表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
637/637

◇000 プロローグ

■三話投稿しています。ご注意を。新作『桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜』のプロローグになります。





 人が暮らしを営む地上、最高神がおわします神界の間に天界がある。

 ここは中級、下級神、及びその眷属などが住まう世界であり、また神々の職場でもあった。

 天界には数多あまたある世界の管理、魂の選別、洗浄、断罪などを行う神やその眷属たちがいる。

 神々はこの天界で己の与えられた役目をこなし、様々な階級の天使や神獣、精霊たちなどはその神々の手足となって働いているのだ。

 また天界は新たな神となった者の修行の場でもある。

 世界を管理する術を学ぶべく、先達の神から手解きを受けた新神しんじんたちは、一人前の神となるべく日夜懸命に励んでいる。

 そんな天界の一角、雲海に囲まれた『庭園』で、新神しんじんである女神の一人が難しい顔をして、水鏡に映る地上を眺めていた。


「ううん、これは……」

「どうしたの? リンゼ」


 銀髪のショートボブにヘアバンドをした女神に、桜色の美しいロングヘアの女神が声をかける。

 どちらもここ一千年ほど前に女神となった、新たな神々である。

 千年といっても天界での時間であるため、地上の時間には縛られない。過去にも現在にも、未来にも存在するのが神であり、すべての時間に自由な存在である。一応、守るべきルールはあるが。


「この間みんなで作った世界にね、ちょっと紛れ込んだ魂があるみたいなの」

「紛れ込んだ……? え、でも……あ、ひょっとして『世界の結界』張ってない……?」


 桜色の髪をした女神──サクラクレリアにこくりと頷くヘアバンドの銀髪の女神、リンゼヴェール。

 『世界の結界』とはその世界に異物が入らないようにする網やフィルターのようなものだ。これがないと、他の世界から別の存在が流れ込んだり、世界を渡る能力を持つ者に侵略を受けたりしてしまう。

 これがあっても紛れ込む時は紛れ込んでしまうのだが、あるとないとでは安全性が段違いなのだ。


「うっかりしてたよ……。てっきり誰かが張ってくれたものだと……」

「ん。私もリーンが張ってくれたと思ってた」

「『結界』の方は私がすぐに張ったからもう心配は無いんだけど、紛れ込んだこの魂がね……」 


 水鏡の中には一人の少女が映っていた。サクラクレリアと同じような桜色の髪をした少女である。歳は二つか三つか。まだ幼女という姿の女の子が、薄汚れた服を着てなにやら草を一生懸命すり潰していた。


「んん? この子の魂って……」

「そう。この子、どうやら地球から引き寄せられたみたい……」

「え!? 地球から!?」


 サクラクレリアが驚いた声を上げる。地球は最高神である世界神様が直接管理している世界の、そこにあるひとつの星であり、二人にも大きな接点がある星であった。


「なんでそんなことに?」

「もともとこの世界は地球を参考にして作ったからね……。馴染みやすかったってのもあるんだろうけど、やってきた時間軸が完全に私たちが干渉した時代からだからね……」

「ひょっとして……ひょっとしなくても私たちのせい……?」


 サクラクレリアの言葉にこくんと小さく頷くリンゼヴェール。


「それだけじゃないよ。この子、よーく見て」

「え? あっ……! この子って……! あの悪役令嬢!?」


 水鏡に映るまだ三歳を越えたくらいの幼女をじっと見ていたサクラクレリアが驚いたような声を上げる。


「……どうする?」

「とにかくみんなに知らせて相談しよう。大きな干渉はできないけど、小さな手助けはできると思うから」

「ん。それがいい。このままだとこの子は間違いなく死ぬ。それは目覚めが悪い」


 リンゼヴェールの言葉にサクラクレリアが小さく頷く。

 たとえこの子が死んでも誰に罰せられることがないとはいえ、それは彼女たちにとって許容できることではなかった。

 神の手違いで死んでしまった者を身近に知る彼女たちだからこそ、自分たちのミスには責任を持たねばならないと心に決めている。

 いくつもの苦難が彼女に降り注ぐことだろう。どうかそれを乗り越えて、彼女には未来を掴みとってもらいたい。


「……旦那様には……話す?」

「えっと……内緒で……」

「おっけぃ」


 これは自分たちの力でなんとか解決しようと彼女たちは思った。そもそも彼女たちの夫は直接の上司というわけではない。口出しする権利はないのだ。家族としてお説教を受けるかもしれないが。

 隠蔽というわけではない。他の先輩神に報告したところで放置させられ、彼女があっさりと死んで輪廻の輪に戻ったらそれで終わりにする可能性の方が高い。

 神としてはそれが正しいのかもしれないが、彼女たちには受け入れられなかった。なんとしても彼女を救わねばという決意が生まれる。

 自分のミスで数奇な運命に巻き込んでしまっても、決して見捨てず、最後まで見守った世界神様のように。

 水鏡に映る彼女にとっては理不尽な運命だ。しかしこれよりは九人の女神が味方となる。

 理不尽な運命を打ち破り、見事この世界で彼女が生き残ることを新神しんじんの女神たちは切に願った。



 かくして物語は回る。悪役令嬢の望む望まぬに関係なく。





 



一応、下のランキングタグから新作に飛べるようにしたつもりですが、ダメなら作品リストから飛んていただければ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作リンク中。

■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ