。

「もう、突然走り出すからびっくりしたよう」

 息も絶え絶えの私。

「今日はバレンタインデーでしょ? えへへ、じゃじゃーん!」

 まなみちゃんはそう言うと、スカートのポケットから、缶ジュースのプルタブを取り出した。

「え! これって」

 突然の事にこれ以上言葉が出ない。

「空き缶から取ったプルタブだよ! バレンタインデーだから、さきちゃんにあげようと思って」

 まなみちゃんはそう言うと、私にプルタブを渡した。

「ま、まなみちゃん」

 まなみちゃんのびっくりサプライズに泣きそうになる私。

「プルタブを800キロ集めると、車椅子が貰えるんだよ。これで老後も安心だね!」

 私の老後まで心配してくれるまなみちゃんの優しさが、とっても嬉しい。

「まなみちゃん! 実は、私もね!」

 そう言って、バッグからチョコを取り出そうとした瞬間、携帯電話の着信が鳴った。

 慌てて携帯電話を取り出す。

 電話には、ポッコロ様の文字。

「ま、まなみちゃん! ちょっと、ここで待ってて!」

 私は、慌てて商店街の裏路地へと回った。

「お待たせしました。ポッコロ様」

『サキーヌよ。今回の指令を言い渡す……』

「……わかりました」

 携帯電話を切ると、首から下げていた小さなステッキへと手を置いた。

 すると小さなステッキは、私の魔力を吸い元の大きさに戻った。

 そう、何を隠そう私は、世界征服を企むポッコロ団の魔女っ娘戦闘員、魔女っ娘サキーヌなのだ。

「ポッコロポッコロスポポポポーン!」

 私の掛け声を合図にステッキが光る。

 そして、宙に浮き数回くるくると回ると、私の服が一瞬にしてはだけた。

 次の瞬間、一瞬にして私は黒いドレス姿に変身した。

「今日も世界を征服よ!」

 私はステッキに跨ると、賑わう商店街の中心に舞い降りた。

「カップルの皆さん! 楽しいバレンタインは、ここまでよ!」

 私の声にそこにいたカップルたちが振り向いた。

「きゃー! 魔女っ娘サキーヌよ!」

 その場は、騒然とした。

 カップルの皆さん、デート中にごめんない。

 世界征服の礎となってもらうわ。

「よく聞いて! ホワイトチョコレートを全てビターチョコレートにしてほしくなかったら、ポッコロ団の配下になりなさい!」

 私は、ステッキを掲げた。

「そんなことしたら、白い恋人が、どす黒い恋人になっちゃうじゃないか!」

「ほろ苦い恋人なんて、いらないよ!」

「北海道のお土産界は大打撃だ!」

 泣き叫ぶカップルたち。

 すると、背後から叫び声が聞こえた。

「そこまでよ! サキーヌ!」

 この声は、憎きライバル魔女っ娘マナミン。

「やっぱりきたのね! マナミン!」

 私は、振り返った。

 次の瞬間。

「魔女っ娘ぉぉ、踵落とし!」

 振り返った私が身構える前にマナミンが脳天に向けて踵を振り下ろした。

「びゃぶっ!」

 思いもよらなかった突然の不意打ちに私はなす術もなく崩れ落ちた。

「ここまで長かったから、バトルは割愛したわ!」

 ピンクのドレスをぱんぱんと二回はたくと、マナミンはカップルたちに微笑んだ。

「またしても姑息な……」

 私は気を失った。


 ☆


 翌日、私は自室のベッドで目覚めた。

 いつものように気絶した私を自宅に転送してくれたポッコロ様。

 私は慌てて支度を済ませると、急いで学校に向かった。

 昨日はとんだ邪魔が入って、まなみちゃんにチョコを渡せなかった。

「まなみちゃん! 昨日はゴメンね! これ、受け取って!」

 学校についた私は、教室にいたまなみちゃんにラッピングしたチョコを手渡した。

「ありがとう、さきちゃん!」

 まなみちゃんは、乱暴にラッピングを外した。

 無言でチョコを見つめるまなみちゃん。

「どう?」

 そう言ってチョコを覗き込んだ私は、驚愕した。

 一生懸命作ったチョコが、マナミンとのバトルでぐちゃぐちゃになっていたのだ。

 恐る恐るまなみちゃんの顔を見る。

「なにこれ、うんこ?」

 まなみちゃんの目は、血走っていた。

 おのれマナミンめ。

 私は、妥当マナミンを心に誓うのであった。


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