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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
615/637

#615 温泉街、そして参拝。





「とーさま、あさー! おきてー!」

「ぐっふっ!?」


 早朝からのステフダイブで意識が覚醒する。布団の上からとはいえ、かなりの衝撃を受けた。ぐおお……!


「こら、ステフ! 今のお父様は子供なんだから飛び込んじゃダメなんだよ!」

「あっ、わすれてた……」


 ステフを叱りつけるフレイの声に、布団の中で苦しみながら思わずサムズアップ。

 ステフの淑女教育はもっと厳しくしてもいいと思う……。

 痛みを堪えて起き上がる。


「おはよう……」

「おはようなんだよ。ステフ、ごめんなさいは?」

「うー……とーさま、ごめんなさい」


 フレイに促され、ステフがペコリと謝る。いや、まあいいんだけどね。ただ子供の姿の時には遠慮してもらいたい。

 すでに父さんと久遠は起きていて、テレビで朝のニュースを見ながらお茶を飲んでいた。昨日父さんに買ってもらった蕎麦茶のようだ。いい香りがする。


「冬夜君、大丈夫かい?」

「この身体だとちょっとキツかったかな……」

「すみません、父上。止める間もなく来るや否や布団にダイブしてたので……」


 城にいるときもそんな起こし方をされた記憶があるな……。ひょっとして未来でもその起こし方がディフォルトなのか? さすがに毎日ダイブはキツいぞ……。


「ほら、朝ごはんを食べに行くんだよ。みんなもう先に行ってるんだよ?」


 あれ? 僕が一番寝坊したのか? そんなに疲れてたのかね。

 ともかくみんなを待たせるわけにはいかない。僕は乱れた浴衣から着替え、スリッパを履いてパタパタと走らない程度の急ぎ足で夕食をいただいた大広間へと向かう。

 途中、エルゼとリンゼ、エルナとリンネ組に追いつき、一緒になって大広間へ到着すると、すでに他のみんなは席についていた。

 僕らも慌てて席に着くと、昨日と同じく母さんの『いただきます』の声でみんな目の前の食事に手をつけ始める。

 ご飯に味噌汁、納豆、味付け海苔に焼き鮭、おひたしに煮物に漬物、玉子焼きに煮豆にひじき……。いかにも日本の朝ご飯といった感じのメニューがテーブルの上に並べられている。こりゃ美味そうだ。

 納豆や漬物、海苔などはイーシェンにもあるので異世界むこうでも食べられるのだが、微妙に味が違うんだよな……。なんでだろう? その素材が育った土地によって違うのだろうか。

 そんなことを考えながら、納豆に付属のタレとカラシを入れて、ぐるぐると白くなるまでかき混ぜる。

 それをご飯に少量かけて、一気にかき込む! ……美味い! 梅風味のタレの、ちょっとした酸っぱさがいいアクセントになっている。ご飯何杯でもいけそうだ。

 味噌汁の中はお揚げと豆腐か。飲むと納豆でちょっとねばつく口の中がさっぱりしていく。カボチャの煮物も甘くて美味しい。

 異世界むこうだと、どうしても朝はパンになりがちなんだけど、やはりこういった朝食の方が好みに合うなぁ。

 いや、トーストにベーコンエッグ、サラダにスープ、そしてコーヒーと言う朝ごはんも悪くはないんだけどね。

 贅沢な朝食を終えて、僕らはお茶を飲みながら今日の予定を相談する。一応、あと一泊はここでする予定なので、今日は昨日行けなかった温泉街の方へ行ってお土産などを買おうということになった。昼食もそっちで取る。


「足湯もありますからどうぞ浸かってみて下さいね」

「そりゃ楽しみだ」


 若女将である伊織さんと母さんがそんな話をしている。足湯か。それもいいかもしれない。

 部屋に戻って財布などを持ち、ロビーで待ち合わせをしてみんなで温泉街へと外出する。

 緩やかな坂を下ればそれほどかからずに到着するので歩いていくことにした。

 途中、昨日食べた蕎麦屋の前を通り抜けてしばらくすると、レトロチックな木造建築が建ち並ぶ温泉街へと到着した。

 わずかな硫黄の香りともくもくとした湯気が上がっているところがある。あそこが足湯かな?


「足湯は最後にしようか」

「そうですね。歩き疲れてから入った方が気持ちいいかも」


 父さんと母さんがそんな会話をする横で僕は冬花と手を繋いで待っていた。冬花はすでに一人でも歩けるが、やはり放っておくとどこへ行くかわからないからな。


「にいたん、わんわ。わんわいる」

「そうだねー、わんわん可愛いねー」


 冬花がプードルを抱っこして連れていたおばさんを見て少し興奮している。どうやらこの子は動物が好き

らしい。ブランカがいつも一緒だからかな? ちなみにブランカはお留守番だ。この機会に息抜きしてほしい。

 冬花は僕を『にいたん』と呼ぶが、きちんと兄として認識しているのだろうか。近所のお兄さんと同じ扱いは嫌だなあ。『にいたん』が『兄さん』ならいいけど、『兄ちゃん』だと意味がまた違ってくる。


「冬花、お菓子食べるか?」

「たべゆ」


 僕がポケットから取り出した小さなキャラメルを受け取ると、冬花はそれを口に含んでモゴモゴとさせながら、にへー、と屈託なく笑う。

 なにこの可愛い生き物! うちの妹が可愛すぎる件についてー!

 なんだろう、娘とはまた違った可愛さに僕はメロメロになりそうだ。

 妹とはかくも可愛いものだったのか。


「デレデレでござるよ……」

「うわあ……。なんかすごいわね……」

「し、しすこんってやつですか?」


 後ろのお嫁さんたちがなんか言っているが、気にしない気にしない。


「とりあえずあの土産物屋に行ってみようか」


 母さんの指差した店はいかにも土産物屋、といった佇まいをしていた。緑地に『おみやげ処』と白く抜かれた布看板がそれをさらに強調する。

 中へ入ると、所狭しといろんなお土産が置いてあった。温泉饅頭などのお菓子系や、石鹸やタオルなどのお風呂グッズ、木彫りの置物やアクセサリー、なぜか温泉地によくある小さな提灯まであるぞ。

 じいちゃんに聞いたことがある。あの提灯はかつてお土産界の三種の神器と言われていたと……。

 残りの二つは確か三角の長いペナントと、ご当地県の形をしたキーホルダーだとか(諸説あります)。

 買うか……? いや、提灯として使えるならまだしも、インテリアとしては微妙な気もする……。

 絶対に城のリビングとかにはミスマッチだと思う……。


「わぁ、これ可愛いわね」

「お母さん、こっちのも可愛いよ!」


 エルゼとエルナの二人がなにやらキャラ物のハンカチやタオルを見てはしゃいでいる。アヒルが頭にタオルを乗せて、温泉に浸かっているようなキャラクターだ。温泉アヒル? 煮込まれているアヒルにしか見えないんだが、可愛い、のか……?

 各々(おのおの)店内に散らばって、それぞれ好みのお土産を吟味している。

 ふと横を見ると、久遠が木工細工のおもちゃに注目していた。

 久遠が見ていたのはいわゆる木製パズルで、手にしているのは窪みがある小さな板が二枚、十字に重なっているやつだ。

 きちんと手順を踏むとあっさりと外れるんだが、久遠は振ってみたり、隙間から覗き込んだり苦戦している。


「ボクが外してあげようか?」

「アリスは力任せに外しそうでダメです。たぶん中でなにかが引っかかっていると思うんですけど……」

「貸してみな」


 僕は久遠から手のひらに乗るくらい小さな十字パズルを受け取り、平らな場所に置いて、ピンッ、と指でそれを弾いた。

 くるるっ、と少し回転して止まった十字パズルの上のパーツを静かにスッと持ち上げると、あっさりとパーツは二つに分かれる。


「すごい! 取れた!」

「なるほど、中につっかえ棒があったんですね」


 そう。このパズルは窪みの左右につっかえ棒がそれぞれあって、片方が外れてももう片方がストッパーになり、外れないようになっている。

 右に振れば左の棒が飛び出し、左に振れば右の棒が飛び出す。必ずどっちかがストッパーの役目を果たしてパーツが外れないようになっているのだ。


「そうか、だから回転させて、遠心力でどっちの棒も引っ込めたんですね」

「陛下、よくわかったね!」

「いや、感心してくれているとこ悪いけど、実はこれ昔持ってたんだ。だから解き方は初めから知っていたんだよ」


 じいちゃんに買ってもらったカプセルトイのおもちゃでね。僕も全然取れなかったんだが、じいちゃんがドヤ顔で解いてくれた思い出がある。それで同じことをしてみたくなったわけだ。

  

「だからそっちの他のパズルは解き方を知らない。気になったのがあったら買ってみてもいいんじゃないかな?」


 売り場には十字パズル以外にも、球体のや樽型、コンペイトウ型などいろんな木製パズルが置いてあった。十字のより遥かに難しそうだ。とても僕では解けそうもない。

 解き方って付いてるんだろうか? ネットで調べれば出てくるような気もするけど……。

 久遠は木製パズルが気に入ったのか、じっくりと吟味し始めた。これってお土産はお土産でも、自分のお土産だよな。まあ、それもアリだろう。今日という記念を形で持っておくのは悪いことではない。

 他のみんなに目を向けると、ルーとアーシアは予想通りお菓子関連に注目している。定番の温泉饅頭だけでなく、温泉プリン、温泉煎餅や温泉サイダーなども置いてあった。

 温泉とプリンや煎餅の関連性がイマイチわからないが、それをいったら饅頭もそうか。きっと温泉水とかその蒸気などを作る時に使っているのだろう。温泉を利用して作っているのならその名を冠しても間違いではあるまい。

 その棚で、僕は大きな瓶に入った砂糖をまぶしたような半透明のお菓子に目が止まった。なぜならその瓶から下げられた札に『琥珀』という文字があったからだ。

 なにげなくその瓶を手に取る。


「琥珀糖だね。寒天を使ったお菓子だよ。買うのかい?」


 僕がそのお菓子を眺めていると、頭上から覗き込んだ父さんが説明してくれた。

 なるほど、寒天を使っているから半透明なのか。

 瓶の中のまるで宝石のようなお菓子は、赤、青、黄色、オレンジ、緑、紫と、カラフルに色付いている。

 琥珀糖、ね。これは買わないわけにはいかないよなあ。

 僕は今ごろ城のソファで、虎のくせに大の字になって寝ているだろう白い虎を思い出し、その瓶を手に取った。

 琥珀だけじゃなく、瑠璃や紅玉、珊瑚や黒曜にもなにか買わないとなあ。

 お土産はここだけで買うわけじゃないから、次に回してもいいんだが、なにもなかった時のために、五つ買っておこう……いや、僕も食べたいから余分に十個ほど買っちゃえ。【ストレージ】に入れとけば賞味期限とか関係ないしな。

 他のみんなもカゴいっぱいにお土産を買ったようだ。

 会計を済ませて外に出ると、少し休んでいるふりをして、人目のつかないところでみんなに壁になってもらい、買った土産物を次々と【ストレージ】へと収納する。


「ホント便利な魔法だね。密輸入し放題じゃないか」


 人聞きの悪い。確かにその通りだけど。

 【ストレージ】があれば税関などに引っかかることもなく素通りできるだろうな。

 そもそも僕はもうパスポートが作れないから、海外には渡航できないのだが。まあ、転移魔法で行けちゃうけどさ。


「かーさま、おだんごうってる!」

「おお、いいのう、団子か。……あれは団子か? なにやらぐつぐつと煮られているようじゃが……?」


 聞こえてきたステフとスゥの会話に目を向けると、店先でぐつぐつと煮立っている鍋に、店員さんが団子のようなものを突っ込んでいた。

 視線を横に向けると、立ててあるのぼりには『玉こんにゃく』の文字が。


「あれは団子じゃなくて、こんにゃくを売っているんだよ」

「こんにゃく!」

「こんにゃく? こんにゃくってあのぐにぐにしたスライムみたいなものかの?」


 スライムって……。まあ、感触は似ているかもしれないけど。

 スライムと聞いて、ユミナ、エルゼ、リンゼ、八重の四人はものすごく嫌そうな顔をしたのを僕は見逃さなかった。

 まあ、あの四人はちょっとしたトラウマがあるからな……。

 それはそうと玉こんにゃくはちょっと僕も興味あるな。食べてみるか。

 僕は店員さんにお金を払い、玉こんにゃくを三本もらった。スチロール製の皿に乗った三本の玉こんにゃくに、からしが付いてくる。ステフはからし無しでいいな。

 

「ほら。熱いから気をつけて食べるんだぞ」

「ありがとう、とーさま!」


 ステフにからし無しの玉こんにゃくを渡し、僕は自分の玉こんにゃくにはからしを付ける。スゥは迷ったようだが、からしをちょっとだけ付けることにしたようだ。


っつ……!」


 醤油や出汁だしで煮込み、味付けした玉こんにゃくはよく味が染みてて美味い。からしもピリリときいていいアクセントになっている。が、なんとも熱く、ほふほふと口の中で冷ましながら食べることになった。

 ステフやスゥもふーふーと冷ましながら少しずつ食べているようだ。

 僕らが買い食いしているのを見て、やはりというかルーとアーシアが同じように玉こんにゃくを頼み、それに釣られてか、他のみんなも次々と注文していく。

 まあ、ユミナたち四人はスライムを思い出すのか、遠慮していたが。

 玉こんにゃくを食べながら、温泉街の看板マップを見て次にどこに行くかと話し合うのもまたオツなものだ。ちょっと行儀は悪いが。

 玉こんにゃくを食べ終えると母さんが温泉街マップのひとつを指で指し示した。


「近くに神社があるみたいだからお参りして行こうか」


 神社ね。旅行の安全でも祈願してこようか。

 その神社はさほど距離は遠くないのだが高台にあり、それなりの石段を登った先にあった。

 僕や奥さん、子供たちは平気だが、インドアの父さんと母さんはきつかったようで、少し呼吸が荒い。特に父さんは酷い。明らかに運動不足だな。

 階段を登り終えた父さんの背後に回り、隠れて神気を纏わせた【リフレッシュ】を発動させる。

 疲労がすっかり回復した父さんが驚いた目をこちらに向ける。


「これも魔法かい? どうもありがとう」

「どういたしまして」


 ついでに母さんも回復させとこ。母さんの方はそこまで疲れてはいないようだが。

 神社の境内にはパラパラと旅行客の姿が見えた。少ないように感じるが平日だしこんなものか。

 まずは参拝だ。みんなそれぞれに小銭を渡し、二礼二拍手一礼のやり方を教える。

 鳥居をくぐる前に深く一礼し、参道のはじを通る。真ん中は神様の通り道だからだ。

 ……あれ? じゃあこれって僕は通ってもいいのか……? いやいや神といえど新神しんじんのペーペー、先輩には敬意を払うべきだ。うん。

 手水舎で手と口を清め、いざ参拝。

 母さんが代表で鈴を鳴らし、お賽銭を投げ込むのを見てみんなも同じように投げ込む。

 深いお辞儀を二回、のち拍手を二回。そしてお祈りを……。

 どうか無事に楽しく旅行を終えられますように。


『ほっほっほ。心配せんでも大丈夫じゃよ』


 っ!? 世界神様!?

 僕は思わず天を仰ぐ。さては神界うえから見ているな!?


『ああ、ほらバレたのよ。ああいった神域だとこっちの声が届く可能性があるって言ったのは世界神様なのよ?』

『すまん、ついうっかり……』

『まあまあ。お邪魔してごめんなさいね、冬夜君。じゃあ家族水入らずでごゆっくり』


 花恋姉さんに時江おばあちゃんの声も聞こえた。なにをやっているんだ、神界むこうでは……。

 最後にもう一度深く一礼して参拝を終える。


「あそこで御神籤おみくじが引けるみたいね」

「御守りもあるようでござるな」


 リーンと八重の視線を向けた先には、社務所のようなところの中に巫女さんがいた。

 御神籤か。旅の吉凶を占うか?

 御神籤を引きたいという子供ら数人とともに、ついでと言ったらなんだけど、僕も引いてみることにした。


「小吉……。まあ、普通、か?」


 確か御神籤って、大吉・吉・中吉・小吉・末吉・凶の順番だっけ? でも大吉・中吉・小吉・吉・末吉・凶という順番もあるって聞いたような。

 どのみち小吉は良くもなく悪くもなく、という位置付けっぽいけども。


「旅行:連れあればよろし……ね」


連れはめちゃくちゃいるけど。これは良いってことでいいんだよね?

 幸い、誰にも『凶』は出なかったようでよかった。

 基本的に御神籤は持ち帰ってもいいんだけど、神様と縁を結ぶ、ということで、御神籤掛けに結んで行くことにした。子供たちもみんな僕の真似をして結び出す。


「あれ?」


 ふと振り返ると社務所のところで奥さんたちが群がってなにかを買っている。破魔矢とか絵馬を買っているのかな?

 いや、御守りか。なんだろう、まさか恋愛成就や縁結びの御守りってことはないと思うが……ないよね? 健康祈願とか家内安全の御守りかな?


「なにか買ったの?」

「え? ええ、その、御守りをいくつか……」


 なんとも歯切れの悪い言葉でリンゼが答える。なんだ? 別に隠すようなことじゃないと思うが。

 僕も背伸びして社務所の御守りが置いてある場所を見たが、本当にいろんな種類の御守りがあるな。

 金運上昇、商売繁盛、交通安全、家内安全、学業成就、厄除け……あ、夫婦円満なんてのもある。

 もしかしてみんなが買ったのはこれか? とちょっと嬉しいながらも気恥ずかしい気持ちになっていると、それよりも明らかに数が少ない御守りが隣に二つあった。

 子宝成就と安産祈願……。

 僕がゆっくりと振り向くと、お嫁さんたちは真っ赤になりながら、みんな視線を逸らす。おそらく僕の顔も赤くなっていたと思う。


「その、そのうちね! そのうち必要になるかと思って!」

「こ、こういうものは異世界むこうではあまり手に入りませんし!? せっかくの機会ですから! ええ、せっかくの機会ですから!」


 エルゼとユミナが慌てたように声をあげる。他のみんなも『そうそう』とか『他のも買いましたし?』などと言い訳がましい言葉を並べ立てる。

 いや、なにも悪いって言ってるわけじゃ……。


「なにしてんだい、行くよー」

「はい! 今行きます!」


 母さんの声に、助かったとばかりにぴゅうっ、とお嫁さんたちが走り去っていく。ええと……。


「すいません、僕もこれとこれ下さい……」

「え……?」


 奥さんと同じく子宝成就と安産祈願の御守りを買い求めた僕に、社務所の中の巫女さんが微妙な顔をするのがなんとも居心地が悪かった。

 






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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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